2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ロムニーの税政策は数学的に成立しない?

ロムニー陣営の経済顧問を務めるフェルドシュタインが、ロムニーの掲げる税政策を擁護する論陣をWSJで張った*1ところ、デロングがそのフェルドシュタイン論説の基本的な数学の間違いを指弾するエントリを上げた(Economist's View経由)。 デロングは返す刀…

キャピタルゲイン税のジレンマと課題

リチャード・グリーンがキャピタルゲイン税に関して興味深い考察を行っている(Economist's View経由)。 彼によると、ロムニーの支払った税金の実効税率の低さで世間の注目を集めた(cf. ここ)キャピタルゲインへの課税については、その税率を通常の所得税…

信認の妖精とインフレ期待の小鬼

池尾和人氏が量的緩和政策の効果について https://twitter.com/kazikeo/status/239365471747575808:twitter と述べていたが、それに対し小生は、その「量より価格(金利)」という話は非ケインズ効果にも当てはまるのではないか、という疑問をこちらのはてぶ…

竹馬に乗ったナンセンス・再訪

ここで一連の批判を紹介したラグラム・ラジャンのフォーリン・アフェアーズ論文*1について、同誌の9-10月号でラジャンとメンジー・チン、カール・スミスの間で応酬が交わされているという。Econbrowserでチンがその抜粋を紹介している。 以下はチンの批判。 …

政府の効率性を測る手紙・補足

昨日紹介した論文での日本の「成績」に関する反応をはてぶで幾つか頂いたので、補足として以下の図を論文から引用しておく。これは手紙の返送率とイノベーション能力指数(Innovation capacity index)の相関を描いた散布図だが、縦軸はどうやら返送率そのも…

政府の効率性を測る手紙

というアンドレイ・シュライファーらのNBER論文(ungated版WP)をConversable Economistが紹介している(原題は「Letter Grading Government Efficiency」で、著者はAlberto Chong, Rafael La Porta, Florencio Lopez-de-Silanes, Andrei Shleifer)。 以下…

最も直近のハイパーインフレ事例は…?

Conversable Economistが、56のハイパーインフレの事例をまとめたケイトー研究所ワーキングペーパーを紹介している。論文の著者はジョンズ・ホプキンス大学のSteve H. HankeとNicholas Krusで、この論文ではハイパーインフレを月率50%超として定義している。…

F分布はx分布になるはずだった?

計量経済学者のDave Gilesが、F分布はロナルド・フィッシャーに因んでスネデカーが命名したにも関わらず、フィッシャー自身はそれを喜んでいなかった、というエピソードを紹介している(Economist's View経由)。 Gilesが引用したこちらのサイトによると、フ…

経済学、どうしてこうなった

一昨日と昨日紹介したBOEのホールデンのインタビュー記事から、今日は経済学者の罪について触れた部分を紹介してみる(昨日紹介した部分の直接の続きに当たる)。 WD: In view of this narrowing of economics, many have accused economists of failing to …

経済学の引きこもり

昨日に続き、BOEのホールデンのインタビュー記事から引用してみる。 Economics needn’t be restrictive. Economics as a discipline grew out of a broader concern with political economy, with sociology, with philosophy. And that was true right thro…

中央銀行は自らの間違いを認めよ

とBOEのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)がインタビューで述べている(INET Blog経由)。 ...For most of those 318 years, I think we could have taken our authority as read. Not for all of it, but for most of those years, the Bank was …

経済学者の愛した6つの政策

をリストアップしたNPR記事にマンキューがリンクした。以下がその6つの政策。 不動産の税控除の廃止 不動産ローンの利払いが控除の対象となっているが、結局、高額な住宅の税控除が大きくなり、そうした住宅を買った人を補助することによって住宅市場を歪め…

自己充足的予言:FRB篇

以前、小生は、自己充足的予言を日銀の金融政策に比喩的に当てはめたことがあったが、こちらのエントリでは、Tim Duyが自己充足的予言をFRBの金融政策に当てはめて論じている。 Should the Fed take the labor force participation rate as exogenous or end…

ケインズ理論と相対性理論

少し前のはてぶで呟いたように、非自発的失業について論じる人はケインズ経済学を裏付けとして用いているのを小生は当然視していたのだが、そのはてぶのリンク先ブログエントリに書かれているように、今の世の中ではそれは裏付けのうちに入らないらしい。そ…

サプライチェーンは蜘蛛の糸?

