なぜ国際マクロ経済学者はよりケインジアンになるのか

昨日のエントリではクルーグマンの論考を紹介したが、彼がそのようにケインズ理論を称揚した時にマンキューやニューマネタリスト周辺からしばしば寄せられるのが、お前はマクロ経済学が専門ではないので最新のマクロ経済学を余り知らんだろう、という批判である*1


そうした批判を意識したためかどうかは分からないが、一昨日のエントリでは、国際マクロ経済学者が国内マクロ経済学者よりケインジアンになる理由について面白いことを書いている。そのエントリで彼は、名目為替レートと実質為替レートの連動性が高いこと、および、その連動性の高さが物価の粘着性を示していることをグラフを用いて説明しているのだが、その後に以下のように付け加えている。

Incidentally, I suspect that this evidence is one reason why international macro people have tended to stay more Keynesian than domestic macro people — why those of us who read Obstfeld and Rogoff knew that Ricardian equivalence didn’t imply ineffectual fiscal policy, while even Nobel laureates on the domestic macro side were getting it wrong. If you work with international data, the evidence for price stickiness is so overwhelming that it’s hard to stay in denial.

(拙訳)
なお、こうした証拠が、国際マクロ経済学者の方が国内マクロ経済学者と比べてケインジアンに留まる傾向がより強い理由の一つではないか、と私は疑っている。つまりそうした実証結果のお蔭で、オブズフェルド=ロゴフを読んだ我々は、リカードの中立命題が財政政策の無効性を意味するわけではないということ――その点についてはノーベル賞を受賞した国内マクロの専門家でさえ間違って理解しているのだが――を知っているのだろう。国際経済データを扱っていると、価格の粘着性を示す証拠は圧倒的なので、否定し続けるのが難しいのだ。


ただし、続けて以下のような断り書きも付けている。

Oh, and to anticipate some comments: saying that wage and price stickiness is clearly there, and that it plays a key role in how we should understand the slump we’re in, does not say that increased wage flexibility is the answer; see this post.
(拙訳)
あと、予測されるコメントに対し先回りして言っておこう:賃金と物価の粘着性が確かに存在し、それが我々の陥っている不況を理解するに当たって重要な役割を果たしている、と述べることは、賃金の伸縮性を増大させることが解決策だということを意味しない。このポストを参照のこと*2

*1:マンキューについてはここここここを参照。David AndofattoStephen Williamsonも参照。

*2:このリンク先では、本ブログで以前説明した一般理論の第19章と概ね同様のことが述べられている。