という微妙なテーマの論文をNY連銀が出している(Mostly Economics経由)。
以下にMostly Economicsの要約に沿ってその内容を紹介してみると…。
- パキスタンの3種類の学校から1521人の男子学生を募り、実験を行った。3種類の学校とは
- 信頼ゲームと独裁者ゲームの2種類を実施。被験者は両ゲームで送り手と受け手の両方を演じる。
- その後、被験者は以下の期待値も記入する:
- 自分と同じ学校の学生がパートナーに渡すであろう平均金額
- パートナーの属する学校の学生が自分と同じ学校の学生に渡すであろう平均金額
- 被験者は、イスラム神学校の男子学生、リベラル系大学の男子学生、イスラム系大学の男子学生のいずれかとランダムに組み合わせられる。相手の学校名は質問票に既に印刷されているので、被験者はそれ以外の学校の学生が実験に参加していることを知らない。
- 実際にはリアルタイムにマッチングと実験が行われたわけではなく、各校で質問票の配布と回収が実施され、それを元に事後的にマッチングが行われた。
- リベラル系大学の2校は、論文ではそれぞれ西洋リベラル系と近代リベラル系に分類されている。西洋リベラル系の方がよりリベラルでより上流との由。実験でリベラル系大学がマッチング対象となった場合、近代リベラル系は自校、それ以外は西洋リベラル系が対象になった。即ち、近代リベラル系がイスラム神学校やイスラム系大学のマッチング対象になることは無く(逆は有り)、また、両リベラル系大学同士がマッチングされることも無かった。
- 被験者には、参加費200ルピーのほか、4つの役割(2つのゲームの送り手と受け手)のいずれかに基づいて報酬が支払われた(4つの役割のどれかはランダムに決められた)。加えて、4つの予測のいずれかに基づいた報酬も支払われた(=選択した区間に実際の平均値が入っていた場合50ルピー)。ゲームからの平均報酬は600ルピー、全体の平均報酬は800ルピーであった。
- 論文は実験結果を以下のようにまとめている:
- 信頼ゲームの投資行動はグループによって差が見られ、イスラム神学校の学生が最も投資に積極的だった。
- 信頼ゲームの投資行動において、同じグループに対する身内びいきや、他のグループへの差別といった傾向は見られなかった。
- 他のグループに対する好き嫌いに基づく差別やステレオタイプ的な捉え方も見られなかった。イスラム神学校の学生は、他のグループに比べて他者を無条件に尊重すると共に、他者を信頼した。
- 信頼ゲームのほかに独裁者ゲームも実施したことにより、条件無しの他者の尊重および他者への信頼も測定できた。
- リベラル系大学の学生はイスラム神学校の学生の信頼性を過小評価し、イスラム神学校の学生はリベラル系大学の学生の信頼性を過大評価する傾向が見られた。