Economist's Viewで、ルーカス――ただしロバートではなくジョージの方――の出身校の教授、リチャード・グリーンのブログ記事が取り上げられていた。内容的に、概ね日本にもそのまま当てはまる話であり、本ブログで最近取り上げた話題と重なる部分もあるので、簡単に紹介しておく。
グリーンのエントリは、オバマの週次演説を受けたものである。この演説についてはokemosさんが紹介しているが*1、その中でオバマは公共事業の拡大を訴えている。グリーンは、それは良いこと、と賛意を示した上で、過去28年間のうち20年間、そうした公共事業がイデオロギー的理由で十分になされなかった、と共和党を批判している。
The Republican throwaway lines--you are always better at spending your own money than the government, and government doesn't solve the problem, it is the problem--represent the contempt Republicans have for public goods.
小生は、先日の財政刺激を巡る拙エントリで、
結局、議論は、
- 政府に任せると駄目な結果に終わるから、公的支出するくらいなら民間に回すべき。
- 政府でなくてはできないインフラ整備があるから、公的支出の意味はある。
のいずれの立場を取るか、という論点に収束するのではないかと思う。
財政刺激あれこれ - himaginaryの日記
と書いたが、このうちの前者がグリーンの批判する上記の共和党イデオロギーに相当する。そのエントリで小生は、意外にはてな経済関係ブロガーがばらまきに否定的でない、とも書いたが、それはそうした方々が、グリーンの言う共和党イデオロギーに親和的であることを示すものであろう。
しかし、経済に有益な公共事業、すなわちNPV(Net Present Value)がプラスとなる公共事業は存在する、とグリーンは指摘する。保守派のジョージ・ウィルでさえ、州間高速道路は文句の付けようの無い成功だと認めている。それ以外にも、NYへ通じるトンネルや橋は、かの市が世界一の都市になるのに大きく貢献した。そう考えると、道路、水道、電力、港湾、空港などで、公共投資をすべきところはまだ多くある、というのがグリーンの主張である。
問題なのは、そうした公共投資の資金が、政治的思惑により、地道で役に立つことにではなく、派手だが実は非効率なことに流れやすい、という点にある。グリーンは、そうした問題を避けるため、議会予算局のような超党派の機関が、公共支出予算を厳しく査定して優先順位を決定することを求めている*2。それ抜きでは、どこにも通じない橋のような役立たずのもの、すなわちNPVがマイナスのものがどうしてもできてしまうだろう、と彼は言う。
この最後の段落の提案は、日本でも是非実現したいところである。日本の大衆がばらまきに反対し、かつ無駄な公共事業に反対するのは、単なる幼児性という問題ではなく(もちろんそうした側面もあるだろうが)、結局そうした適正化プロセスを求めている、ということではないだろうか。