貧困層ではなく重度の貧困層に焦点を当てよ

ロバート・ワルドマンがAngry Bearでそう主張している

そのエントリで彼が参照しているのは、米国の貧困に関するCENSUSデータ。その中の表5では、所得が貧困基準ライン*1の定数倍以下の人口の比率が掲載されている(定数倍としては、0.5〜2.0まで0.25刻みに取られている)。

ワルドマンが強調しているのは、一般には貧困基準ライン以下の人口比率(poverty rate)が指標として使われるが、そうではなく、貧困基準ライン×0.5倍以下の重度の貧困層の人口比率(severe poverty rate)を重視せよ、ということである。
試しに両指標、および両指標の比をグラフ化してみると以下のようになる。

棒グラフ(左軸)が貧困人口比率および重度の貧困人口比率、折れ線グラフ(右軸)が前者に対する後者の比である。人口比率自体は、両指標ともに、景気や格差拡大の影響によって上下している。しかし、重度の貧困が貧困に占める割合は、ほぼ一貫した上昇傾向にある。これがワルドマンが問題視している点である。
この考察を元に彼は、翌日(9/17)のエントリで、クリントン政権下の経済成長と福祉改革によって90年代に貧困問題は改善した、と述べたマシュー・イグレシアスを大いに批判している。



なお、関連する話として、Economist's Viewに興味深い図が掲載されていたので、以下に引用しておく(ソースはOECD報告書)。


これを見ると、所得階層を10分位に分けた場合、米国の最上位層の平均所得はOECDのトップであるにも関わらず、最下位層の平均所得はOECDの平均を下回っている(日本よりも僅かに低い)。その結果、棒グラフの長さが最も長くなっており、格差の広がりが対象30ヶ国中最大であることが如実に示されている。

*1:貧困基準ラインには様々な定義があるが、CENSUSが使用しているものの定義はこちら。Mollie Orshanskyが1960年代前半に家計の食料への支出を基に開発した値に対し、インフレ調整を掛けた絶対基準値である(=所得分布などによる相対基準値ではない)。直近の値(家計の人数や子供の数によって48種に分類されているほか、家計の人数ごとの加重平均値が算出されている)はこちら、加重平均値の時系列推移はこちらを参照。4人家計についての直近値はおよそ2.2万ドルである。