どのテイラールールが正しい?

ジョン・テイラー直近の10/16ブログエントリで、クルーグマンの用いているテイラールールを誤用だとして批判している。


テイラーの言う“本家”テイラールールは以下の通り(テイラーの8/25付けブルームバーグコラム日本語訳より)。

  政策金利 = 1.5×インフレ率 + 0.5×国内総生産(GDP)ギャップ + 1

テイラーは、これにインフレ率=2%、GDPギャップ=-8%という数字を当てはめて、目標とすべき政策金利=0%という数字を弾き出している。これは現在の実際の政策金利にほぼ等しく、今に比べてGDPギャップが縮小するかインフレ率が上昇すると、政策金利を上げる必要があることを示している。テイラーはその時期を来年初めと予想している。


一方、クルーグマンは、10/10ブログエントリで、サンフランシスコ地区連銀のシニア・バイスプレジデント兼調査担当アソシエートディレクターであるグレン・ルードブッシュ(Glenn Rudebusch)の推計したテイラールールを用いている。

  政策金利 = 1.28×インフレ率 − 1.95×(失業率−NAIRU) + 2.07

これにインフレ率として個人消費支出価格指数の第2四半期の前年同期比=1.6%、失業率(9月)=9.8%、NAIRU(CBO推計)=4.8%を当てはめると、-5.6%という数字が出てくる。従って、金利は当分上げるべきではないことになる。


クルーグマンは、テイラーがこのルードブッシュの推計した“テイラールール”を嫌っていることを承知で使用している。それでもこちらのテイラールールを使用する根拠として、デロングの7/25エントリにリンクしている。そのエントリでデロングは、Calculated Riskの7/25エントリとルードブッシュの5/22レポートを併せて紹介し、天下り式に係数を押し付けているテイラーに比べ、実際に回帰推計を行なったルードブッシュの方が説得力がある、と後者に軍配を上げている。


ちなみにルードブッシュは推計データと推計式をExcelファイルの形で公開している。また、ルードブッシュのこのレポートは、日本でもたとえばこの記事で報道されている。