コント:ポール君とグレッグ君(2010年第3弾)

昨日紹介した第二弾はマンキューの単発的な言及に終わって議論には発展しなかったが、今日紹介する第三弾はそれなりにお互いに言及している(ただし、両者の間のキャッチボールというよりは、それぞれ好き勝手な方向にボールを投げている感が否めないが)。

ポール君
マイケル・キンズレーハイパーインフレーションについて妙なことを書いていたので、70年代のスタグフレーションのような高インフレとハイパーインフレの違いを教えてあげたんだが*1、どうやらマイクはそれが気に食わなかったようだ(…ということをライアン・アベントのエントリで知った)。彼によると、そんな区別はマンキューの教科書に載っていないそうだ。
実は、僕が彼に教科書的な経済学を説いた時には、別の入門教科書が念頭にあったんだな、これが。…こちらの教科書も結構売れたんだよ。ただし、マンキューのほどでは(まだ)ないけど。それはさておき、その教科書のこの章できちんと区別しているから、読んどいて。
グレッグ君
ポール君とマイケル・キンズレーの間で面白い議論をやっているみたいね。順に
  1. キンズレーの元記事
  2. ポール君の批判
  3. キンズレーの反応
  4. それに対するポール君
  5. それに対するキンズレー
ポール君
インフレについて勉強するには先に挙げた教科書の方が良いと思うけど、一応手元にあったマンキューの第2版も覗いてみた。すると、ジンバブエみたいなハイパーインフレは第28章、70年代みたいなスタグフレーションは第31章、というように分かれていて、違う現象だということを明確に区別して論じていたよ。基本的にそれは僕の教科書と同じ分析だった。ただ、僕のほど区別が明確じゃないけどね。
グレッグ君
数日前のブルームバーグ記事日本語版)によると、今や米国債よりも、ウォーレン・バフェットの会社バークシャー・ハサウィの社債の方が利回りが低いそうだ。僕は、米政府の債務不履行(デフォルト)の可能性は、ポール君の予言したインフレによる債務軽減というシナリオよりも確率が低いと見ている。…そのポール君の予言は2003年に出されたもので、ご承知の通り外れたんだけどね。とは言うものの、今の債務は当時よりもずっと大きいので、今回について彼の推論が当たってしまうかもしれない。ただその場合、インフレは米国債にも民間の債券にも同じように逆風となるだろう(ということは、インフレ懸念はブルームバーグ記事にある利回り逆転の説明にはならないということだ)。
僕自身の予測は、米政府はGDP比で見てかつてない水準(ただし欧州では普通に見られる水準)まで税金を上げる、というものだ。とは言え、増税か歳出削減かで議会の議論が紛糾したら、債券投資家が神経質になり、ポール君のインフレのシナリオ、もしくは、可能性はより低いけどデフォルトのシナリオのいずれかが現実化してしまうかもしれない。

*1:このエントリはoptical_frogさんHicksianさんが訳されている。