2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

温暖化論争の割引率は時間選好率だけの問題ではない

Economic Logicの2/20エントリでリンクされた過去エントリで取り上げられた温暖化対策と割引率関連の論文を紹介するシリーズの4番目にして最後として、今日は、2009/7/30エントリで取り上げられたDavid Anthoff、Richard S. J. Tol、Gary W. Yoheの論文「Dis…

温暖化論争は割引率だけの問題ではない

引き続きEconomic Logicの過去エントリで取り上げられた温暖化対策と割引率関連の論文を紹介する。今日は2012/11/29エントリで取り上げられたスターンvsノードハウス論争の“裁定”論文「Disentangling the Stern/Nordhaus Controversy: Beyond the Discountin…

フォン=ノイマン・モルゲンシュテルン効用関数の再発見?

引き続きEconomic Logicの過去エントリで取り上げられた温暖化対策と割引率関連の論文を紹介する。今日は2010/2/4エントリで取り上げられたChristian Gollierとマーチン・ワイツマンの共著論文「How Should the Distant Future be Discounted When Discount …

温暖化対策には負の割引率を

昨日紹介した論文を取り上げたEconomic Logicブログエントリでは、温暖化対策と割引率に関する論文を取り上げた同ブログの過去エントリに幾つかリンクしている。今日はそのうちの昨年10/1エントリで取り上げられた論文を紹介してみる。 論文のタイトルは「Cl…

割引率に関する米環境保護庁の問いへの回答

2011年9月にNPO団体Resources for the Futureで開催されたワークショップにおいて、将来世代の割引率として如何なる値を用いるべきか、という質問を、参加した12人のパネリストに米環境保護庁が投げ掛けた。その回答内容が、ワークショップの議長を務めたMau…

市場は気象学者より優れているか?

という点について研究した論文をEconomic Logicが紹介している。原題は「Can the market forecast the weather better than meteorologists?」で、著者はフンボルト大学ベルリンのMatthias Ritter。 以下はその要旨。 Many companies depend on weather cond…

イクシルとエクセル

The Baseline Scenarioでジェームズ・クワックが、「ロンドンの鯨」事件でExcelが果たした役割についてまとめている: JPMorgan’s Chief Investment Office needed a new value-at-risk (VaR) model for the synthetic credit portfolio (the one that blew …

右傾化は小国に始まる

という主旨の欧州復興開発銀行(EBRD)論文をEconomic Logicが紹介している。著者は同行エコノミストのFranto Rickaで、原題は「The right-wing power of small countries」。以下はその要旨。 This paper investigates the political implications of tax c…

最低賃金引き上げが失業につながらない7つの理由

引き続き最低賃金に関するエントリ。 John Schmittの最低賃金に関するサーベイ論文をWonkblogが要約し、最低賃金が雇用にあまり影響をもたらさない理由の候補を7つ挙げている(H/T Rortybomb): 雇用者は、最低賃金引き上げに対応して労働者を減らす代わり…

最低賃金がEITCより好まれる理由

昨日と一昨日は、最低賃金とEITCの補完関係について論じたRortybomb経由でリー=サエズの論文を紹介したが、Economist's ViewのMark ThomaもCBSのmoneywatchコラムで最低賃金とEITCの関係について論じていた。ただしそこでは、両者の政策としての実行可能性…

競争的労働市場での最適な最低賃金政策・補足

昨日紹介したリー=サエズの論文と小生の以前のエントリについて、一点補足しておく。 小生のそのエントリに対しては、大竹文雄氏から、昨日紹介した雇用の優先順位(リー=サエズのいわゆる効率的割り当ての問題)に関するもの以外に、以下のコメントを頂い…

競争的労働市場での最適な最低賃金政策

オバマ大統領が一般教書演説で最低賃金を7.25ドルから9ドルに引き上げるよう提案したことを受けて、エコノブロゴスフィアが最低賃金を巡って俄かに騒がしくなった。そんな中、EITCと最低賃金は代替的手段ではなく補完的手段である、と述べたマイク・コンツァ…

なぜ有権者はチェック&バランス機能を外してしまうのか?

