2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴールデン・ボールズ

という3年前に放映を終了した英国のバラエティ番組(Wikipedia)が、最近ブロゴスフィアの一角で注目を集めた。きっかけは、CheaptalkブログのJeff Elyが、その番組のある回のYouTube映像を取り上げたことにある。 その映像では、2人のプレイヤーが囚人のジ…

年齢とともに賢くなる米国人、最初から賢い日本人

という結果を報告した論文をEconomist誌が紹介している(H/T wrong, rogue and booklog)。論文の著者は、ウォータールー大学のIgor GrossmannのほかKarasawa, M., Izumi, S., Na, J., Varnum, M. E. W., Kitayama, S., & Nisbett, R. E.で、Psychological S…

福島第一による原発事故発生確率のベイズ更新

について世上どのような考察がなされているか知りたいとふと思い、ぐぐってみたところ、このパワーポイントに行き当たった*1。書いたのはFrancois LevequeとLina Escobar。著者のうちLevequeはCERNA(Centre d'Economie Industrielle MINES ParisTech=パリ…

金融の軍拡競争

についてイングランド銀行のアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)金融安定化担当理事*1が講演した(Mostly Economics経由)。 ホールデンによれば、金融においてそのような軍拡競争が発生する要因は3つあるという。 情報の非対称性 どれだけリスクが…

中銀が受け身で無くなる時

今月初めにNick Roweが、金本位制における中銀とインフレ目標制度における中銀の共通性についてエントリを上げ、以下のような仮想的な変化の過程を辿ることによって前者が連続的に後者に転じる、と論じた*1。 金準備100% 金準備100%未満 金準備0% 貨幣と金の…

「改革、もう終わっちゃったのかなあ」「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねえよ」

というような会話が、最近以下の本を出した作家マイケル・リンド(Michael Lind)のThe Browserのインタビューで交わされている(Mostly Economics経由)。Land of Promise: An Economic History of the United States作者: Michael Lind出版社/メーカー: Ha…

都市の産業が偏るのは良くないのか?

という点について論じた記事をEd Glaeserが書いている(Mostly Economics、タイラー・コーエン経由)。 そこで彼は、産業の集積を重視する経済学者としてアルフレッド・マーシャル、ケネス・アロー、ポール・ローマーの3人を挙げている。一方、産業の多様性…

日銀は白い呪術師を必要としているか?

マーク・カーニー・現カナダ銀行総裁が次期イングランド銀行総裁就任の打診を受けたという報道を読んで(ただし後に両者ともその報道を否定)、中央銀行総裁の人事もサッカーの監督みたいになってきたな、と思ったが、同じような感想を抱いた人がThe Atlanti…

プラトニック経済学

下記の本を出版したJonathan SchleferをEconomixブログがインタビューし、それをMostly Economicsが引用している。The Assumptions Economists Make作者: Jonathan Schlefer出版社/メーカー: Belknap Press発売日: 2012/03/20メディア: ハードカバー購入: 1…

信念と均衡

ノアピニオン氏が、経済学でDSGEを初めとする均衡を仮定したモデルを使うことの問題点を3つ挙げている。 均衡に収束するのと同等の速度で均衡が動くかもしれない。 均衡が安定でないかもしれない。 複数均衡があるかもしれない その対処法としてノアピニオン…

選択された恐慌

スティーブ・ワルドマンが、このエントリの後半で紹介した考察をさらに推し進めている。 We are in a depression, but not because we don’t know how to remedy the problem. We are in a depression because it is our revealed preference, as a polity, …

26年目の確認

昨日紹介した論説記事批判などどこ吹く風という感じで、マンキューが、26年前の自分の論文での理論的予言が最近の研究で実証された、と直近ブログエントリで喜んでいる。 その実証結果は、以下の図で端的に表わされる(該当研究論文=Fatih Guvenen、Serdar …

グレッグ君と愉快な仲間たち

政府間競争の必要性を訴えたマンキューのNYT論説記事が、かつてないほどあちこちで批判されている。以下はそれらの批判の取りあえずのまとめ(順不同)。 デロング 今度の大統領選挙は、政府が不公正の是正にまで乗り出すべきか否かを問う選挙だ、とマンキュ…

ある占領の後遺症

かつて江藤淳は、米軍の占領の後遺症が今も日本の言語空間を蝕んでいる、と主張した。個人的にはこれだけ時間が経過した後も後遺症が残るものなのかな、と半信半疑だったが、それよりさらに長期間に亘る占領の後遺症について書かれた論文がブルッキングス研…

なぜブロゴスフィアでの経済はマクロばかりなのか?

少し前に、Econospeakでピーター・ドーマンが表題のような疑問を投げ掛けた。経済学者の大多数はミクロ経済学者なのに、ブロゴスフィアを見るとマクロネタばかりなのはなぜか、という疑問である。 これに対し、コメント欄でノアピニオン氏が以下のような回答…

貨幣においてセーの法則は成立するか?

