7/1のエントリで触れたクルーグマンの6/23ブログ記事を訳しておく。これは昨日エントリで一部を訳した6/21ブログ記事の続きであり、例の小論文(へのリンク)を載せた6/24ブログ記事への繋ぎになっている。つまり、6/21記事で、サミュエルソンの先物価格と将来現物価格の等価式を考えの出発点に使う、と宣言した後で、6/24に実際にモデルを書き下すまでの、まさにその過程になっているわけだ。
OK、もう一つエントリを立ててみよう。
まず、私はこの問題に関して何ら政治的立場は無い。暴走した投機が市場を歪めた、と信じることにためらいはない。そして、高い原油価格に対し消費者が運転の習慣を変えたり、もっと小さな車に乗り換えるなどしてより十分に反応すれば、原油価格は、一時的にせよ、下がるとは思う。
しかし、専門家として、投機が価格を上昇させる仕組みにまとわりついている神秘主義には腹が立つ。
そこでこのエントリでその点を解説しておく。
太郎と花子(どちらも原油の生産に直接携わっていない)が、賭けをするとしよう:太郎は原油が150ドルになるといい、花子はならないという。この行為は、原油の現物価格、人々が実際にあのねばねばの液体を1バレル得るために払う価格に、どのような直接的影響を及ぼすだろうか?
答えは、間違いなく、何も影響は無い、だ。実際にモノを売買しない人間の賭けを誰が気にする? それは太郎が1000万人いても同じことだ。
先物契約は、あくまでも、将来の価格に関する賭けだ。それは現物価格には、一切、まったく、何ら直接の影響を及ぼさない。そのことは太郎が何人いようが、言い換えれば、ポジションがどんなに大きかろうが変わらない。
現物価格への影響はあくまでも間接的なものに限られる:つまり、実際に売り物の原油を持っている誰かが太郎と先物での売却契約を結ぶことにし、期限に決済できるようその手持ちの原油を市場から引き揚げて寝かせておく場合だ;この行為が意味を持つのは、先物価格が現物価格に貯蔵コストと金利コストを上乗せしても十分お釣りが来るくらい高いときだ。
私がこれまで指摘したように、在庫データにはこうしたことが起きているのを示す証拠は何も無い。
それからもう一つの事実がある:今回の価格上昇期において、全般的に先物価格は現物価格をやや下回っていた。
この後は価格グラフの説明やチェイニーをだしにしたアメリカンジョークなどが続くが、それらは割愛。