2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

テイラールールではパラメータの開示も大事

という趣旨のリッチモンド連銀のWPが上がっている。論文のタイトルは「Optimized Taylor Rules for Disinflation When Agents are Learning」で、著者はTimothy Cogle(NYU)、Christian Matthes(リッチモンド連銀)、Argia M. Sbordone(NY連銀)。 以下は…

フィッシャー式逆さ眼鏡派の逆襲・その3

引き続き、フィッシャー式逆さ眼鏡派ネタ。Josh Hendricksonが、先週、同派の代表選手と目されているSteve Williamsonと直接会話し、その真意を確認したという。自ブログ「The Everyday Economist」でその内容を報告している(ノアピニオン氏(追記)経由の…

フィッシャー式逆さ眼鏡派の逆襲・その2

26日エントリで取り上げたフィッシャー式逆さ眼鏡派の論理について、クリス・ディローが独自の仮説を立てている。 ディローはまず、高金利がインフレを低下させる、という通常の論理は、高金利が需要を抑制し、需給ギャップを開き、失業率を上昇させ、インフ…

トム・サージェントへのメモ:経済学は単なる常識に留まるものではない

と題したブログエントリ(原題は「Memo to Tom Sargent: Economics Is More than Just Common Sense」)でDavid Glasnerが、最近エコノブロゴスフィアで話題になった*1サージェントの経済学の12の教訓にコメントしている。なお、ここでGlasnerが「経済学は単…

フィッシャー式逆さ眼鏡派の逆襲

以前小生がフィッシャー式逆さ眼鏡派と呼んだ人たちについて、ノアピニオン氏が「新フィッシャー派(Neo-Fisherite)」という呼び名を与えるとともに、彼らの言うことも一概に否定できないのでは、と「新フィッシャー派の反乱(The Neo-Fisherite Rebellion…

デフレリスクの早期警戒モデル

についての論文をECBの研究者らが書いている。論文の原題は「A money-based indicator for deflation risk」で、著者はGianni Amisano、Roberta Colavecchio、Gabriel Fagan(Colavecchioはハンブルク大、他はECB)。 以下はその要旨。 We employ a money-b…

土地と動学的効率性

以下は、20日エントリで触れたStefan Homburg(ライプニッツ大学)の論文「Overaccumulation, Public Debt, and the Importance of Land」の結論部。 This paper has analyzed the overaccumulation issue theoretically and empirically. From both perspec…

自己投資か、合併か

の企業の選択と独占禁止政策の関係について調べたNBER論文(以前のWP)をBen Mermelstein、Volker Nocke、Mark A. Satterthwaite、Michael D. Whinstonが書いている(Nockeのみマンハイム大学、他はノースウエスタン大学)。原題は「Internal versus Externa…

コント:ポール君とグレッグ君(2014年第8弾)

マンキューのブログエントリにクルーグマンが反応した。 グレッグ君 今日(4/20)のニューヨークタイムズから: コーネル大のThomas A. Hirschlと私[ワシントン大のMark Rank]は25歳から60歳の個人の44年に亘る長期データを用いて、米国人の何パーセントが…

ニュースの金融市場的な裏側

Bernd Hayo(マルブルク・フィリップス大学)とMatthias Neuenkirch(トリーア大学)が「Self‐Monitoring or Reliance on Newswire Services: How Do Financial Market Participants Process Central Bank News?」という論文を書いている。 以下はその要旨。…

モデルの理論的脱構築

ここで紹介したEggertsson=Mehrotra論文について、Unlearning Economics (UE)が、若年層の借り入れが外生化されている上に、モデルが単純過ぎる、と批判した。それに対しサイモン・レン−ルイスが、その批判はモデルについての素人の誤解に基づいている、と…

サマーズ「金融政策よりは公共投資を」

FT Alphavilleでイザベラ・カミンスカが、INETコンファレンスでのサマーズのインタビューを書き起こしている。以下はその概要。 2008年の金融危機は世界にとってひどい出来事だったが、内省を余儀なくさせたという点で経済学にとっては良いことだった。過去2…

金融危機時にはテイラールールは役に立たない

という趣旨の論文「Macroprudential Regulation and the Role of Monetary Policy」をランカスター大のWilliam TaylerとRoy Zilbermanが書いている。 以下はその要旨。 This paper examines the macroprudential roles of bank capital regulation and monet…

満期からの逃走

というイェール大の3人の研究者が書いた論文がNBERに上がっている。原題は「The Flight from Maturity」で、著者はGary B. Gorton、Andrew Metrick、Lei Xie*1。 以下はその要旨。 Why did the failure of Lehman Brothers make the financial crisis dramat…

ロゴフのグローバルインバランスの認識は的外れ?

