シラー「大恐慌への恐れ? 今に始まったことじゃねーだろ」

ロバート・シラーが、ミシガン大学消費者信頼感指数(University of Michigan Consumer Sentiment Index)で知られるミシガン大学サーヴェイ・オブ・コンシュマーの調査結果を元に、現在の人々の大恐慌到来への恐れが意外に高くないことを示している(Economist's View経由)。

シラーによると、ミシガン大学の調査では、今後5年間の経済先行き予想に関するアンケートを取っており、それを指数化している(それが消費者信頼感指数の5つのサブインデックスの一つとなっている)。ある実証研究によると、このアンケートに楽観的な答えを出した被調査者は、実際に消費支出を増やす傾向が見られた、とのこと。
指数の1960年以降の平均値は94で、それが65を切ったのが過去4回あるという。

  1. 1974-1975(最低値=47)
  2. 1978-1982(最低値=41)
  3. 1990-1992(最低値=54)
  4. 2008-2009(最低値(今のところ)=59)

今回の最低値は、今のところは過去3回の最低値より高い上、3月の63から4月には81に跳ね上がったという*1

その理由として、最初の2回(1974-1975と1978-1982)は石油ショックとインフレ高騰が重なったのに対し、今回はインフレは見られず、石油価格高騰も既に収まったためではないか、とシラーは推測する*2。銀行のストレステストやOIS-Liborスプレッドがどうのこうのと専門家が騒いでも、身近な価格に影響が無ければ、市井の人にはいまひとつピンと来ないのだろう、との由。


シラーは最後に、「恐れるべきは恐れそのものである」というフランクリン・ルーズベルトの言葉を引いて、人々が現在それほど恐れを感じていないのは良いニュースかもしれない、と書いている。


ちなみに、シラーは上記論説の中で、「great depression」という言葉を含む記事のカウント数は、上記の4つの期にやはりピークを見せたと書いているが、関連する話として、最近、ダウジョーンズが記事データベースのテキストマイニングを元に景況感指数を開発した、というニュースがあった。残念ながらこちらは1990年以降しかデータが無いようだが、Econbrowserでメンジー・チンが紹介したグラフを見ると、確かに1991年に最初の底を付けている。ただ、2002年にもそれと同じくらいまで下がっているほか、今回はそれをさらに下回っているので、動きとしてはミシガン大学の指数と一致する、というわけにはいかないようだ。


また、もう一つ関連するニュースとして、ニールセンの世界消費者景況感指数が半年前を7ポイント下回り過去最低となった、というものもあった(関連記事はここここ、ニールセン自身の資料はここここここ)。その発表資料でも、米国は下げ止まったようだ、と書かれており、上記のシラーの分析と符合する。
なお、調査対象の50ヶ国の中で日本は韓国に次いで景況に悲観的とのことだが、1年半前も下から3番目だったとのことで、ずっと悲観的な状況が続いているようだ(佐野市に住む外国人にもそう映っているらしい内閣府消費者態度指数景気ウォッチャー調査では明るい兆しも見られるのだが…)。

*1:ただし、過去3回のケースでは、値が上昇した後はまた反転する傾向が見られ、結局、恐慌を懸念する傾向はかなりの期間続いた、とシラーは断っている。

*2:ただし、3番目の1990-1992については、前の2回と違う様相を見せた、とシラーは述べている。ラビ・バトラの「1990年の大恐慌」が不安を招いたわけではないだろうが、その予言(ブラック・マンデー、不動産バブルとその崩壊、S&L問題)はかなり当たった、とも述べている。