ファーマ=フレンチのブログ

ファイナンス理論を齧ったことのある人なら、ユージン・ファーマとケネス・フレンチの名前を知っているだろう。毎年ノーベル経済学賞候補に擬せられているほどの大物である。先週のマンキューブログで、その二人がブログを始めたことを知った。
ファーマ=フレンチ=フォーラムと呼称しているそのブログは、Dimensional Fund Advisors社のサイト上にある。ちなみに同社はファーマやフレンチも参画し、ショールズやマートンが役員を務め、ファーマの息子も在籍しているというすごい顔ぶれ投資顧問会社である。投資手法は当然ながら現代ポートフォリオ理論に沿ったもので、ファーマ=フレンチの3ファクターモデルも使われている


二人のブログもさぞかし投資理論に関する知見が散りばめられた読み応えのあるものだろう、と思ったら…。正直言って少し期待外れだった。時節柄、金融危機を扱ったエントリが続いているのは仕方の無いことかもしれないが、その内容がはっきり言って浅い。たとえば、Q&Aカテゴリのエントリは、簡潔なのは良いが、その分、通り一遍のことしか書いていないように思われる(きちんとした分析は論文を読むか、金を払え、ということなのだろうか。でもだったらブログを始めた意味もあまり無いような…)。
また、マクロ経済に言及したところでは、シカゴ学派ファイナンス理論家がマクロ経済を語るとこうなるだろう、という世間のイメージ通りのことが書かれている。特にファーマの直近のエントリでは、IS恒等式から考えて、政府の企業救済や景気刺激策は、結局どこかの民間投資機会を奪うことになる、という議論を展開している。IS均衡に至る過程が経済全体に与える影響(それこそがケインズが啓いたマクロ経済学の一つのエッセンスなのだが)はまったく眼中に無いようだ。

以前、日本のファイナンスの専門家はマクロ経済を勉強不足ではないか、と書いたことがあったが、米国の泰斗にしてこうなのだから、あるいはやむを得ないことなのだろうか。