2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

市場の金融政策予想と金融政策の効力

「Country Shocks, Monetary Policy Expectations and ECB Decisions. A Dynamic Non-Linear Approach」という論文をMaximo Camacho(バルセロナ自治大学)、Danilo Leiva León(チリ中央銀行)、Gabriel Perez-Quiros(スペイン銀行)が書いている。 以下は…

バーナンキ議長とイエレン議長の下でのインフレ期待の違い

「Ben Bernanke vs. Janet Yellen: Exploring the (a)symmetry of individual and aggregate inflation expectations」というスイス国立銀行のWPが出ている。著者はNikola Mirkov(スイス国立銀行)とAndreas Steinhauer(エディンバラ大学)。 以下はその要…

ジャンクボンドが戦間期の金融市場について教えてくれること

「Towards a History of the Junk Bond Market, 1910-1955」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はPeter F. Basile(ラトガーズ大)、Sung Won Kang(韓国経済研究院)、John Landon-Lane(ラトガーズ大)、Hugh Rockoff(同)。 We present a …

なぜ銀行家は金利引き上げ見送りに憤慨しているのか?

についてデロング、クルーグマン、ディーン・ベーカーが三者三様の考察を示している。 ●デロング Commercial banks need a wedge of about 300 basis points between their cost of funds and the returns on the loans they make. ...Commercial banks have…

プラザ合意30年目の教訓

と題したブログエントリをジョン・テイラーが上げている(原題は「Lessons Learned on the 30th Anniversary of the Plaza Accord」)。 そこで彼が挙げた第一の教訓は、為替相場への不胎化介入は概ね無効、ということである。それはボルドーらが129の円およ…

欧州は(依然として)日本になっていないことを示す図表

と題した記事でドイツ証券のレポートをFT Alphavilleが紹介している(原題は「Europe (still) not Japan, charted」)。 The difference between Europe today and Japan in the 1990s has become more pronounced than it was a few months ago…A Japan-typ…

誰でもわかるケインズ主義

「Keynesianism Explained」と題された15日エントリでクルーグマンが、ケインズ主義の簡単なサマリーとして以下の4項目を挙げている。 経済は時として能力よりかなり低い生産活動しか行わず、雇うべきよりもかなり少ない労働者しか雇わないことがある。その…

最小の平均二乗誤差を持つ線形推定量は?

Dave Gilesが9/21エントリで以下のようなお題をブログ読者に投げ掛けた。 We know from the Gauss-Markhov Theorem that within the class of linear and unbiased estimators, the OLS estimator is most efficient. Because it is unbiased, it therefore …

効率的市場仮説の研究は死んだのか?

14日エントリで紹介した論文を巡って、デロングとノアピニオン氏が軽い論争を繰り広げた。 ●デロング it is, I think, worth stepping back to recognize how very little is left of the original efficient market hypothesis project, and how far the fi…

慎重さのせいで損なわれた日本経済

クルーグマンが10日前の訪日時に表題のNYT論説記事(原題は「Japan's Economy, Crippled by Caution」)を書いている。そこで彼は、訪日外国人は日本が深刻な不況下にあるように見えないことに驚くが、それは実際に深刻な不況下には無いからだ、としつつも、…

中国のGDPの信頼性

ブルームバーグのニュースレターブル−ムバ−グ ブリーフ(Bloomberg Brief)で、ブルームバーグインテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のアジア担当チーフエコノミストTom Orlik(twitter)が中国のGDPについて投げ掛けられた2つの疑問点を整理している…

非合理的なのではなく、量子確率的なだけ

前回エントリでリンクした表題のオハイオ州立大学のニュース記事(原題は「You’re not irrational, you’re just quantum probabilistic」)から、同大のコミュニケーション学部准教授でコミュニケーション・心理学研究所(Communication and Psychophysiolog…

量子認識:心理学における新たな理論手法

Economist's ViewのMark Thomaが、どう評価して良いか分からん、としてこちらのEurekAlertのリリースを紹介している。以下はそのリリースの元記事(オハイオ州立大学のニュース記事)でリンクされている表題の論文の要旨。(論文の原題は「Quantum cognition…

生産性低下のグローバル要因と国別要因

について調べたNBER論文をアイケングリーンらが書いている(voxeu記事も投稿している)。論文のタイトルは「The Global Productivity Slump: Common and Country-Specific Factors」で、著者はBarry Eichengreen(UCバークレー)、Donghyun Park(アジア開発…

コント:グレッグ君とディーン君

マンキューが「feel the burn」という成句をもじった「Feel-the-Bern Fiscal Policy」というタイトルのブログ記事で、WSJ記事から以下の一節を引用している(その際、わざわざこれは論説記事ではなくニュース記事だと断って引用している)。 Sen. Bernie San…

自然利子率が低下する時には何をなすべきか?

