2008年の危機:太平洋横断的か大西洋横断的か?

というレポート(原題は「The 2008 crisis: transpacific or transatlantic?」)をBISのRobert N McCauleyが同行のQuarterly Reviewに書いている(H/T Mostly Economics)。 以下はその要旨。 This study analyses two hypotheses that ascribe the 2008 US …

経済史とグローバリゼーションの今日的課題

というNBER論文(原題は「Economic History and Contemporary Challenges to Globalization」)をオックスフォード大のKevin Hjortshøj O'Rourkeが上げている(ungated版)。 以下はその要旨。 The paper surveys three economic history literatures that c…

構造ならびにイデオロギーとしてのネオリベラリズム

と題したEconospeakエントリ(原題は「Neoliberalism as Structure and Ideology」)でピーター・ドーマンが概ね以下のような考察を行っている。 かつての政治経済学では、経済構造がすべてである、という左翼の説を幅を利かせ、文化や意識は派生物として軽…

ブレグジットが2008年の金融危機より遥かに問題含みである理由

というブログ記事(原題は「Why Brexit is so much more problematic than the financial crisis of 2008」)をTony Yatesが書いている(H/T クリス・ディロー)。 以下はYatesの挙げる理由。 金融危機の際は、展開する事象に対応する能力を備えた首尾一貫し…

規模の経済ではなく市場支配力が米経済を左右している

という主旨の記事を、連邦取引委員会(FTC)と連邦通信委員会(FCC)の元エコノミストで、現在はアメリカン大学の法科大学院で研究教授を務めるJonathan B. BakerがProMarketに書いている。FTCは、「21世紀の競争と消費者保護(Competition and Consumer Pro…

行動新古典派成長モデルにおける均衡分析

というNBER論文をアセモグルらが上げている(ungated版)。原題は「Equilibrium Analysis in the Behavioral Neoclassical Growth Model」で、著者はDaron Acemoglu(MIT大)、Martin Kaae Jensen(サリー大)。 以下はその要旨。 Rich behavioral biases, m…

現金と経済:インドの廃貨の実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Cash and the Economy: Evidence from India's Demonetization」で、著者はGabriel Chodorow-Reich(ハーバード大)、Gita Gopinath(同)、Prachi Mishra(ゴールドマンサックス)、Abhinav Narayanan…

ランダム化比較試験を用いた発展途上国経済における長期的影響の推計

というNBER論文が上がっている(H/T Mostly Economics、ungated版)。原題は「Using RCTs to Estimate Long-Run Impacts in Development Economics」で、著者はAdrien Bouguen(UCバークレー)、Yue Huang(同)、Michael Kremer(ハーバード大)、Edward Mi…

中韓のGDPと収束モデル

Antonio Fatásがブログで以下のような興味深い図を示している。この図で横軸は時間当たりGDP(ただし米国で基準化した値)、縦軸はその後5年間の時間当たりGDPの平均成長率である。対象は中国と韓国、期間は1980年から2018年で、最後のオブザベーションは201…

アベノミクスを止めるな!

「Abenomics Is Working, Don't Stop Now」というピーターソン国際研究所の論説記事をジョセフ・ギャニオンと田代毅氏が書いている。 以下はその概要。 景気拡大が戦後最長になろうとしていて、女性の労働参加率と企業利益が過去最高、失業率は25年来の低さ…

フリーソフトとGDP

以前、無料経済とGDPに関するShane GreensteinのDigitopolyエントリを紹介したことがあったが、こちらのエントリ*1でGreensteinが再びそのテーマを取り上げている。そこで彼は、テレビが白黒からカラーに移行した時の経済効果の計測について以下の点を指摘し…

ガマの油の経済学

マンキューが、スティーブン・ムーア(Stephen Moore)とアーサー・ラッファー(Arthur Laffer)の下記の著書「トランポノミクス(Trumponomics)」の書評をフォーリンアフェアーズに書いている(H/T マンキューブログ)。Trumponomics: Inside the America …

金融政策と所得の追求

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Monetary Policy and Reaching for Income」で、著者はKent Daniel(コロンビア大)、Lorenzo Garlappi(ブリティッシュコロンビア大)、Kairong Xiao(コロンビア大)。 以下はその要旨。 We study the…

ベンチマーク採用助成

というNBER論文をアニール・カシャップらが書いている(ungated版)。原題は「The Benchmark Inclusion Subsidy」で、著者はAnil K. Kashyap(シカゴ大)、Natalia Kovrijnykh(アリゾナ州立大)、Jian Li(シカゴ大)、Anna Pavlova(ロンドンビジネススク…

金融の独立性と借り換え危機

というNBER論文が上がっている(ungated版、今年6月のキヤノングローバル戦略研究所(CIGS)セミナー*1での発表資料)。原題は「Monetary Independence and Rollover Crises」で、著者はJavier Bianchi(ミネアポリス連銀)、Jorge Mondragon(ミネソタ大)…

ブレグジットの不確実性と貿易の崩壊

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Brexit Uncertainty and Trade Disintegration」で、著者はAlejandro Graziano(メリーランド大)、Kyle Handley(ミシガン大)、Nuno Limão(メリーランド大)。 以下はその要旨。 We estimate the unc…

二重回帰

という論文(原題は「Dual Regression」)をFrancis Dieboldが取り上げ、一般最小二乗法における通常の二次の損失関数を、それと似ているが違うものに変更した論文、と解説している。論文では定式化が正しい場合と間違っている場合について興味深い特性が導…

より優れた数学が市場で勝つのか?

