2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

自存自衛の為に蹶然と起つことの経済学

Roberto Bonfatti(ノッティンガム大)とKevin Hjortshøj O'Rourke(オックスフォード大)という2人の研究者が「Growth, Import Dependence and War」というNBER論文を書いている。 以下はその要旨。 Existing theories of pre-emptive war typically predic…

公的債務はインフレで減らせるか?

について調べたNBER論文「Inflating Away the Public Debt? An Empirical Assessment」(ungated版)をコロンビア大のRicardo Reisとブランダイス大のJens Hilscher、Alon Ravivが書いている。 以下はその要旨。 We propose and implement a method that pro…

シャドウバンキングのマクロ経済学

イェールのAlan MoreiraとNYUのAlexi Savovが「The Macroeconomics of Shadow Banking」というNBER論文を書いている(ungated版、初稿)。以下はその要旨。 We build a macroeconomic model that centers on liquidity transformation in the financial sect…

なぜ政権党によって米国経済のパフォーマンスに差が生じるのか?

について調べたNBER論文(ungated版)をブラインダーらが書いている(H/T Economist's View)。論文のタイトルは「Presidents and the U.S. Economy: An Econometric Exploration」で、著者はAlan S. Blinder、Mark W. Watson(いずれもプリンストン大)。 …

DSGEなんかいらない?・続き

昨日紹介したヘックマンのインタビューの最初の引用部の直後には、以下のようなやり取りがあった。 What about you? When rational expectations was sweeping economics, what was your reaction to it? I know you are primarily a micro guy, but what di…

シカゴ学派が忘れたもの

以前一部を紹介したニューヨーカー誌のジョン・キャシディのシカゴ経済学者への一連のインタビューから、ジェームズ・ヘックマンの話をこちらのブログが改めて引用している(H/T ノアピニオン氏)。 以下はその引用部の冒頭(イタリック体はインタビュアー)…

米国人の算術の駄目さ加減を示した最も顕著な事例

Economist's Viewがこちらのブログ経由でElizabeth Green*1のNYTマガジン記事の以下の一節を孫引きしている。 One of the most vivid arithmetic failings displayed by Americans occurred in the early 1980s, when the A&W restaurant chain released a n…

リスク回避と自然利子率

というエントリをNY連銀のBianca De PaoliとBOEのPawel ZabczykがNY連銀ブログLiberty Street Economicsに書いている(原題は「Risk Aversion and the Natural Interest Rate」;H/T Economist's View)。 内容は概ね以下の通り。 自然利子率を測定する際に…

中南米の格差はなぜ縮小したのか?

という論文をIMFのEvridiki TsountaとAnayochukwu Osuekeが書いている(原題は「What is Behind Latin America’s Declining Income Inequality?」;H/T Mostly Economics)。以下はその要旨。 Income inequality in Latin America has declined during the l…

金融腐蝕合衆国

7/6エントリで紹介したポリティコ記事でスティグリッツは、不正を行った銀行家が罪を問われていないことに怒りを表明している。 The administration poured billions into the banks that had brought the country to the brink of ruin, without setting co…

サーチ理論で説明できること、できないこと

ジョン・クイギンが、以下の三段論法でサーチ理論を腐している。 経済学において今や失業の主流理論となったサーチ理論では、職探しの効率が良くなれば失業率は減少するはず。 インターネットによって職探しは効率化したので、この理論によれば、過去20年間…

規範的理論と実証理論の接合点としての効用関数

以前、アンドリュー・ゲルマンとピーター・ドーマンの効用理論批判を取り上げたことがあったが、その両者の最近のやり取りがゲルマンのブログで紹介されている。エントリには「計量経済学と統計学の違い:変動する介入効果から効用に至るまで、経済学者は不…

スティグリッツのBRICS銀行称賛

前回紹介したDemocracy Now!のスティグリッツインタビューは、日本語サイトでも紹介されているように、TPP批判もさることながら、BRICS銀行へのスティグリッツの称賛が一つの大きな特色になっている。司会のエイミー・グッドマンは、スティグリッツを「新銀…

スティグリッツのTPP批判

Democracy Now!のインタビューで、スティグリッツがTPPを批判している(H/T Economist's View)。スティグリッツは以前からこの記事などでTPP批判を展開しているが、今回のインタビューで改めて自分の論点をまとめている。 The trade agreements of the past…

ゼロ金利下でもマネーストックは有用

という結果をドイツの2人の研究者が報告している。論文のタイトルは「Unconventional monetary policy and money demand」で、著者はChristian Dreger(ドイツ経済研究所[DIW])、Jürgen Wolters(ベルリン自由大学)。 以下はその要旨。 This paper investi…