表題のブログエントリ(原題は「What to do when the natural rate of interest declines」)でマンキューが、自分の教科書のモデルが使われているということでこちらの論文にリンクしている。論文のタイトルは「Macroeconomic Stabilization When the Natur…

ミスプライシングファクター

というNBER論文が上がっている(SSRNでungated版がダウンロードできる)。原題は「Mispricing Factors」で、著者はRobert F. Stambaugh(ペンシルベニア大学ウォートン校、NBER)とYu Yuan(上海交通大学上海高級金融学院、ペンシルベニア大ウォートン校)。…

ディキシット=スティグリッツ、ソロー、ルーカス(1972)

ロバート・ワルドマンが、ポール・ローマーの以下の命題に反応した。 The model in Lucas (1972), Expectations and the Neutrality of Money, made a path breaking contribution to economic theory. It is comparable in importance to the Solow model a…

経済学者対経済学

ダニ・ロドリックが表題のProject Syndicate論説(原題は「Economists vs. Economics」)で、最近のポール・クルーグマン、ポール・ローマー、リチャード・セイラー、ルイジ・ジンガレスといった著名な経済学者による経済学批判を取り上げ、こうした内部から…

ジェブ・ブッシュの税制計画を好むべき12の理由

をマンキューが挙げている。 個人所得の最高税率を、1986年の超党派の税制改革の税率と同じ28%まで下げる 項目別控除の利用を制限して税基盤を広げる 州税や地方税の所得控除を廃止するため、低税率の州や町が高税率の州や町を補助することがなくなる 慈善事…

トイレの神様

エスター・デュフロらがトイレの効用を示したNBER論文を上げている。論文のタイトルは「Toilets Can Work: Short and Medium Run Health Impacts of Addressing Complementarities and Externalities in Water and Sanitation」で、著者はEsther Duflo(MIT…

海外企業の参入はイノベーションを促すか?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Does Foreign Entry Spur Innovation?」で、著者はYuriy Gorodnichenko(UCバークレー)、Jan Svejnar(コロンビア大)、Katherine Terrell(ミシガン大、2009年に逝去*1)。 以下はその要旨。 Our esti…

松本零士の主張の経済学

下記の映画をもじったと思われる「Dead Poet's Property - How Does Copyright Influence Price?」というタイトルのNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はXing Li(スタンフォード大)、Megan MacGarvie(ボストン大)、Petra Moser(NYU)。いまを生…

インドの民間部門で最も銃を買っているのは…

銀行だ、というThe Economic Times記事をMostly Economicsが紹介している。以下は記事の冒頭部。 Banks, especially public sector and co-operative banks, have become the unlikely leading buyers of civilian firearms owing to rising crime against t…

金融政策のトランスミッションにおいてはマイクロファイナンスが優れている?

という考察を先月8日のBusiness Standard記事を基にMostly EconomicsのAmol Agrawalが示している。 以下はBusiness Standard記事の冒頭部。 Lessons learned by the microfinance industry from the events about five years ago, leading to near collapse …

日本の鉄道のジレンマにとっての銀の弾丸は?

インドネシアの鉄道計画が白紙撤回に終わったというニュースをみて、少し前にMostly Economicsで「Finding the Silver Bullet for Japan’s Train Dilemma」というknowledge@wharton記事が紹介されていたのを思い出した。 以下はそこからの引用。 The main dr…

最適な金融政策は常に最適か?

何だか判じ物のようなタイトルだが、「Is Optimal Monetary Policy Always Optimal?」という論文をTroy Davig(カンザス連銀)とRefet S. Gürkaynak(ビルケント大学[トルコ])が書いている。 以下はその要旨。 No. And not only for the reason you think…

確定的な流動性の罠

というケンブリッジ大のWPが出ている。原題は「Determinate liquidity traps」で、著者はDemostenes N. Tambakis。 以下はその要旨。 I study the long run determinacy tradeoff - recurrent episodes of passive monetary policy are (in)determinate if t…

ゼロ金利下限におけるテイラールールの出口戦略

という論文(原題は「Taylor-Rule Exit Policies for the Zero Lower Bound」)をインド工科大学カラグプル校のSiddhartha Chattopadhyayとニューヨーク州立大学オルバニー校のBetty C. Danielが書いている。 以下はその要旨。 The monetary authority loses…

マクロ経済モデルの方程式数は何本が適正か?

昨日紹介したレイ・フェアの1978年の97本の方程式のモデルについて、ロバート・ワルドマンは、それはさすがに多過ぎるが、一方で最近のモデルの方程式数は少なすぎる、と述べている。 I have to admit that I don’t intend to ever work with a model with 9…