2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

企業課税の最善の方法

1週間前のNYT日曜論説でマンキューが、税制改正の共和党議会案を支持する表題の記事を書いている(原題は「How Best to Tax Business」、H/T マンキューブログ)。そこでマンキューは、同案には法人税率の引き下げ以外にも以下の4つの利点がある、としている…

スウェットショップについての経済学者の話は全部間違いだった

というNYT論説をChristopher BlattmanとStefan Derconが書いている(原題は「Everything We Knew About Sweatshops Was Wrong」;H/T Economist's View、ブラットマンブログ)。 クルーグマンの「In Praise of Cheap Labor」Slate論説に代表されるように、劣…

労働分配率はなぜ低下した?

ノアピニオン氏がブルームバーグ論説で、近年の労働分配率低下を説明する4つの仮説を紹介している。 グローバル化仮説 中印経済が世界に開かれ、インターネットやコンテナ輸送のようなグローバル化技術の発明と相俟って、低賃金労働が世界市場に溢れ出た。多…

経済学知識の偽りの傲慢に抗して

INITブログが、経済学者の役割についての自己認識と社会の認識を問う「Experts on Trial」という討論シリーズを企画している*1。その中でジャワハルラール・ネルー大学名誉教授のAmit Bhaduriが、表題のブログ記事(原題は「Against False Arrogance of Econ…

男性よりも女性の君主の方が戦争を引き起こす

という主旨のNBER論文が上がっている。論文の原題は「Queens」で、著者はOeindrila Dube(シカゴ大)、S.P. Harish(マギル大)。 以下はその要旨。 Are states led by women less prone to conflict than states led by men? We answer this question by ex…

ストレスの後年の人生への影響:ベトナム徴兵の実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「The Effect of Stress on Later-Life Health: Evidence from the Vietnam Draft」で、著者はJohn Cawley(コーネル大)、Damien de Walque(世銀)、Daniel Grossman(ウエストバージニア大)。 以下はその要旨。 A s…

DICEモデル改定史

ノードハウスが「Evolution of Assessments of the Economics of Global Warming: Changes in the DICE model, 1992 - 2017」というNBER論文を上げている(ungated版)。 以下はその要旨。 Many areas of the natural and social sciences involve complex s…

転換点判定に回帰直線の尤度を使うのは適切か?

1年ほど前、uncorrelatedさんが就業者数のトレンドの転換点を回帰直線の尤度を基に推定されているのを見て、なるほど、そういう考え方もあるのか、と感心したことがある。ただ、例えば内閣府などは系列の転換点を判定するのにブライ・ボッシャン法*1を用いて…

マクロモデルは(少なくとも)5種類必要である件

3回目のエントリでモデルに関する話は打ち止めにしたい、と書いていたオリビエ・ブランシャールが、表題の4回目のエントリを書いている(原題は「On the Need for (At Least) Five Classes of Macro Models」)。その言い訳としてブランシャールは、そもそも…

欧州は最適政治圏なのか?

というNBER論文をアルベルト・アレシナらが書いている(ungated版)。原題は「Is Europe an Optimal Political Area?」で、著者はAlberto Alesina(ハーバード大)、Guido Tabellini(ボッコーニ大)、Francesco Trebbi(ブリティッシュ・コロンビア大)。 …

矛と盾

家計消費は政府などからの現物社会移転を加えたベースで見れば伸びているのだ、という主張と、政府の支出は減っていない、という主張を同時にしている人を見掛けたような気がしたので、では、現物社会移転を控除した後の政府支出はどうなっているのか、を確…

中国のGDP成長率は過小評価されているかも

というNBER論文が上がっている。原題は「China's GDP Growth May be Understated」で、著者はHunter Clark(NY連銀)、Maxim Pinkovskiy(同)、Xavier Sala-i-Martin(コロンビア大)。 以下はその要旨。 Concerns about the quality of China’s official G…

インドの鉄道相がジョン・ベイツ・クラーク賞学者から学べること

このたびジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞したデイブ・ドナルドソン(Dave Donaldson)のインドの鉄道に関する論文が、同国のミント紙で、スレシュ・プラブー鉄道相も読むべし、として紹介されている。 この記事にリンクしたMostly Economicsによると、イン…

科学の信頼性の危機を軽減する経済的方法、ならびに公共財ゲームへの適用

という論文をDigitopolyでJoshua Gansが紹介している。原題は「An Economic Approach to Alleviate the Crises of Confidence in Science: With An Application to the Public Goods Game」で、著者はLuigi Butera、John A. List(いずれもシカゴ大)。 以下…

疑似的なアウトオブサンプルによるモデル選択について

ペンシルベニア州立大学の平野敬祐(Keisuke Hirano)教授とジョンズ・ホプキンス大学のジョナサン・H・ライト(Jonathan H.Wright)教授が共著した論文「Forecasting with Model Uncertainty」がエコノメトリカに掲載されたことを、表題のブログエントリ(…

経済学者の意見の一致はどこまで効果があるか?

