リーマン破綻と金融危機・再訪

以前、リーマン破綻が金融危機の原因ではないというジョン・テイラーの主張と、それへの反論を紹介した。その後、ジョン・コクランとルイジ・ジンガレスがWSJ記事でテイラーと同様の主張を行い、コロンビア大学教授のリチャード・ロブ*1がFTで反論するという一幕もあった。


それに関連して、Econbrowserの11/7エントリでは、Trilogy Global Advisorsのウイリアム・スターリング(William Sterling)が書いた論文*2が紹介されている。

ここでスターリングは、Bloomberg Financial Conditions Indexというブルームバーグが昨年8月に開発した指数を用いて分析を行なっている。


その指数の構成とウェイトは以下の通り(ミシュキンのこの研究がヒントになっているとの由)。



また、指数の1991年以降の動きは以下の通り(縦の点線はリーマン破綻前の最後の営業日である2008/9/12)。


さらに、指数の昨年9-10月の日々変化は以下のようになっている。


テイラーの主張は主にLIBOR-OISスプレッドを根拠にしていたが、このように金融の状況をより総合的に把握できる指数を用いると、リーマン破綻を機に市況が大きくマイナス方向に動いていることが分かる。従って、やはりリーマン破綻は危機の大きなきっかけだった、というのがスターリングの結論である。

*1:Richard Robb。ヘッジファンドのCEOも勤めているとの由。この紹介によると、第一勧業銀行の証券とデリバティブの子会社のグローバルヘッドも勤めていたことがあるというが、確かにこの資料に名前がある。

*2:表紙には武蔵大学の黒坂佳央教授の記念論文集として武藏大學論集の57巻2号(2009年11月)に掲載予定と書かれている。また、前述のリチャード・ロブへの謝辞も書かれている。