欧米の失業率を巡る賭け・その3

一昨日昨日のエントリで取り上げたキャプランとクイギンの間の賭けが成立したようだ。クイギンブログの直近エントリによると、2009-2018年の欧州の失業率平均が米国のそれを1.5ポイント以上上回ったらキャプランの勝ち、という内容で合意したとのこと。


クイギンの解釈では、これは囚人込みの失業率で両者がほぼ同じになったことを意味する(クイギンによれば米国の囚人比率は欧州より1.3ポイント高いので)。ただし、キャプランは囚人を考慮することに反対しているので、あくまでもそれはクイギン側の解釈の話に留まる。


また、クイギンは、キャプランの当初の1ポイント差の提案に対し2.5ポイントを提案→キャプランが拒否し、1.5ポイントを提案→合意、というこれまでの流れから、キャプランが1.5〜2.5ポイント、クイギン自身が1〜1.5ポイントの差を想定していると結論付け、両者の経済学的見解の差の割には推定値が近いことを指摘している。


ちなみにクイギンは、昨日紹介したケンウォーシーのエントリにもコメントを寄せ、直前のコメンテーターに賛同する形で、雇用率を考える場合には学生や子育ても考慮する「経済活動」の定義が必要だ、と指摘している。クイギン自身は豪州についてかつてそういった研究を行なった(ただし出版に至らなかった)との由。


一方のキャプランは、Econlogの彼の直近エントリで、賭けの成立には直接触れていないが、欧州の失業率について以下のようなことを書いている。

  • 米国と欧州の失業率を比較すると、欧州の多様性を指摘する批判に遭うが、米国内の労働状況も地域により異なる。
  • 自分は労働市場が規制されていないほど普段の失業率が低く、不況期にはそれが跳ね上がるというステレオタイプな見方をしている*1。ここ1年のEU15ヶ国の各国の失業率の推移を見ても、大雑把に言えばそれが裏付けられる*2

[追記]
本エントリを上げた直後にキャプラン賭け成立に関するエントリを上げた。その中で、上記の「キャプランが1.5〜2.5ポイント、クイギン自身が1〜1.5ポイントの差を想定している」とクイギンが書いたことに触れ*3、そのクイギンの1〜1.5ポイントの差というのも実は高い数字なのだ、と分析している。というのは、米国の摩擦的失業率を0.5ポイントとした場合、1.25(クイギンの推定の中位値)+0.5=1.75となり、欧米の差を摩擦的失業率の差と考えた場合、欧州には米国の実に3倍の摩擦的失業が存在することを想定していることになるからである。

*1:この点は一昨日紹介したクイギンと共通している。

*2:ただしここでキャプランは、デンマークとオランダを市場規制の緩い国に分類している。それは、一昨日のエントリで紹介したCEPRのシュミットの見方(=キャプランの21日エントリへのコメント)とは反対である。

*3:相変わらずQuigginではなくQuigganとスペルを間違えている。[29日追記]その後漸く修正した。