というアセモグル=ロビンソン+Ragnar Torvikの論文をUDADISIが紹介している(原題は「Why Do Voters Dismantle Checks and Balances?」)。以下はその要旨。 Voters often dismantle constitutional checks and balances on the executive. If such checks…

ベンチマーク指数の役割

ジェフリー・フランケルが、表題の件について4つ挙げている: 自分は平均的な投資家に勝ち続けることができないと判断した投資家に、平均的な投資家の運用をトラックするパッシブ運用のポートフォリオを提供する。 あるアセットクラス内で自分は平均的な投資…

フェルプス「合理的期待は説明できないものを説明しようとしている」

エドムンド・フェルプスがブルームバーグのインタビューで合理的期待形成理論をこき下ろしている(H/T Free Exchange)。以下はそこからの引用。 Q: So how did adaptive expectations morph into rational expectations?A: The "scientists" from Chicago a…

ガイトナー「銀行の政治力は弱まった」

今日は、TNRガイトナーインタビューの最終回として、一昨日のエントリの直後のやり取りを紹介してみる。 LA: That’s essentially how to deal with each crisis in isolation. The problem is each crisis has been worse than the last. Is there something…

経済危機に陥った国の運命を分かつもの

昨日引用したTNRガイトナーインタビューの中に、政治コスト云々という話があった。それについて言及したのが、9日に紹介した部分の直後に位置する以下の箇所になる。 LA: Let me ask you about the way you work with the President. Presidents vary in the…

金融危機対処の三本の矢

引き続きTNRガイトナーインタビューから、今度はフェリックス・サーモンが槍玉に挙げた箇所を紹介してみる。 LA: So you spent thirty years working on economic statecraft both internationally and domestically. You’ve been involved in just about ev…

ガイトナー「ポール・ライアンも話せば分かってくれるさ」

昨日に引き続きTNRガイトナーインタビューからの引用。今日は財政政策に関する箇所。 I think there’s very, very substantial room to do more on fiscal policy that would be good for nurturing long-term growth. That capacity would be greater if it…

旧約聖書の正義と太った猫

New Republicのガイトナーインタビューが面白い(H/T フェリックス・サーモン)。 以下は銀行救済と人々の正義を求める声との板挟みになった状況について。 LA: The way you dealt with the financial crisis will go down as your signature achievement. I…

イノベーションとインセンティブに関する二つの見方

アセモグル=ロビンソンが、ロバート・ゴードンやタイラー・コーエンのイノベーションに対する悲観論にブログで反論した。以下はそこからの引用。 ...because where incentives for innovation will be strong is difficult to forecast, where the new inno…

クルーグマンのマイナス均衡実質金利論:日本の経済学者の受け止め方

クルーグマンが「It's Baaack」論文で日本の流動性の罠の原因を人口減少に求めていた、という点を、最近uncorrelatedさんが頻りに強調されている(例:こちらのブログエントリやこちらのツイート)。そこには、日本の論者がその点をスルーしてきた、という含…

開発経済では人的資本の育成より技術導入が有効

ロバート・ルーカス夫人のNancy Stokeyがそういった主旨の論文(ungated版)を書いている(Economic Logic経由)。以下はその要旨。 This paper studies the interaction between technology, a publicly available input that flows in from abroad, and hu…

金融政策にとって中央銀行の独立性よりも大事なこと

ジョン・テイラーが例によってルールベースの金融政策を推奨する論文を書いた(H/T Economist's View)。以下はその結論部。 In this paper I examined historical changes in (1) macroeconomic performance, (2) the adherence to rules-based monetary po…

日本のデフレアンケート異聞

シカゴブースのIGMフォーラムが、日銀が日本のデフレを防げたか、という点について経済学者にアンケートを取った*1ところ、タイラー・コーエンがそのサイトに「Economists don’t believe in liquidity traps」としてリンクした。さすがにそれは結果の解釈と…

はだかの銀行

FT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが、コペンハーゲンでデンマーク国際研究所(Danish Institute for International Studies)が開催した「岐路に立つ中央銀行(Central Banking at a Crossroads)」というセミナーに出席し、その中のAnat Admatiスタンフ…

ティモシー・ガイトナーに纏わる5つの神話

ガイトナー前財務長官の退任当日の1/25に、WaPoが5つの神話シリーズで彼を取り上げた。書いたのはNoam Scheiber。 以下はその概要。 彼はウォール街の産物だ 実際には彼はウォール街で働いたことはない。民間で働いた唯一の経験は、院を出た直後にヘンリー・…

オークン則は健在なり

というvoxeu記事をローレンス・ボールとIMFの研究者(Daniel Leigh、Prakash Loungani)が書いている(原題は「Jobs and growth are still linked (that is, Okun’s Law still holds) 」)。元ネタのNBER論文*1は「オークン則:50歳にして健康?(Okun’s Law…