なぜ米国人は暴動を起こさなくなったのか?

というテーマに関する本が最近出たらしい。

Why Don't American Cities Burn? (City in the Twenty-first Century)

Why Don't American Cities Burn? (City in the Twenty-first Century)


こちらの記事では、その内容を簡単に紹介している(タイラー・コーエン経由)。


最近のアテネ、昨夏のロンドンや中国、2005年のパリなど、世界の各地域で暴動は起きている。人々の疎外や失業や警察への不信といった問題は米国でも共通しているが、最近の米国ではそういった暴動は起きていない(オキュパイ運動も暴動には発展しなかった)。


上記の本の著者であるペンシルベニア大学の歴史家Michael Katzによると、その理由は以下の通り。

  • 以前は暴動以外に主張の手段が無かった少数派が、政治的決定に参加できるようになった。白人が移転したことにより、都市全体が(行政も含め)アフリカ系アメリカ人の手に渡った。そのため、近隣同士の緊張が弱まった。
    • 1960年代には白人が転出する前に多数のアフリカ系アメリカ人が都市に転入してきたため、それが紛争の火種となった。
  • 少数派も良質な職場や大学や近隣に受け入れられるようになった。ただ、その受容は選択的であったため(黒人の女性の方が男性よりも受益者となった)、少数派の社会が分断され、集団行動の可能性が削がれた。
  • かつてなら暴動に参加したであろう人々が、「消費者共和国」に取り込まれていった。そこでは良い人生を手に入れられなくても、良い人生を象徴するものを手に入れられる。
  • 当局が監視や規制の技術を向上させ、刑務所人口が増えると共に、組織化の動きが弱まった。
  • 米国人が全体的に非政治化した。

暴動が無くなったのは確かに良いことではあるが、政治運動までが無くなったのは良いことなのかどうか、という疑問を記事の最後では投げ掛けている。