2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

カロリーは知らしむべし

昨日に引き続き、Economic Logicが情報と肥満という観点から取り上げた*1論文の要旨を紹介する*2。 We study the impact of mandatory calorie posting on consumers’ purchase decisions, using detailed data from Starbucks. We find that average calori…

知りたくないの

Economic Logicが、一昨日紹介したエントリに関連して、情報という観点から肥満の問題に切り込んでいる。 以下はそこで紹介された論文の一つの要旨。 This paper analyzes if people use ignorance as an excuse to pursue immediate gratification, at the …

経済学者は自信過剰。オマエモナー

とジャスティン・フォックスがこちらの論文を基に書いている。 ぐぐってみると、該当論文については日本語で既に素晴らしい解説が存在するので詳細はそちらを読んで頂くとして、要は、単回帰の統計量から予測値に関する情報を読み取る能力を試す質問票を257…

生きる

と言えば余命幾ばくも無いこと悟り、生き甲斐を求めて彷徨った挙句、最後は子供たちのための公園建設に奔走する主人公を描いた映画だが、そうした公園が子供の肥満防止に役立つという研究をEconomic Logicが紹介している。以下はその論文の要旨。 Promoting …

ドラゴン・タトゥーの女

といえば複雑な環境に育った女性主人公の活躍を描いたベストセラーだが、その小説が生まれたスウェーデンで、養育環境が大人になった時の犯罪傾向に与える影響を調べた研究がなされている(Economic Logic経由)。 以下はその要旨。 We estimate the average…

宗教上の祭日は遵守されているのか?

について調べた論文をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 Are American workers less likely to observe a religious holiday now than they were 30 years ago? In this paper I use evidence from religious holidays to explore the evolut…

国家が失敗する十通りの方法

についてダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソン*1がForeign Policyに書いている(Mostly Economics経由)。以下がその十通りの失敗例。 北朝鮮 財産権の欠如 ウズベキスタン 強制労働 学童が主要な輸出産品である綿花摘み取りに駆り立てられる。 (ア…

古き予言はまことであった

リカードの比較優位の原理を検証した研究をMITニュースが紹介している(Economist's View経由)。 著者名(Arnaud Costinot and Dave Donaldson)でぐぐってみるとIDEASでの該当論文へのリンク(NBER版、CEPR版;いずれも本文は登録者しか読めない)が見つか…

パイプラインとゲーム理論

ロシアから欧州への3つのパイプライン計画を巡る話は日本でも様々に報じられているが(例:このレポートや各パイプラインについてのWikipediaの説明[ノルド・ストリーム、サウス・ストリーム、ナブッコ])、それにゲーム理論を当てはめた論文がEconomic L…

サラ金地獄への道は楽観で敷き詰められている

という主旨の研究をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 A unique Finnish household-level data from 1994 to 2009 allow us to measure how households' financial expectations are related to the subsequent outcomes. We use the differe…

貿易による格差を失業給付で補填する時

について研究した論文をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 Trade liberalization is no Pareto-improvement - there are winners (high-skilled) and losers (low-skilled). To compensate the losers the government is assumed to introduc…

下には下がある

今月初めに、マンキューがサマーズのロイターコラムでの量的緩和への懐疑論を紹介していた。該当コラムはロイターによって邦訳も提供されているが、その主旨は簡単に言えば次の通り。 量的緩和の趣旨は国債の満期の短期化にあるが*1、通常、低金利はむしろ長…

民主主義は経済改革につながるが、経済改革は民主主義につながらない

という主旨の2010年のIMF論文(今年に入ってNBERにも載っている)をMostly Economicsが紹介している。以下はその要旨。 Empirical evidence on the relationship between democracy and economic reforms is limited to few reforms, countries, and periods…

非正規性と規制

アンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)金融安定化担当理事*1が経済学と正規分布について講演した(Mostly Economics経由)。 経済学で正規分布を用いることの弊害はかねてより指摘されている話であり、その点では特に新味は無いが*2、彼が最後にその問…

構造変化と生産性上昇

以前紹介したロドリックの研究内容をBRICsについて詳細に検証した論文をMostly Economicsが紹介している。 以下はその結論部からの引用。 This paper studied patterns of structural change and productivity growth in four major developing countries si…

金融政策は万能ではない

と先月末の講演でジャン=ピエール・ダンティーヌ(Jean-Pierre Danthine)スイス国立銀行副総裁が述べている(Mostly Economics経由;cf. 関連ロイター日本語記事)。 その上で、スイスフランの上限設定措置について以下のように述べている。 ...the massiv…

