金融市場の区画化は有効か?

ジャスティン・フォックスによると、映画「インサイド・ジョブ」で、ソロスが金融市場を石油タンカーに喩えるシーンがあるという。曰く、石油タンカーでは一つの大きなタンクに石油を入れていると、石油がじゃぶじゃぶ動くことによってじきに船が転覆してしまうので、小さな幾つものタンクに小分けで石油を入れている。金融市場もそれと同様に区画化し、様々な商品や金融機関が混在するのを避けるべき、とソロスは主張しているとの由。


これに対しEconomist's ViewのMark Thomaが、一定の賛意を示しつつも若干の異論を唱えている。Thomaによれば、金融におけるリスクの広がりには以下の2つのパターンがあるという。

  • 海に毒を流した場合のように、拡散によってリスクが希釈される場合
  • 病気の感染のように、拡散によってリスクも拡大してしまう場合

前者のリスクに対応する場合には、金融市場を区画化するよりは相互に接続した方が良い。これまでは想定されていたリスクは主にそちらであり、かつ、大抵の場合、実際に実現するリスクもそうだった。しかし今回の場合は後者のパターンがシステムを襲ってしまった。それを考えると、感染が始まった場合に直ちにネットワークを切り離す仕組みの導入が必要であり*1、それが難しければ(ソロスの言うように)予め区画化しておくしかない。そのバランスを取るのは規制当局者の仕事となるが、いずれにせよ、完全に接続された金融ネットワークも完全に区画化されたネットワークも最適解ではない、とThomaは指摘している。