おいらは税金上げても大丈夫だけど、その代わり仕事減らすよ

と題したマンキューの10/9NYTコラムが物議を醸している(原題は「I Can Afford Higher Taxes. But They’ll Make Me Work Less.」)。


そのコラムで彼は、自分が1000ドルの対価で論説記事の執筆を依頼される場面を想定し、その場合の勘定を以下のように3つのケースについて計算している。

  1. 税金が無い場合
    • 1000ドルを8%で回せば、30年後には子供に10000ドルを残せる
       
  2. オバマ政権による増税を前提にした場合
    • まず、1000ドルに以下の税金が掛かる
      • 連邦所得税:39.6%+1.2%
        • 上乗せ分の1.2%は控除廃止によるもの
      • メディケア税:3.8%
        • 先の医療改革法案により2013年から税率上昇
      • マサチューセッツ州所得税:5.3%(但し連邦税の控除という形で一部還付)
      • 結局、手取りは523ドル
    • さらに、8%の利回りにも税金が掛かる
      • 投資対象の企業への法人税:35%
        • 利回りは5.2%となる
      • その利回りにも連邦と州から課税される
        • それを考慮すると、利回りは4%となる
      • 523ドルを4%で30年回すと1700ドルになる
    • さらに、その1700ドルに相続税(おそらく55%弱)が掛かると、1000ドルになる
       
  3. オバマ政権による増税が無かった場合
    • 子供に残せる額は2000ドル*1


即ち、オバマ政権による増税を前提にした場合、子供に残せる額は10000ドルから1000ドルにまで減少するので、家族にとっての限界税率は90%ということになる。それに対し、ブッシュ時代の税率のままならば、限界税率は80%である。従って、この仕事を引き受けるインセンティブは、ブッシュ税制の方がオバマ税制の場合の倍あることになる、というのがマンキューのこのコラムの主旨である。

*1:マンキューは計算の詳細を示していないが、523ドルに連邦所得税のブッシュ減税廃止分46ドル(39.6%−現行の税率35%)と控除廃止12ドル(1.2%)とメディケア税の増税分9ドル(3.8%−現行の税率2.9%)を上乗せすると、590ドルになる。従って、利回りが4%で変化無いとすると、30年後の額は1700×590÷523=1918ドルになる。相続税が復活しなければ、これがそのまま子供の取り分となる。
なお、マンキューはコラムの冒頭で、自分の所得が民主党案でブッシュ減税廃止対象となる25万ドル以上であることを明らかにしている:
「As a professor at Harvard and the author of some popular textbooks, I am comfortably in the income range that would be hit by this tax increase.(拙訳:だって僕、ハーバードの教授だし、売れている教科書も何冊か書いているし、当然のごとくこの増税の対象範囲内にいるわけよ。)」