ジョン・ランチェスターが、生誕193年目を迎えた(もうすぐ194年目を迎える)マルクスの予言の現状について長文のエッセイをLondon Review of Booksに書いている(Mostly Economics経由)。
その中でランチェスターは、
といった面でマルクスの予言は当たった、と評する。だが、その反面、マルクスが予言した集団的な階級闘争は発生しなかった。その理由としてランチェスターは以下の2つを挙げている。
- 資本主義の多様化
- 生活水準の向上
- 乳幼児死亡率の低下と平均寿命の上昇が、ヘーゲルの言う「量から質への変化」をもたらした
- そうした肯定的変化を達成した経済社会システムを、単に人々を窮乏化させるもの、として片付けるのは難しくなった
またランチェスターは、マルクスがもう一つ見落とした点として、資源の有限性を挙げている。現代のマルクス主義者がいくら平等を強調しようとも、実際に世界中の人々が米国人並みに(例えば)水を消費するのは物理的に不可能、というわけだ。それについてランチェスターは、マルクスが資本論第一巻の終わりに書いた「man is distinguished from all other animals by the limitless and flexible nature of his needs(人間はその欲求の性格が飽くなきこと、および柔軟である点において他のすべての動物と異なっている)」という文章を引いて、「limitless needs(飽くなき欲求)」の発揮は既になされているから、今度は「flexible(柔軟性)」の部分を発揮するべき時だ、と書いてエッセイを締めくくっている。