15日エントリで紹介したロドリック論説に対し、Free Exchangeでライアン・アベントが異議を唱えている。 ロドリックのいわゆる「時の試練を経たレシピ」は、前世紀の大部分において満足できる料理を生み出さなかった。前世紀の大部分で所得が最も伸びたのは…

ミクロ的基礎の問題点:悪しきミクロ

ネットで見掛けた下記のツイートのリンク先の論文を読んで、そういえば少し前にEconospeakでピーター・ドーマンがマクロ経済学のミクロ的基礎を批判した際にも効用理論を槍玉に挙げていたな、と思い出した。https://twitter.com/naoshiy/status/234971434903…

Das gibt's nur einmal, das kommt nicht wieder...

ダニ・ロドリックが、東アジアで見られたような製造業による経済成長の再現はもう無理かもしれない、とProject Syndicateに書いている。 ...there are strong reasons to believe that rapid growth will prove the exception rather than the rule in the d…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第7弾)・補足

一昨日紹介したクルーグマンの批判を休暇宣言でスルーして済ますかと思ったマンキューが、3つのリンクを張ったエントリを上げていた。 グレッグ君 ロムニー経済学についての読み物: ミット・ロムニーの顧問を務める経済学者たちが書いた白書 (当然のごとく…

ダラスに地区連銀ができたわけ

について同連銀総裁のリチャード・フィッシャーが講演で解説している(Mostly Economics経由)。 This is probably the only Reserve Bank that owes its location to the local newspaper—in our case, the Dallas Morning News After Congress passed the …

マンキューのやわらかあたま塾

昨日のエントリで紹介したクルーグマンが批判したマンキューらの経済政策レポートに関し、マシュー・イグレシアスが、3年前のマンキューの主張との矛盾を衝き、以下のように皮肉っている(Mainly Macroコメント欄経由;デロングも取り上げている)。 They al…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第7弾)

休暇中のクルーグマンがマンキューらを厳しく批判する一方で、それを知ってか知らずか(知らないわけも無いと思うが)マンキューが休暇宣言を出している。 ポール君 まだ休暇中だけど、少しネットにアクセスできるのでチェックしてみたんだが、グレン・ハバ…

ある価格は他の価格よりも硬直的である

というのは当たり前のように思われるが、マクロ経済学はこれまでその問題を回避してきた、とEconomic Logicが指摘している。そして、その問題を取り上げた研究として、このBOE論文を紹介している(著者はStephen MillardとTom O’Grady)。 以下はその要旨。 …

FRBは金利をコントロールしているのか?

という論文をファーマが書いている(UDADISI経由*1)。以下はその要旨。 The Federal funds rate, FF, moves strongly toward the Fed’s target, TF, but other rates show little day-to-day convergence to TF. When the Fed changes TF, it moves toward …

プロテスタンティズムの倫理と入れ墨の精神

マックス・ウェーバーの研究の有効性については未だに議論が続いているところであり、本ブログでもここやここでその一端を紹介したことがあったが、意外な観点からその有効性を論じた論文(WP)が現われた(UDADISI経由)。 This research illustrates how b…

計量経済学は衰退しました

最近流行りのデータマイニングの手法を経済モデルに応用した事例は無いのか、とふと思い立ってぐぐってみたところ、この論文が引っ掛かった。以下はその要旨。 This paper examines the efficacy of the general-to-specific modeling approach associated w…

サッカーの国内チームが強い国は代表チームも強い

というある意味平凡な結論を導き出した論文をUDADISIが紹介している。以下はその要旨。 Despite the ubiquity of soccer fans and soccer talent throughout the global community, the highest quality soccer played on a weekly basis is constrained to …

動学的効率性とリスクフリーレート・パズル

Nick Roweの少し前のWCIブログエントリのコメント欄で、そのエントリのテーマとなった動学的非効率な状態(成長率が金利を上回っている状態)は、消費のボラティリティに非現実的な仮定を置くことに相当する、という指摘があった。少しぐぐって調べてみたと…

大きな都市ほど貧困率は低い

という研究結果を世銀の研究者ら(Céline Ferré, Francisco H.G. Ferreira, Peter Lanjouw)が示している(WP;UDADISI経由)以下はその要旨。 This paper provides evidence from eight developing countries of an inverse relationship between poverty a…

先進国の貯蓄率の低下は刹那主義の蔓延のせい?

コトリコフら(Loretti I. Dobrescua, Laurence J. Kotlikoff, Alberto Motta)のEuropean Economic Review論文がそうした分析を示している(EconAcademics経由のUDADISI経由)。以下はその要旨。 National saving rates differ enormously across developed…

自信過剰なCEOがイノベーションを推し進める

という主旨の論文を、昨日紹介したEconomic Logicエントリが、過去エントリにリンクする形で紹介していた。 以下はその要旨。 Using options- and press-based proxies for CEO overconfidence (Malmendier and Tate 2005a, 2005b, 2008), we find that over…