WaPoのMonkey Cageでジョージワシントン大のヘンリー・ファレル(Henry Farrell)が、4/2エントリで紹介した経済学論争を取り上げている。 以下はファレルによる議論の流れのまとめ。 主流派経済学を批判したUnlearning Economicsと、左派寄りの経済学者サイ…

マクロ経済学ですが、何か問題でも?

「Is something really wrong with macroeconomics?」というエッセイをLSEのリカルド・ライス(Ricardo Reis)が書き、マンキューが「示唆に富んでいる(thought-provoking)」と評している。 エッセイでライスは4つのテーマを取り上げている。 I will discu…

金持ちはますます金持ちになっているわけではない

と題したエントリ(原題は「The Rich Aren't Getting Richer」)でマンキューが、Fatih Guvenen(ミネソタ大)とGreg Kaplan(シカゴ大)の論文「Top Income Inequality in the 21st Century: Some Cautionary Notes」の一節を引用している。 以下はその引用…

マンキューの規制提案

マンキューがブログでユナイテッド航空の搭乗拒否騒ぎを取り上げて以下のように書いている。 The story about United dragging a passenger off an overbooked plane highlights how crazy the current system is. I would not go so far as to say that air…

人口と内戦

というNBER論文をダロン・アセモグルやサイモン・ジョンソンらが書いている(ungated版)。原題は「Population and Civil War」で、著者はDaron Acemoglu(MIT)、Leopoldo Fergusson(ロス・アンデス大)、Simon Johnson(MIT)。 以下はその要旨。 Medical…

為替のツイートから学べること

「What can we Learn from Euro-Dollar Tweets?」というNBER論文が上がっている。著者はVahid Gholampour(バックネル大)、Eric van Wincoop(バージニア大)。 以下はその要旨。 We use 633 days of tweets about the Euro/dollar exchange rate to determ…

米生産性減速の6要因

引き続き生産性ネタ。Tim Taylorがマッキンゼーレポートから、米国の生産性成長率低下に関する6つの要因を挙げている。 最近の生産性減速は分母ではなく分子要因 1995-2004年の生産性成長率は高かったが、それは2つの期間に分けられる。1995-2000年は分子の…

生産性は賃金を引き上げるか? 産業別データによる実証結果

BOEブログに産業別の生産性と賃金の関係を分析した表題の記事が上がっている(原題は「Does productivity drive wages? Evidence from sectoral data」)。そこでは、3つの設問に対してデータから回答を試みている。 生産性の高い産業は賃金も高いか? イエ…

GDP、個人所得、生産性の実質成長率の過小評価

昨日エントリでは実質所得の伸びの過小評価を指摘した論文を紹介したが、フェルドシュタイン御大もその問題を扱った表題のNBER論文(原題は「Underestimating the Real Growth of GDP, Personal Income and Productivity」)を上げている。ただし、昨日紹介…

所得停滞の神話

と題したエントリ(原題は「The Myth of Stagnant Income」)でマンキューが、Bruce Sacerdote(ダートマス大)のNBER論文「Fifty Years Of Growth In American Consumption, Income, And Wages」を注目に値する(worth noting)としてリンクしている。 以下…

経済モデルが予測できないのはモデルではなくデータの問題?

ノアピニオン氏がブルームバーグ論説で、経済学者が大不況を予測できなかった、という問題を取り上げている。 Macroeconomists typically respond that forecasting isn’t their job. The economy has all kinds of things going on at any given time, they…

知覚的バイアスとしてのリスク回避

というNBER論文をマイケル・ウッドフォードらが書いている。原題は「Risk Aversion as a Perceptual Bias」で、著者はMel Win Khaw、Ziang Li、Michael Woodford(いずれもコロンビア大)。 以下はその要旨。 The theory of expected utility maximization (…

発展途上国における都市の生産性

というNBER論文をエドワード・グレイザーらが書いている。原題は「Urban Productivity in the Developing World」で、著者はEdward L. Glaeser、Wentao Xiong(いずれもハーバード大)。 以下はその要旨。 Africa is urbanizing rapidly, and this creates b…

経済学は患部の一部か、治療法の一部か、それとも両方か?

というEconospeakエントリ(原題は「Economics: Part of the Rot, Part of the Treatment, or Some of Each?」)でピーター・ドーマンが、経済学は金融危機にどの程度責任があるのか、という議論を取り上げている。そこで彼は、経済学を槍玉に挙げることは銀…

日本人経済学者がFRB副議長に抗議を申し入れへ

当編集部は、「日本人経済学者有志一同」と名乗る団体が、スタンリー・フィッシャー米連邦準備制度理事会(FRB)副議長宛てに提出予定の公開書簡を独自に入手した。以下は、同書簡の全文(翻訳は当編集部)。 親愛なるスタンリー・フィッシャー米連邦準備制…