2017-05-01から1ヶ月間の記事一覧

男の子は幼児保育の質の差に左右されやすい

という結果を示したNBER論文を、ノーベル経済学賞を2000年に受賞したジェームズ・ヘックマンらが上げている(論文自体も公開されている)。論文のタイトルは「Gender Differences in the Benefits of an Influential Early Childhood Program」で、著者はJor…

「意味の無いことをまくしたてるだけの愚者」になることなかれ:経済原理と適切な訓練を受けた経済学者

Mostly Economicsが、ジョージ・メイソン大のPeter Boettkeの表題の小論*1(原題は「Don't Be ‘A Jibbering Idiot’: Economic Principles and the Properly Trained Economist」)を紹介している*2。 以下はその要旨。 Economics, properly understood, make…

極論から主流へ:如何に社会規範は崩壊するか

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「From Extreme to Mainstream: How Social Norms Unravel」で、著者はLeonardo Bursztyn(シカゴ大)、Georgy Egorov(ノースウエスタン大)、Stefano Fiorin(UCLA)。 以下はその要旨。 Social norms a…

紙幣とデジタルのバランス

少し前に中国のキャッシュレス社会の進展がツイッター上で話題になったことがあったが、マレーシア中央銀行副総裁のEncik Abdul Rasheed Ghaffourが、今月半ばにクアラルンプールで開かれた通貨会議のウエルカムスピーチで、その問題について論じている(H/T…

坂東眞理子になれずに坂東眞砂子扱いされたポール・ローマー

ポール・ローマーが部下の文章指導を厳しくし過ぎて世銀の開発経済総局(DEC)の管理職をクビになった、という話が話題を呼んでいるが(cf. タイラー・コーエン、コーエンがリンクしたブルームバーグ記事およびその邦訳)、ローマー自身が自サイトの「Romer …

国家建設、ナショナリズム、および戦争

アレシナが表題の少し毛色の変わったNBER論文の共著者に名を連ねている。原題は「Nation-Building, Nationalism and Wars」で、著者はAlberto Alesina(ハーバード大)、Bryony Reich(ノースウエスタン大)、Alessandro Riboni(エコール・ポリテクニーク)…

ラーナーの対称性定理と国境税調整

について論じたNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「The Lerner Symmetry Theorem: Generalizations and Qualifications」で、著者はMITのArnaud CostinotとIván Werning。 ちなみにラーナーの対称性定理はWikipediaでは以下のように説明されている。…

米国の各郡で自然災害が経済活動に与えた影響:1世紀のデータ

というNBER論文が上がっている。原題は「The Effect of Natural Disasters on Economic Activity in US Counties: A Century of Data」で、著者はLeah Platt Boustan(プリンストン大)、Matthew E. Kahn(南カリフォルニア大)、Paul W. Rhode(ミシガン大…

財政再建の効果:理論と実証

以前、財政再建では増税より歳出削減を優先すべし、という“アレシナの黄金律”を裏付けるようなアレシナらのNBER論文を紹介したが、同様の趣旨の表題のNBER論文をアレシナらが再び上げている(ungated版)。原題は「The Effects of Fiscal Consolidations: Th…

なぜ人々は不平等な社会を好むのか?

マンキューが、かつて自分が書いた上位1%擁護論文*1の一部テーマに関連していると友人から指摘されたとして、Nature Human Behaviourに掲載された表題の論文(原題は「Why people prefer unequal societies」、著者はChristina Starmans、Mark Sheskin、Paul…

ソロー残差が覆い隠したもの

以前、共著論文およびINETインタビュー記事を紹介したServaas Stormが、「The New Normal」と題したINETブログ記事を執筆している(H/T Economist's View)。 その中で彼は、全要素生産性が供給側の要因だけで決まる、という見方を否定している。 Potential …

インフレは貧困家庭を苦しめるのか、それとも助けるのか?

EconospeakのProGrowthLiberal(PGL)が、カンザス連銀総裁のエスター・ジョージの以下の発言を紹介している。 Keeping monetary policy easy to achieve higher inflation has the potential to push rents still higher, negatively affecting a large per…

経済史は経済学全般に比べ共著論文が少ない

という主旨のNBER論文をハマーメッシュらが書いている。論文のタイトルは「Co-authorship in Economic History and Economics: Are We Any Different?」で、著者はAndrew Seltzer(ロンドン大学)、Daniel S. Hamermesh(同)。 以下はその要旨。 Over the l…

経済ショックと犯罪:ブラジルの貿易自由化からの証拠

Autorらの研究以降、貿易自由化の悪影響を論じることが流行りになる兆しが見えているが、そうした悪影響として犯罪の増加を取り上げた表題のNBER論文が上がっている(ungated版[昨年初め時点のWP])。タイトル通り、米国ではなくブラジルの話で、原題は「E…

