ウラシマ効果と複利効果

9日のエントリのコメント欄で、ウラシマ効果複利効果についてmabutanさんとやり取りさせて頂いたが、改めて両者について計算してみた。


まず、ウラシマ効果について。
宇宙船の速度の光速に対する比率と、時間の遅れ具合をグラフにしてみた。
式は、比率をv/c、時間の遅れ倍率をNとして、N = \sqrt{1-(\frac{v}c)^2}

この結果から、時間の遅れが2倍になる時点で、既に光速の86.6%の速度を必要とすることが分かる。3倍では94.3%、6倍では98.6%で、8倍で99%を超える。
逆に言うと、8倍を超えると、速度の比率は99%台のコンマ以下の変化に過ぎなくなる。下表のように、10倍ごとに、小数点以下の9が2桁ずつ増えていく感じである。

時間の遅れ(倍) v/c
1 0.00000%
5 97.97959%
10 99.49874%
50 99.98000%
100 99.99500%
500 99.99980%
1000 99.99995%


一方の複利効果だが、先日のコメント欄では4%という数値例を用いた。しかし、良く考えてみると、本文に書いたとおりリスクプレミアムを考慮するべきなので、4%では低すぎる。そこで、20%と40%の場合も加えて10年までの複利効果を描画してみると、下図のようになる。

これを見ると、時間の遅れが10倍、即ち光速の99.5%で航行している宇宙船で、惑星系の割引率を40%と見込んだ時、船内の割引率は年率で2793%となる。つまりその場合は、1日当たり約7.65%の割引率を適用するべきことが分かる*1


では、先日のエントリの本文で例に出したジンバブエのインフレ率並みの割引率になるのは、どういった場合だろうか。ちなみに年率2.3億%だと、1日で63万%、1時間で2.6万%、1分で438%、1秒で7.3%、という計算になる。
コメント欄では、4%が複利で2.3億%になるのに374年掛かるという計算を示したが、2%〜40%の割引率について、同様に年数を計算してグラフにしてみた(併せて、2300%に達する年数も示した)。

これによると、割引率=40%でも2.3億%に達するには40年以上掛かり、光速の99.97%での航行が前提となることが分かる。なお、2300%の場合の年数は2.3億%のおよそ5分の1程度であるが、これは下記の計算式から明らかなように、割引率の5桁の違いに対応している。
    N = \frac{ln(1+r_e)}{ln(1+r_s)}
(reは惑星系の割引率[今の場合2.3億% or 2300%]、rsは宇宙船内の割引率、Nは年数)


ついでに割引率が2000%に至るまでを計算してみると以下のようになる。


トイチ(10日で1割、年365%)の割引率だと10年、トゴ(10日で5割、年1825%)の割引率だと5年で2.3億%に達することが分かる。



そういえば昔、複利効果のせいで予定より早く冷凍睡眠から起こされた主人公のSFを読んだ記憶がある。主人公が寝ている間に複利効果で資産が雪だるま式に増え、もうすぐ太陽系の全資産を上回ってしまうところまで来てしまったので、困った銀行家が已む無く叩き起こした、という話だったように思う。うろ覚えなので脳内加工が入っているかもしれないが、もし心当たりのある方がおられたらご教示いただければ幸甚。
(…しかし8日エントリの問い掛けでは本当に教えていただける方が現れるとは思わなかった。改めて感謝。)

*1:慣例に従い、1年以内の割引率は単利を使うものとして、単純に365で割った数値とした。以下同様。