昨日はクルーグマンの推計したインフレ率変化幅のGDPギャップへの回帰式と、それを巡る議論を紹介した。
素朴な疑問として、なぜクルーグマンはインフレ率ではなく、その変化幅を被説明変数に用いたのだろう、と訊きたくなるが、その答えは、実際に回帰を行なってみるとすぐに明らかになる。
このように、回帰係数の符号条件が成立しないのである。すなわち、GDPギャップが低いほどインフレ率が高い、という結果になってしまう。
このことは、以下の時系列グラフを見ても伺える。
80年代前半の高インフレ率と不況の組み合わせというスタグフレーションの影響に引き摺られて、上記のような回帰結果になってしまうことが分かる。
では、86年以降に期間を絞ってみるとどうだろうか。
今度は、ほぼ無相関になってしまう。
ちなみに日本ではそのようなことはなく、インフレ率をそのままGDPギャップに回帰しても以下のような回帰式が得られる(データソースは米国と同じIMF)。
86年以降に期間を絞ると、その精度は高まる。
そして、日本の場合は、インフレ率の変化幅を用いると、却って式の精度は悪化する。
どちらの系列を用いるかの選択は、サイエンスではなくアートの世界ということになるのだろうか…。