不動産ブームは人種による住み分けを緩和したのか?

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その内容は概ね以下の通り。

  • Edward GlaeserとJacob Vigdorが主張するように、不動産ブームの際に融資の基準が緩和されたことは、黒人にそれまで住めなかった地域での居住を可能にした。
  • しかし著者たち(Amine OuazadとRomain Rancière)が論文でモデルを構築して考察したところによると、それは部分均衡に過ぎず、そこで話が終わるわけではない。というのは、富裕層もまた借り入れ能力が高まるので、自分たちの居住区の値を吊り上げ、マイノリティを締め出そうとするかもしれないからである。結局、一般均衡において人種による住み分けが進むか否かについては、理論上はどちらとも言えない、ということになる。
  • 実際のデータで実証分析を行ったところ、下図の通り、融資基準緩和無かりせば、という反実仮想の状況(紫色の棒グラフ)に比べ、現実(赤色の棒グラフ)の人種の融合スピードは低下していた(ここで「isolation」は平均的な黒人学生における黒人の学友の割合で、数値が高いほど人種別の隔離度が高いことを示す)。

   

  • この現象が生じたのは、信用ブームに伴い、ヒスパニック系が固まって住むようになったことが主な原因。具体的な推計数値:
    • 信用ブームにより、2006年時点の黒人のヒスパニック系の学友は2%(人数にして18人)減少した。
    • 所得申告の必要が無い不動産融資の割合が全体の1.5%から5.4%に増えたことにより、ヒスパニック学生は、黒人学生が1600人少ない学区に移転できるようになった。