スティグリッツ「Globalization and Its Discontents」書評/アイケングリーン

引き続き、30日エントリで紹介した各種記事の紹介。

● Barry Eichengreen:書評 The Globalization Wars: An Economist Reports From the Front Lines (Foreign Affairs 2002/7-8)(リンク


アイケングリーンは1952年生まれの経済学者なので、やはりクルーグマン等と同世代に当たる。
この書評では、スティグリッツの提起した各論点を取り上げて論じている。*1

  • 金融の急激な自由化が危険というスティグリッツの指摘には多くの経済学者が(後知恵という面はあるが)同意。
  • IMFが経済危機に襲われた国に金利引き上げを要求したことに対するスティグリッツの批判については、議論の余地がある。専門家の間でもこの件についてはコンセンサスが存在しない。
  • 危機の際に資本移動を規制せよというスティグリッツの提案についても議論の余地がある。
  • IMFが政策の社会的や政治的に見た持続可能性を無視しているというスティグリッツの批判は、少なくとも現在は当っていない。
  • IMFの能力に疑問があるから構造改革を資金貸し付けの条件にするのを一切やめよというスティグリッツの主張は、お湯と一緒に赤ん坊を流す危険性を孕んでいる。それよりは構造改革をより効果的なものにするのが本筋ではないか。
  • 世銀は学習能力があるのにIMFには無いというが、(アイケングリーン)自身が実際に当時IMFに顧問としていた時の印象からすると、IMFには過ちを認める能力は備わっている。
  • 世銀とIMFの議決権シェアをより途上国に振り向けよ、というスティグリッツの提案は重要なものだが、借り手が自分の貸し手になるというモラルハザードの問題が出てくる。(アイケングリーン)個人としては、中央銀行のように政治的に独立した機関になるのが望ましいと思うが…。*2

*1:余談だが、最初の小節のサブタイトルが「MR.STIGLITZ GOES TO WASHINGTON」になっているのは、もちろんこの映画のもじり。

*2:今年の4月にはこのような改革が実施されたらしい。