表題の件についてEconomist's Viewやマンキューブログに書かれたものを少し拾ってみる。
Mark Thomaの意見(11/14)
(まずは、Economist's ViewのMark Thoma自身の意見)
もし今回の危機が金融危機によるものであり、それが過ぎれば立ち直るのであれば、救済するべきだろう。しかし、どうも金融危機以前の問題に根ざしているようなので、破産の選択肢の方が良いように思われる。
ベッカーの意見(11/16)
(ベッカー=ポズナーブログ。マンキューブログ経由)
破産して、かつて全米自動車労組(UAW)との協定で課せられた過大な労働コスト(数年前まで年50億ドルをヘルスケアに払っていた)のくびきから脱すべし。
経営者のことは良く知らないが、辞めてもらうべきだろう。スポーツチームに喩えれば、数試合負けたならまだ言い訳を聞く余地はあるが、これだけ負けが込めば、監督はクビになるのが常識。
「大きすぎて潰せない」という懸念が該当するとは思わない。破産は潰すわけではなく、再編が目的なので。それに対し、救済は問題を先送りにするに過ぎない。
サックスの意見(11/17)
- 政府支援の業界再構築により、米国の自動車技術の世界における主導的地位を取り戻すべし(例:1ガロンで100マイル走る車)。
- 自動車業界の破綻の影響は不況を恐慌に変え、数百万の仕事に影響を及ぼす恐れがある。
- 自動車のように再販や修理の必要がある耐久財では、消費者は会社の存続を望む。そうした業界では、チャプター11は一息つく余地をもたらすのではなく、弔鐘となる。
今の自動車販売台数の落ち込みは趨勢的なものではなく循環的なものであり、中印での需要の増大や、国内市場の成長および買い替え需要を考えれば、いずれは回復する。現下の金融情勢では、それまでの資金つなぎを金融市場に頼れないので、政府が資金援助すべき。
フェルドシュタインの意見(11/18)
(ワシントンポスト。Economist's View経由)
250億ドル程度資金注入しても、すぐ使い切ってしまうだろう。問題は労働コストなのだから、チャプター11のもとで会社が存続可能な水準までその労働コストを引き下げ、再建に取り組むべし。そうした再建は航空業界でも製造業でも前例がある。破産すれば数百万の仕事が失われるという主張は、ためにする議論であり、ナンセンス。
もし政治家がどうしても破産を受け入れられないのであれば、資金注入の代わりに、根本的な再建策を課すべき。それは、より燃料効率的で環境にやさしい車作りという生産面の改革だけでなく、賃金や退職給付のカット、配当や役員賞与の抑制、債権の減額を含まねばならない。つまり、経営陣、労組、退職者基金、株主、債権者すべてに犠牲を払ってもらうことが必要。
マシュー・スローター(ダートマス大)の意見(11/20)
(WSJ。Economist's View、マンキューブログ経由)
米国自動車産業の救済は、米国に直接投資している海外の自動車メーカの投資意欲を失わせる恐れがある。オバマ次期大統領は、「存続可能な米国自動車産業とはどのようなものか?」と尋ねたが、トヨタに代表されるそうした「海外」自動車メーカこそが、今やそれに該当するのだ。救済は海外での保護主義的な動きを生みかねない。
(この意見については、Mark Thomaは、救済が米国景気の回復をもたらすならば、海外メーカも歓迎するだろう、という意見もあり得る、とコメントしている)
ロバート・ライシュの意見(11/21)
(ブログ。Economist's View経由)
GMは見捨ててシティは救済しようという今の動きはおかしい。金融機関は特別だ、というウォール街の論理にはまやかしがある。
なお、経済学者ではないが、ウェズリー・クラーク元NATO最高司令官が、国防の観点から反対の意見を表明している(NYT。Economist's View経由)。