2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

シムズ「日本の消費増税はインフレ目標の継続的な達成を条件とすべし」

話題となっているクリストファー・シムズのジャクソンホールの論文から、第5節を引用してみる。 V. WHY HAS MONETARY POLICY BEEN INEFFECTIVE IN THE US, EUROPE AND JAPAN? The general explanation for the low interest rates, large central bank balan…

慢性的なインフレから慢性的なデフレへ

というNBER論文をコロンビア大のギレルモ・カルボ(Guillermo A. Calvo)が書いている。原題は「From Chronic Inflation to Chronic Deflation: Focusing on Expectations and Liquidity Disarray Since WWII」。以下はその要旨。 The paper discusses polic…

ブルナーメイヤー=サニコフの貨幣理論

プリンストン大のマーカス・ブルナーメイヤー(Markus K. Brunnermeier)とユリ・サニコフ(Yuliy Sannikov)のコンビ*1が「The I Theory of Money」なるNBER論文を上げている(ungated版)。 以下はその要旨。 A theory of money needs a proper place for …

FRBに次の景気後退を退けるだけの力は本当にあるのか?

ジャレッド・バーンスタインが表題のWaPo論説(原題は「Will the Federal Reserve really have what it takes to fight off the next recession?」)で、FRBのDavid Reifschneiderの直近の論文を取り上げ、同論文の論理を以下の3点にまとめている。 景気回復…

オバマケアは学部生レベル

マンキューが、Uwe ReinhardtのVOXインタビュー記事にリンクしている。Reinhardtによると、オバマケアの医療保険の取引所(マーケットプレイス)は既に死のスパイラル*1に嵌っており、完全な崩壊に向かっているという。インタビュアー(Sarah Kliff)は、マ…

キャッシュフロー・デュレーションと株式のリターンの期間構造

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Cash Flow Duration and the Term Structure of Equity Returns」で、著者はMichael Weber(シカゴ大)。 以下はその要旨。 The term structure of equity returns is downward-sloping: stocks with hi…

DSGEを捨てて国民所得勘定に立ち戻ろう

11日エントリで紹介したブランシャールのDSGE論に遅れてロバート・ワルドマンが反応した。 I find his critique of DSGE entirely convincing. However, he doesn't. He wrote " I see the current DSGE models as seriously flawed, but they are eminently…

確率的誤差距離による点予測の精度の評価

というNBER論文をFrancis X. Dieboldが上げている(原題は「Assessing Point Forecast Accuracy by Stochastic Error Distance」、ungated版)。共著者はMinchul Shin(イリノイ大)。 以下はその要旨。 We propose point forecast accuracy measures based …

低自然利子率世界における金融政策・その4

引き続きウィリアムズSF連銀総裁の小論から。今日は「本題」の金融政策に関する箇所。 Finally, monetary policy frameworks should be critically reevaluated to identify potential improvements in the context of a low r-star. Although targeting a l…

低自然利子率世界における金融政策・その3

昨日紹介したウィリアムズSF連銀総裁の小論は、出だしが以下のようにやや文学的なものとなっている。 As nature abhors a vacuum, so monetary policy abhors stasis. Instead of being a rigid set of precepts, it follows the adage, that which survives…

低自然利子率世界における金融政策・続き

昨日サマーズとクルーグマンの批評を紹介したウィリアムズSF連銀総裁の小論から、自然利子率低下対策としての長期的政策および財政政策について触れた個所を引用してみる。 Taking each of those in turn, I’ll start with policies aimed at raising r-star…

低自然利子率世界における金融政策

サンフランシスコ連銀総裁のジョン・ウィリアムズが自然利子率の低下に関する表題の小論を書き、話題を呼んでいる(原題は「Monetary Policy in a Low R-star World」;cf. ロイター日本語紹介記事、FT社説邦訳)。これにサマーズが反応し、「考えさせられる…

マンキューのトランプ観

「共和党の政策を支持するなら、トランプが大嫌いでもトランプが当選したほうが嬉しいはず」というエミコヤマ氏のツイートを見て、マンキューの少し前のエントリを思い出したので、以下に紹介しておく。 He will not be getting my vote. I have Republican …

アベノミクスと単一の矢

クルーグマンが日本の4〜6期GDPの一次速報の結果を見て、表題のブログエントリ(原題は「Abenomics and the Single Arrow」)でアベノミクスについて考察している。 Some disappointing numbers on Japanese GDP, and the usual suspects are out there deno…

成長の奇跡の時代は終わった

ということはかねてからダニ・ロドリックが述べていることだが(cf. ここ)、タイラー・コーエンが15日付けのブルームバーグ論説で概ね同様のことを述べている(H/T Economist's View、Marginal Revolution)。そこでコーエンは、世界で最も富裕な国であるデ…

DSGEモデルの有用な点とは?