準貨幣資産の流動性プレミアム

「The Liquidity Premium of Near-Money Assets」というNBER論文をミシガン大学のStefan Nagelが書いている。 以下はその要旨。 Treasury bills and other near-money assets provide owners with liquidity service benefits that are reflected in prices …

失業期間中に人的資本の減耗が生じる場合の最適な金融政策

BOEの研究者Lien Laureysが「Optimal Monetary Policy in the Presence of Human Capital Depreciation during Unemployment」という論文を書いている。 以下はその要旨。 When workers are exposed to human capital depreciation during periods of unempl…

TARGET2のバランス拡大が示していること

少し前に、米地区連銀同士の金準備の融通の経験が欧州のターゲットシステムを考察する上で役に立つ、と書いたアイケングリーンらの論文を紹介したが、対照的に、金本位時代のFRBをむしろターゲットにとっての反面教師として捉えたMichael BordoのNBER論文「T…

二段階最小二乗法による推計値の有限サンプルにおける特性

と題したエントリの冒頭でDave Gilesが、1980年にヒューストンで開かれた米統計学会の大会で経験したことについて書いている(エントリの原題は「Finite-Sample Properties of the 2SLS Estimator」)。 I was sitting in a session listening to an author …

新しい古典派の革命とスタグフレーション

ここで紹介した新しい古典派の革命とスタグフレーションとの関係を巡る議論が続いている。この議論は基本的には、その革命にはスタグフレーションはあまり寄与しなかった、というサイモン・レン−ルイスの見解と、いや、スタグフレーションは確かに寄与した、…

スティグリッツの高頻度取引批判

フェリックス・サーモンがロイターを去って3ヶ月近く経ったが*1、去る少し前の記事で、アトランタ連銀におけるコンファレンスでのスティグリッツの高頻度取引批判を紹介していたのに今更ながら気が付いた。 以下はサーモンのまとめたスティグリッツの論点。 …

ベルギー企業に縁りて日本企業を語る

木に縁りて魚を求むではないが、そういった内容のエントリがNY連銀ブログLiberty Street Economicsに上がっている。エントリの著者はMary Amiti(NY連銀)、Oleg Itskhoki(プリンストン大)、Jozef Konings(ルーベン大)で、彼らが書いたAER論文の解説記事…

マンキューの罠に落ちたクルーグマン?

昨日クルーグマンのマンキュー論説批判を取り上げたが、クルーグマンより前にEconospeakでピーター・ドーマンが同論説を痛烈に批判している。 以下はドーマンによるマンキュー論説のまとめ。 “Debunking” Piketty, Mankiw says that rich people save becaus…

コント:ポール君とグレッグ君(2014年第11弾)

経済学101に翻訳が出るまで見落としていたが、マンキューのNYT論説をクルーグマンが批判している。optical_frogさんによるきちんとした翻訳が既にあるということで、今回は要点だけ手短に。 グレッグ君 相続財産について論説書いた。 ポール君 グレッグ君の…

スティグリッツ経済学を生み出したもの

昨日紹介した論説の冒頭でスティグリッツは、自らの出身地の状況と市場中心主義的な経済学との落差が、市場の欠陥に焦点を当てた経済学を生み出すきっかけになった、と語っている。 I hadn’t realized when I was growing up in Gary, Indiana, an industria…

米国の黄金時代という神話

昨日に続きスティグリッツねた。ポリティコ論説でスティグリッツが、オバマ政権が実施した銀行救済策に対する怒りを露わにしている(H/T Economist's View)。「The Myth of America’s Golden Age」と題されたその論説で彼は、自らの体験やピケティ本を引き…

スティグリッツの産業政策推奨論

スティグリッツが下記の本を出版し、同名のProject Syndicateコラムを書いている(H/T Economist's View経由のMark ThomaのMoneywatchコラム;同コラムではこのテーマを取り上げた世銀ブログにもリンクしている)。Creating a Learning Society: A New Appro…

基地と弾丸と投票

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Bases, Bullets and Ballots: the Effect of U.S. Military Aid on Political Conflict in Colombia」で、著者はNYUのOeindrila Dubeとコロンビア大のSuresh Naidu。 以下はその要旨。 Does foreign mil…

準備預金のホットポテトが貸し出しを引き起こす

少し前にジェームズ・ハミルトンのECBのマイナス金利に関するエントリ(邦訳)を読んだときに、これはまさにNick Roweの好きなホットポテト効果の準備預金版だな、と思った。ここでハミルトンは、準備預金の総量は変化しないので、銀行は準備預金を貸し出す…

地区連銀が金準備を融通し合った時

について調べたNBER論文をアイケングリーンらが書いている。論文のタイトルは「Mutual Assistance between Federal Reserve Banks, 1913-1960 as Prolegomena to the TARGET2 Debate」で、著者はBarry Eichengreen(UCバークレー)、Arnaud J. Mehl(ECB)、…