17日のエントリにokemosさんからコメントを貰った時、返答コメントに、「ざっと彼のエントリを読んだところでは、ハミルトンはあまり財政政策に好意的なようには思われないです」と書いた。それは、"fiscal"でEconbrowserをぐぐって見つけたこれやこれのエントリに目を走らせて受けた印象に基づいていた。
だが、その後、19日のエントリで、ハミルトンは財政刺激に関する以下のような考えを披露した。
For these reasons, my preferred fiscal stimulus would take the form of temporary unrestricted block grants to state and local governments.
http://www.econbrowser.com/archives/2008/12/fiscal_stimulus.html
これは、マンキューのいわゆるFederalist Fiscal Stimulusと同様の趣旨である。
この提案の背景には、財政危機により地方レベルでの公共投資が止まりつつある現状に鑑みて、連邦政府レベルの投資は単にそれらを置き換えるだけではないか、というコーエンと同様の懸念と、そうした置き換えでは雇用の再アロケーションに伴うコストが発生してしまう、という認識がある。
また、先の検索では見落としていたが、15日のエントリでも、最後にさらっと以下のような一文を書いていた。
So Plan B, at least in the interim, would seem to be an increase in the fraction of GDP devoted to government investment.
http://www.econbrowser.com/archives/2008/12/finding_the_exi.html
これは、消費の回復によって景気を回復しようと考えても、2005年の消費の状態に戻すのは現実的ではないという見解に基づくものである。というのは、当時はモーゲージ・エクイティによって消費が支えられ、家計の貯蓄率がマイナスに陥った一方、モーゲージ債務がGDPの8割近くに達した。これは、過去十年間、従来ならばモーゲージを手にすることのできない家計に提供した結果であるが*1、モーゲージのエクイティ部分への家計の持分割合が5割を切った現在、その再現は不可能、というのがハミルトンの見立てである。
では、民間設備投資か、あるいは輸出に頼るか、と言っても、現在の環境下で設備投資をする企業はいないだろうし、輸入を増やしてくれる国もいないだろう。すると頼みの綱は政府の公共投資のみ、ということになる。これは、クルーグマンの直近のOp-Edコラムと基本的に同じ論理展開である。
…というわけで、これまで漠然とハミルトンは財政刺激懐疑派かと思っていたが、容認派の方に分類し直しても良さそうである*2。
*1:まさに、クラーク=リーの言う「creative effort was expended to come up with one way after another of putting more spending power in the hands of a populace that had forgotten how to say 'wait', much less 'no', to itself」という状況!
*2:ただ、皮肉な見方をすると、彼のこれまでのエントリでの政策提言は、マンキューのリフレ策や地方政府への交付策、およびクルーグマンの財政刺激策の良いとこ取りをしているだけ、という気がしなくも無い。まあ、分析部分(特にFRBの分析)では、彼ならではの鋭さが発揮されているので、それはそれで良いではないか、とも言えるが…。