サックスの銀行救済案

マンキューが論評抜きでサックスの銀行救済案を紹介している。サックスのアイディアは、基本的にはここで紹介したレオンハートの案と同じで、銀行から不良資産を買い取るに当たって、銀行の株式(ないしワラント)の取得をセットにする、というものである。ただ、取得株数はその段階では決めず、実際に政府が買い取った不良資産を処分する段階で、買取価格と売却価格の差分に応じて決める、というのがサックスのアイディアの味噌である。また、レオンハートの案についてマンキューは、不良資産買い取りのオークションの過程が複雑になる、ということで否定的だったが、サックスは取りあえず額面で買うことを想定している。


サックスの案を、彼の挙げた数値例に沿って紹介すると以下のようになる。

  • 銀行の資産を100(うち正常資産が80、不良資産が20)、預金を90とする。
  • 不良資産を適正な価格で買おうとすると資産圧縮と貸し出し抑制を招いてしまうので、取りあえず額面の20で買い取り、同時に条件付きワラントを取得する。
  • 政府は不良資産を1〜2年掛けて処分する。
    • もし最終的な売却価格が20だったら、ワラントは行使されない。
    • もし最終的な売却価格が10以下だったら、ワラントの行使により全株を政府が取得し、銀行は国有化される。
    • もし最終的な売却価格が10以上20以下、たとえば12だったら、ワラントの行使により20-12=8だけ政府が株式を取得する。

さらにサックスは、資産処分の最中に銀行側がモラルハザード的な行動(役員や従業員への過大な賞与や、クルーグマンが指摘するような賭けに近い貸し出し*1)を取るのを防ぐため、政府に予めそうした経営行動を拒否できるような黄金株を割り当てることも提案している(ただし、ワラント行使の暁には、そうした経営への関与の権利も民間に売却するものとする)。

*1:サックスは"Hail-Mary" lendingと呼んでいる。Wikipediaによると、"Hail-Mary"とは、「in American football, is a forward pass made in desperation, with only a very small chance of success」との由。