日本経済の「流動性の罠」模式図

ここ数日、リフレ政策や構造改革に絡む論争がブログ界隈で軽く再燃の兆しがあるようだ。
http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20080722/1216698844
http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20080725/1216939939
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080722/p1
http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080720/p1
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20080726
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080724#p3


それを受けて、というわけでもないが、以前、日本経済が嵌っているとされる「流動性の罠」を模式図にしてみて、その図を基に各経済政策についてまとめてみたことがあったので、今日はそれをアップしてみる。内容的には昨日一昨日のエントリともつながっているので、そちらも併せてご覧いただければ幸甚。



Y
xx-small;">f:完全雇用時の生産水準
Y
実際の生産水準
自然利子率
Yf =Yとなる金利水準
実質金利
名目金利−期待インフレ率

【各経済政策の効果】

上図に示した悪循環(=罠)をどこで断ち切ることを狙っているか、という観点から、財政政策、リフレ政策、構造改革の3政策、ならびにスタンプ紙幣政策(cf.昨日エントリ)をまとめてみると、以下のようになる。

  • 財政政策
    • Yの押し上げ([A])
  • リフレ政策(調整インフレ政策/インフレ目標政策
    • 期待インフレ率の押し上げ([D])
  • 構造改革
    • 需要喚起によるYの押し上げ([A])
      • 【批判】Yfを押し上げ、却って需給ギャップを拡大させるのではないか?([A])
    • 自然利子率の押し上げ([E])
    • 成長期待による期待インフレ率の押し上げ([D])
  • スタンプ紙幣

クルーグマンモデル(現在−将来の2期間モデル)

また、リフレ政策の原点とも言えるクルーグマンモデルをここで簡単にまとめてみる(そもそも上のまとめもそのモデルを基にしている)。

  1+i = (1/D)・(Y*/Y)・(P*/P)
  1+r = (1/D)・(Y*/Y)

    i:名目金利、r:実質金利、D:割引率
    Y*:将来の生産水準、P*:将来の価格水準、P:現在の価格水準
    (将来=期待ベースと考えても良い)

(Y*/Y) < Dならばr < 0
iは0以下になり得ないので、均衡のためにはP* > Pとなる必要
 =インフレ期待を作り出すために現在の価格が下がること(=デフレ)が必要

…デフレが継続して価格が下がるだけ下がれば、最終的には期待インフレ率が上昇する!*1
 But, in the long run, we are all dead.
 →だからこそ、期待インフレ率を上げるために、今、何とかしなければ。

*1:個人的には、ぐずぐずしているうちに、結局、(政策効果よりはむしろ)この効果が00年代半ばから利き始めたのではないか、という気もしていますです(まあ、根拠を示せといわれると困ってしまうレベルの憶測ですが)。