ブランシャールの小論に始まるDSGE論争、就中12日に紹介したクルーグマンのエントリに、ジョージ・エバンス(George Evans)が表題のEconomist's Viewエントリ(原題は「What's Useful about DSGE Models?」)で反応し、DSGE*1の特長として以下の4点を挙げて…

ホドリック=プレスコットフィルタを決して使ってはいけない理由

という刺激的なタイトルの論文をジェームズ・ハミルトンが書き、同名のEconbrowserエントリで紹介している(原題は「Why you should never use the Hodrick-Prescott filter」;H/T Economist's View)。 以下は論文の要旨。 Here’s why. (1) The HP filter …

生産性の2つのストーリー

コチャラコタが、需要刺激策が労働生産性を押し上げるのではないか、と論じたブルームバーグ論説を書き、そのフォローアップとして自HPで生産性に関する外生と内生の2つの見方(ストーリー)を紹介している(H/T Economist's View)*1。 外生的な見方では、…

DSGEの存続ではなく覇権が問題

一昨日紹介したブランシャールの小論を受けてクルーグマンがDSGEに駄目出ししたが、そのエントリを読んでか読まずかサイモン・レン−ルイスがクルーグマンを間接的に批判した*1。 Olivier Blanchard, former director of the IMF’s research department, has …

DSGEモデルによるクラウディングアウト?

昨日紹介したブランシャールの小論にクルーグマンが早速毒を吐いている。 以下はその冒頭部。 Olivier Blanchard has a characteristically informed, lucid essay on the role of DSGE models in macroeconomics, in which he accurately describes the pro…

DSGEモデルに未来はあるか?

という小論をブランシャールが書いている(原題は「Do DSGE Models Have a Future?」、H/T Economist's View)。 そこで彼は、DSGEの欠点として以下の4点を挙げている。 基礎となる前提が説得力に欠ける 前提の単純化はすべてのモデルで必然的に発生するが、…

日米は如何に高齢化の圧力を減じることができるか

高齢化に関するNBER論文をもう一丁。ハーバード大のClaudia Goldinが表題の論文を書いている(原題は「How Japan and the US Can Reduce the Stress of Aging」で、今月初めに開催された内閣府経済社会総合研究所のコンファレンスでも提示された模様)。 以…

経済成長、労働力人口、生産性に高齢化が与える影響

というNBER論文が上がっている(ランド研究所サイトのWP)。原題は「The Effect of Population Aging on Economic Growth, the Labor Force and Productivity」で、著者はNicole Maestas(ハーバード大)、Kathleen J. Mullen(ランド研究所)、David Powell…

危険な哲学者・その3

引き続きスペクターのシンガー記事より。以下は昨日の一つ目の引用部の続き。 Despite Singer's immense influence–and perhaps because of it–most academic philosophers do not consider him an original thinker. "In many ways, I think Singer is more…

危険な哲学者・続き

昨日紹介したピーター・シンガーに関するマイケル・スペクターのニューヨーカー記事から、彼の哲学への批判を紹介した箇所を引用してみる。 Critics say that his moral certainty is one of Singer's most significant flaws–that he is too demanding, too…

危険な哲学者

uncorrelated氏が、相模原の事件を受けたツイートで哲学者ピーター・シンガーの論を引いていた。氏は以前からブログエントリでシンガーを取り上げており(ここ、ここ)、昨年末も今回のツイートと概ね同趣旨のことを書かれている。そこで、シンガーとはどう…

解体する本社

クルーグマンが「The Unbundled City」というブログエントリで、情報技術の発達により企業の本社機能が解体される様子を描いている。 In today’s world, core headquarters functions – the stuff done by top executives and highly paid experts – can be …

長期の貨幣需要に関する国際的証拠

というNBER論文をロバート・ルーカスらが書いている。原題は「International Evidence on Long Run Money Demand」で、著者はLuca Benati(ベルン大)、Robert E. Lucas, Jr.(シカゴ大)、Juan Pablo Nicolini(ミネアポリス連銀)、Warren Weber(アトラン…

経済理論はどこまで正しいか?

恒常所得仮説の誤りを取り上げたノアピニオン氏のブルームバーグ論説にクリス・ディローが以下のように反応した。 We should ask of economic theories not: “are they true?” but rather “how true are they?” I was reminded of this by Noah Smith’s piec…

世界を不幸にしたGDPの正体

マンキューが下記の本の書評をサイエンス誌に書いている(H/T マンキューブログ)。The Great Invention: The Story of GDP and the Making And Unmaking of the Modern World作者: Ehsan Masood出版社/メーカー: Pegasus Books発売日: 2016/06/07メディア: …