インディアン・インスティテュート・オブ・マネージメント・アフマダーバード(IIM Ahmedabad,)のJayanth Varmaが表題のブログエントリ(原題は「Does better mathematics win in the markets?」)で、数学と証券市場に関する以下の3つのエピソードを紹介し…

データ依存と米金融政策

先月27日にリチャード・クラリダ(Richard H. Clarida)FRB副議長が金利の正常化を正当化する発言をして話題になったが、以下はその表題の講演(原題は「Data Dependence and U.S. Monetary Policy」)の最終部。 As the economy has moved to a neighborhoo…

生産が不均一な経済における金融政策ショックの伝搬

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Propagation of Monetary Policy Shocks in a Heterogeneous Production Economy」で、著者はErnesto Pastén(チリ中銀)、Raphael Schoenle(ブランダイス大)、Michael Weber(シカゴ大)。 以下…

情報費用と逐次的情報収集

というNBER論文をマイケル・ウッドフォードらが書いている(昨年9月時点のWP)。原題は「Information Costs and Sequential Information Sampling」で、著者はBenjamin Hébert(スタンフォード大)、Michael Woodford(コロンビア大)。 以下はその要旨。 We…

経済危機は心臓に悪い?

「The Effect of the Economic Collapse in Iceland on the Probability of Cardiovascular Events」というNBER論文が上がっている。著者はKristín H. Birgisdóttir(アイスランド大)、Arna Hauksdóttir(同)、Christopher J. Ruhm(バージニア大)、Unnur…

だって税制改正したんだもん!

というのは意訳に過ぎるかもしれないが、「Tax Reform Made Me Do It!」というNBER論文が上がっている。12/1に紹介したNY連銀ブログ記事はトランプ減税の効果が今後従業員や投資に回る可能性を示唆していたが、この論文では実際にそうした発表を行った企業が…

組合と賃金格差:性別、技能、および公的部門雇用による違い

というNBER論文をデビッド・カードらが上げている。原題は「Unions and Wage Inequality: The Roles of Gender, Skill and Public Sector Employment」で、著者はDavid Card(UCバークレー)、Thomas Lemieux(ブリティッシュコロンビア大)、W. Craig Ridde…

グローバル・リバランシング

「Global Rebalancing」と題したブログエントリでAntonio Fatasが、ここ20年間の世界の経常収支バランスの推移を概観している。 それによると、まず、危機前の10年間(1998-2008、Fatasは「Global Imbalances period(世界不均衡時代)」と呼んでいる)は以…

トランプ減税により米国の対外債務は増えたか?

「Is the United States Relying on Foreign Investors to Fund Its Larger Budget Deficit?」と題したNY連銀ブログエントリで、Thomas KlitgaardとLinda Wangが以下の3枚のグラフを示している。 1枚目のグラフは経常収支で、危機前は経常赤字がGDPの5%程度…

大不況期の価格マークアップの説明

という記事(原題は「Explaining Price Markups During the Great Recession」)をセントルイス連銀の「On the Economy」ブログが上げている。 以下はその冒頭。 The U.S. economy experienced severe economic slack during the 2007-09 Great Recession, b…

アナリストの党派性が資本コストを歪める?

少し前に、自分の支持政党から大統領が出ていると経済の先行きに楽観的になる、というセンチメントを利用した研究を紹介したが、格付けアナリストの仕事もまたそうしたセンチメントに左右される、ということを示したNBER論文が上がっている(ungated版)。論…

米安全実質金利の長期的な変動要因に関する実証研究

昨日は実質リスクフリー金利の過去30年間の低下傾向について書いたNBER論文を取り上げたが、そのおよそ4倍の期間の変動について書いた表題のNBER論文が上がっている(2017年12月時点のWP、同年5月の日銀金融研究所の国際コンファレンスで報告した時の様子)…

マクロ金融トレンドの説明:市場支配力、無形資産、ならびにリスクプレミアム

という昨日とはまた別の共著NBER論文をEmmanuel Farhiが上げている(ungated版、ブルッキングス研究所版)。原題は「Accounting for Macro-Finance Trends: Market Power, Intangibles, and Risk Premia」で、共著者はFrançois Gourioz(シカゴ連銀)。 以下…