FIFOは最悪、LIFOがベスト

という主旨の論文をEconomic Logicブログが紹介している。 以下はその導入部からの引用。 The most commonly analyzed queue discipline in the literature on queueing with endogenous arrival times is the first-in-first-out (FIFO) queue discipline (…

インドへの道

所得格差問題を安易な政策対応でカバーしようとしたことが現在の米国経済の苦境を招いた、と唱えてフルボッコに遭ったラジャン*1が、今度は同じような主張をインド経済について展開した(Mostly Economics経由)。その概要は以下の通り。 BRICsをはじめとす…

株主たちの天安門

ルイジ・ジンガレスが些か物騒な喩えをProject Syndicateで持ち出している(Mostly Economics経由)。 The ongoing global economic crisis is not only causing incumbent governments to lose elections; it is also shaking corporate boards. When stock…

参入障壁としての最低賃金

についてドイツのデータを用いた研究がEconomic Logicで紹介されている。以下はその要旨。 This study analyses employers‘ support for the introduction of industry-specific minimum wages as a cost-raising strategy in order to deter market entry. …

ゲーム理論は直接的には現実に応用できない

とイスラエルのゲーム理論の大家アリエル・ルービンシュタインがThe Browserインタビューで述べている(Mostly Economics経由)。 その内容を簡単にまとめると以下の通り。 ゲーム理論というネーミングで、フォン・ノイマンは数学だけではなく広報宣伝での天…

機械的な市場を超えて

昨日のエントリではThe Browserインタビューでのアナトール・カレツキーのサンデル批判を紹介したが、一方でカレツキーが褒めそやしたのが以下の本である。Beyond Mechanical Markets: Asset Price Swings, Risk, and the Role of the State作者: Roman Fryd…

資本主義4.0

下記の本の著者であるアナトール・カレツキー(Anatole Kaletsky)がThe Browserに登場している(Mostly Economics経由)。Capitalism 4.0: The Birth of a New Economy in the Aftermath of Crisis作者: Anatole Kaletsky出版社/メーカー: PublicAffairs発…

米国の高校生から見た日銀の不作為

来年*1プリンストンに進学予定というフィリップス・エクセター・アカデミーの高校生経済ブロガーのEvan Soltasが、スタンレー・フィッシャー率いるイスラエル中銀は暗黙裡に名目GDP目標を追求している、と書き、WSJブログに取り上げられた(Mostly Economics…

米国はもっとまともな中央銀行を持てたか?

というタイトルの論文をMichael Bordoが書いている(原題は「Could the United States Have had a Better Central Bank? : An Historical Counterfactual Speculation」;Mostly Economics経由)。 Bordoの反実仮想的考察によると、その機会は以下の2つあっ…

ハーバード白熱教室しゃべり場

マイケル・サンデルがボストンレビューのサイトで、市場が道徳をクラウドアウトする、という問題提起を行っていた(Economist's View経由)。 以下はその文章の最終部: He concluded with a reply to those who criticize markets for relying on selfishne…

オーマイガッ! ジョン・テイラーはハイエクを本当に誤読している

とDavid Glasnerが昨日紹介したエントリの続きで書いている。 そこでGlasnerが槍玉に挙げたのは、テイラーのハイエク賞受賞講演。その中盤でテイラーは概ね以下のようなことを述べたという。 優れた人々もたまに原則から逸脱してしまうことがある。ハイエク…

ジョン・テイラーはハイエクを誤読している

とDavid Glasnerが書いている。 半年ほど前にGlasnerは、テイラーは金融政策に関してフリードマンを忘れてハイエクを読むべし、と書いた(cf. ここ)。それを知ってか知らずか、テイラーが最近のWSJ論説(要サブスクリプション)でハイエクを援用したのだが…

アンゴラがポルトガルに投資する理由

欧州の旧宗主国からアフリカの旧植民地国へ、というのが直接投資の一般的なパターンと思われるが、アンゴラとポルトガルでは逆の流れが起きているという。こちらの論文では、結論部でその理由を以下のように解説している(Economic Logic経由)。 This paper…

ビールがベルギーを作った

という内容の論文を少し前にMostly Economicsが紹介していた。 以下は論文の導入部からの引用。 In this paper we argue that Belgium’s borders, and arguably even the origin of the country itself, were determined by beer. However, somewhat paradox…