デロングがロゴフの4/8付けProject Syndicate論説を批判している。 デロングの批判はまず、2000年代の米国の経常赤字に関するロゴフの認識に向けられている。これについてデロングは概ね以下のようなことを書いている。 米国への投資は相対的に低リターンで…

労働者にとっては小さな数歩、生産性にとっては偉大な飛躍

昨日紹介したディローのGDPギャップ批判において、GDPギャップがミクロ的基礎付けを欠いている、という主張の展開に際し表題の論文が援用されていた。原題は「Small steps for workers, a giant leap for productivity」で、著者はIgal Hendel(ノースウエス…

GDPギャップなんかいらない?

本石町日記さんもツイートしているが、クリス・ディローがGDPギャップ反対論をぶっている。彼の反対論の理由は以下の2つ。 経済が速く成長している時は、供給制約が意外に弱いため潜在GDPが思ったより高い、もしくは、投資が資本ストックを押し上げているた…

ピケティ本の簡単なモデル

ここで紹介した話題のピケティ本について、デロングが若干の異議を申し立てている。 それによると、ピケティは富へのリターンrと経済成長率gの対比を主要テーマとしているが、その際、4種類のrを区別することを怠っているという。その4種類とは: 中央政府が…

サマーズ「米国はインフラ再構築で長期停滞に対処すべし」

本石町日記さんツイートやデロングが取り上げている4/7付けWaPo論説でサマーズが、ワシントンで開催されたIMF会合+G20財務相・中央銀行総裁会議*1への提言という形で、最近の持説である長期停滞について警鐘を鳴らしている。彼は、IMFもWorld Economic Outl…

長期停滞のモデル

という論文をエガートソンらが書き、クルーグマンやMark Thomaやデロングが取り上げた。論文の原題は「A Model of Secular Stagnation」で、著者はGauti Eggertsson、Neil Mehrotra(共にブラウン大)。 以下はその要旨。 In this paper we propose a simple…

日本統治時代の台湾におけるマラリア駆除

をイベントスタディとしてマラリアの後年の健康への影響について調べた論文が「Economic Development and Cultural Change」に掲載されている(WP;H/T UDADISI)。論文のタイトルは「Long-term Effects of Early Childhood Malaria Exposure on Education a…

短期失業率の方がインフレ率を良く予測できるのか?

ここで紹介したクルーガーらの論文にマイク・コンツァルがコメントしている。以下はその概要。 この論文を基に、現下の経済状況を把握する指標として短期の失業率にだけ注目すべし、と主張する者もいるが、それは必ずしも当たっていない。実際にはこの話は20…

GDPの測定誤差と金融政策対応

について研究した論文をコロンビアの中央銀行の研究者が書いている。論文のタイトルは「Changes in GDP’s measurement error volatility and response of the monetary policy rate: two approaches」で、著者はJulian A. Parra-PolaniaとCarmiña O. Vargas…

GDPは規範経済学に適してないが実証経済学に適している

とEconospeakのピーター・ドーマンが、ここで紹介したDiane Coyleの本のNYT書評をとば口として主張している。 だが経済学者は、モデルを両経済学で使い分けるのを好まないのと同様、GDPも両経済学で使い分けようとしない、とドーマンは言う。 Economists don…

商業銀行貨幣の超過供給は存在し得るのか?

昨日は29日に紹介したRowe=Glasner論争を受けたRoweの3/30エントリを紹介したが、今日は同論争を受けたGlasnerの表題の3/31エントリ(原題は「Can There Really Be an Excess Supply of Commercial Bank Money? 」)を紹介してみる。ただし、このエントリに…

2つの乗数

29日に紹介した議論を受ける形で、Nick Roweが貨幣乗数をケインズの支出乗数とともに擁護するエントリを書いている。彼はまず、2つの乗数が経済学において珍しい特性を備えていることを指摘している。 Most of economics is about negative feedback process…

不況の交通渋滞理論

WCIブログの3/27エントリでNick Roweが、貨幣の流通の停滞を自動車の交通の停滞に喩えた。具体的には、ロータリー(彼はこれをヴィクセル的ロータリー[Wicksellian roundabout]と呼ぶ)を多くの車が等速度・等間隔でぐるぐると回っている時に、ある車が一…

銀行借り入れは金融政策のトランスミッションにおいて特別な意味を持つか?

という論文をポンペウ・ファブラ大学の研究者らが書いている。原題は「Is Bank Debt Special for the Transmission of Monetary Policy? Evidence from the Stock Market」で、著者はFilippo Ippolito(ポンペウ・ファブラ大学&バルセロナGSE)、Ali K. Ozd…

モデルの前提の現実性が重要となるもう一つの理由

31日エントリでPfleiderer論文とクルーグマンの反応を簡単に紹介したが、今日はそのエントリでリンクしたピーター・ドーマンの反応を紹介してみる。そこで彼は、前提の現実性が重要になるもう一つの理由について概ね以下のような考察を示している。 経済とい…

有力経済学者の一団がアベノミクスに対する集団訴訟を提起へ

日本の有力な経済学者のグループが、安倍内閣の経済政策を巡って集団訴訟を起こすことが明らかとなった。取材に応じたグループの代表は、「安倍内閣は、一昨年末の発足以降、我々日本を代表する経済学者の主張を無視し、日本のことなど良く知らない海外ない…