という議論がNick RoweとDavid Glasnerの間で断続的に続けられている。Roweは成立すると言い、Glasnerは成立しないと言う。 13日に紹介した直近のブログエントリで、Glasnerは両者の言い分を次のようにまとめている。 ...Nick asserted that any increase in…

安全第二

安全資産の不足こそが今日の大不況における根幹的な問題だ、という主張は本ブログでこれまで何度か紹介してきたが(最も直近ではここ)、クルーグマンがそうした主張に疑問を呈し、それに反論したデロングとの間で軽い論争になった*1。クルーグマンの論理は…

David Glasnerの植田裁定

少し前に紹介したクルーグマンvsポストケインジアンの銀行論争に、David Glasnerも介入した。 彼はそこで、準備預金が貨幣供給量を決定するという考え方を否定し、貨幣供給量は需要によって決定される、というポストケインジアン側の見解を完全に支持してい…

ファウンデーション対帝国

以前、ミクロ的基礎付けを持つモデルは予測の役に立たず、予測の役に立つためにはミクロ的基礎付けを事実上放棄しなくてはならない、という経済モデル構築におけるジレンマを紹介したことがあった。 そうしたジレンマを回避するために、イングランド銀行がベ…

ユーロ危機:中欧諸国の教訓

Mostly Economicsで紹介された「The euro crisis: Central European lessons」という記事で、ヴィシェグラード4ヶ国――この記事で初めてこの言葉を知ったが――に対するユーロ危機の影響が描写されている。書いたのはJacques Rupnikというフランスの政治学者。 …

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第5弾)

今回は期せずして、両者が同じ日(4/7)に同じようなグラフを描き、同じような指摘を行った――ただし違う文脈においてだが。 グレッグ君 これが回復ってやつなの? ポール君 僕が雇用のたった一ヶ月の悪い数字に過剰反応しているという人がいるけど、そういう…

193年目のマルクス

ジョン・ランチェスターが、生誕193年目を迎えた(もうすぐ194年目を迎える)マルクスの予言の現状について長文のエッセイをLondon Review of Booksに書いている(Mostly Economics経由)。 その中でランチェスターは、 ブルジョアジーとプロレタリアートの…

朝三暮四の経済学

WSJがローリー・サントス(Laurie Santos)准教授率いるイェール大学の比較認知科学研究所(Comparative Cognition Laboratory)の研究を紹介している(Mostly Economics経由)。そこではオマキザルに貨幣を与えるというユニークな実験経済学を実施している…

あなたにとって都市が良い理由

「The Stones of London」や「Historic London Walks」などを著したLeo HollisのThe Browserインタビュー記事の冒頭部をMostly Economicsが引用している: Why should we be thinking about cities enough to read books about them?We’re at a moment of ch…

金融政策におけるパスカルの賭け

以前、小生は、2000年代前半のFRBの低金利を批判する人たちについて、以下のようなことを書いたことがあった。 また、2000年代前半の低金利が住宅バブルの原因として批判されているが、これはテイラーだけでなく、ベックワースがかねてより唱えているほか、…

格差が金融危機を引き起こすのか?

格差が金融危機の原因となった、というのは、ここで紹介したようにラジャンが主張し、かつ、各所から反論がなされているところであるが、その反論にMichael Bordoが加わった。 以下はBordoとChristopher M. Meissnerのvoxeu記事で提示された図。上図は、14カ…

金融政策が財政政策の助けを求める時

以前、Andy Harlessが、ノアピニオン氏のブログでサムナーを擁護しつつも、サムナーのブログでは、財政政策の意義をあまり軽んじ過ぎるのはいかがなものか、という問い掛けを発したことを紹介した。 今度は、ノアピニオン氏がその時のHarlessと同様の問い掛…

Nick Roweの植田裁定

2年半ほど前、中央銀行の貨幣供給コントロール能力を巡るMMTer*1とサムナーの論争を、昔懐かし翁−岩田論争に喩えたことがあったが、同様の論争が今度はポストケインジアンとクルーグマンの間で再燃した。以下はその一連のブログエントリ。 A Primer on Minsk…

わがコメントつきるとも

気がつくとMarcus Nunesとデロングが喧嘩していた。きっかけはNunesのこのエントリ。 そこでNunesは、流動性の罠の下では財政刺激策は自らを賄う、という主旨のデロング=サマーズの最近の論文を話の糸口として、サマーズの財務副長官時代の持説だった拡張的…

日銀が日本版「ノーベル経済学賞」を設立

日本銀行は、「経済学日本銀行賞」を新たに設立することを決定した。現在は経済学の成果に与えられる国際的な賞としてノーベル経済学賞が既に世界的な権威を確立しているが、日本人の受賞者はまだいない。今回の新しい賞の設立の裏には、そうした欧米主導の…