シェールガス革命とDQN

ここで紹介したAutorらの研究と相補的とでも言うべきNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「Male Earnings, Marriageable Men, and Nonmarital Fertility: Evidence from the Fracking Boom」で、著者はメリーランド大のMelissa S. KearneyとRiley Wils…

出版バイアスの特定と修正

というNBER論文をFrancis Dieboldが少し前のエントリで紹介している(H/T 昨日リンクしたエントリ。ungated版と補足資料、スライド資料)。論文の原題は「Identification of and Correction for Publication Bias」で、著者はIsaiah Andrews(MIT)、Maximil…

アノマリー研究におけるpハッキング

「Replicating Anomalies」というNBER論文が上がっている(H/T Francis Diebold。ungated版(SSRN))。著者はKewei Hou(オハイオ州立大)、Chen Xue(シンシナティ大)、Lu Zhang(オハイオ州立大)。 以下はその要旨。 The anomalies literature is infes…

緊縮策はミクロ的にも反生産的?

と、今回のサイバー攻撃を例にクリス・ディローが論じている。というのは、国民保健サービス(NHS)ではIT投資をケチったために被害が大きくなった、という報道を目にしたためである。記事によると、システムの多くでウインドウズXPが依然として使われており…

財政刺激策と中央銀行の独立性を調和させる

アデア・ターナーが、現在の世界的な景気回復は財政政策によるものだ、という見方を表題のProject Syndicate論説(原題は「Getting Fiscal Stimulus and Central Bank Independence In Synch」)で示している。 Until early last autumn, the global economy…

不安定な土台に基づくマクロ経済学革命:ルーカス=サージェント批判に内在する矛盾

というequitablegrowthワーキングペーパーが出ている(H/T Economist's View)。原題は「Macroeconomic revolution on shaky grounds:Lucas/Sargent critique’s inherent contradictions」で、著者はドイツのヴッパータール大のRonald SchettkatとSonja Jovi…

Dr. Doomの予言する北朝鮮問題のdoomsdayシナリオ

ヌリエル・ルービニが、経済学者が政治学に嘴を挟むのは個人的にあまり好きではない、というジャレッド・バーンスタインの言葉に挑戦するかのように、地政学について論考したProject Syndicate論説を書いている。そこで彼は、EU解体の可能性、ロシアの外交攻…

死をもたらすカタストロフの回避

というNBER論文が上がっている。原題は「Averting Catastrophes that Kill」で、著者はIan Martin(LSE)、Robert S. Pindyck(MIT)。 以下はその要旨。 We face a variety of potential catastrophes; nuclear or bioterrorism, a climate catastrophe, an…

ピケティ「中国の格差は米国並みになりつつある」

「Capital Accumulation, Private Property and Rising Inequality in China, 1978-2015」というNBER論文をピケティらが書いている(ungated版)。著者はThomas Piketty(パリ経済学校)、Li Yang(世銀、パリ経済学校)、Gabriel Zucman(UCバークレー)。 …

金毛地帯

「All the President's Friends: Political Access and Firm Value」というNBER論文が上がっている。著者はイリノイ大学のJeffrey R. BrownとJiekun Huang。 以下はその要旨。 Using novel data on White House visitors from 2009 through 2015, we find th…

米国は多くの人にとって発展途上国に後退しつつある

というINETブログ記事でピーター・テミンの下記の新刊本が取り上げられている。原題は「America is Regressing into a Developing Nation for Most People」で、著者は同研究所のSenior Research AnalystであるLynn Parramore。The Vanishing Middle ClassPr…

ジョーン・ロビンソンの経済哲学

Oleg Komlikというイスラエルの若手研究者が運営しているEconomic Sociology and Political Economyブログで、ジョーン・ロビンソンの1962年の著作「Economic Philosophy」(全文)から以下の引用がなされている(H/T Mostly Economics)。同書は宮崎義一氏…

オーストリア学派の(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ

ミーゼス研究所長のJeff Deistが、ナシム・ニコラス・タレブを同志扱いしている(H/T Mostly Economics)。 Austro-libertarians will find much to admire in his brilliant takedowns of the “pseudo-experts” he identifies in academia, journalism, pol…

米国の対中貿易赤字は問題ではない?

少し前に、昨日紹介したギャニオン=バーグステンの議論と対照的な議論をサマーズが展開していた。 ...I have become convinced that the issues that preoccupy many Americans are either invalid or of secondary importance and the most important econ…

マサチューセッツアベニューモデルの季節再び?

リフレ的な金融政策の研究で名を馳せたジョセフ・ギャニオンが、現在の所属先であるピーターソン国際研究所(PIIE)の創設者で前所長のフレッド・バーグステンと共に以下の本を出すという。Currency Conflict and Trade Policy: A New Strategy for the Unit…

労働分配率はなぜ低下した?・第五の説明

28日エントリで紹介した労働分配率の低下に関するノアピニオン氏の説明に、デロングが異を唱えていた。 There is, in my view, a fifth—and a much more likely—possibility: the low-pressure economy. The first misstep Noah takes is in saying that 100…