2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ブルシットとしての経済学

匿名ブロガーknznが約3年ぶりにエントリを上げ、早速Economist's Viewが取り上げている。そこでknznは、28日エントリで紹介したStephen Williamsonのエントリでの論争について以下のような感想を漏らしている。 Here’s my take: to begin with, economics is…

バーナンキは金本位制の問題点を分かっていない・その3

26日エントリに対してkmoriさんからツイッターで以下のようなコメントを頂いた。 https://twitter.com/#!/kmori58/status/185033966523392002:twitterhttps://twitter.com/#!/kmori58/status/185035671013044225:twitter 小生が紹介したエントリでGlasnerは…

都市の重力が衰えるとき

Mostly Economicsが紹介しているクリーブランド連銀のWPで、デトロイトの凋落における人口や所得の低下の濃淡を分析している。 以下はその要旨。 When a city experiences a decline in income or population, do all neighborhoods within the city decline…

マクロ経済学はオワコンか?

ノアピニオン氏の「クルーグマン一揆は失敗したのか?(Did the Krugman insurgency fail?)」というエントリにクルーグマンが「まだ終わっちゃいねえ(The Macro Wars Are Not Over)」と反応したが、その中の以下の一節に今度はStephen Williamsonが激昂し…

ノルウェイのナチスの森

ナチス占領下のノルウェーの中央銀行について研究した論文(同銀行のWP)をMostly Economicsが紹介している。著者はHarald Espeliで、論文の謝辞には「The work on this paper has been financed by the Norwegian central bank through its bicentenary res…

バーナンキは金本位制の問題点を分かっていない・続き

24日エントリではDavid Glasnerのバーナンキへの物言いを紹介したが、そこでGlasnerは、金本位制に対する独自の解釈を展開した。それに対しコメント欄で幾つか批判が付いたが、それらのコメントにGlasnerはきちんと反論しているので、今日はその反論の概要を…

早期退職は早死ににつながる

という研究結果がvoxeuで報告されている。以下はその元となった論文「Fatal Attraction? Access to Early Retirement and Mortality」の要旨。 We estimate the causal effect of early retirement on mortality for blue-collar workers. To overcome the p…

バーナンキは金本位制の問題点を分かっていない

とDavid Glasnerがバーナンキのジョージ・ワシントン大学での講義スライドに噛み付いている。 Glasnerが問題にしたのは同スライドの22ページと23ページの以下の文言。 The gold standard sets the money supply and price level generally with limited centr…

何が国家の繁栄を決めるのか?

下記のダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソンの新著の内容が、MITニュースで紹介されている。Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty作者: Daron Acemoglu,James Robinson出版社/メーカー: Currency発売日: 2012/03/20メデ…

わかりはじめた1930年代のレボリューション

Mostly Economicsが紹介している1999年の論文「The Keynesian Revolution and the Nominal Revolution: Was There a Paradigm Shift in Economic Policy in the 1930s?」で、アイケングリーンがサムナーと見紛うような主張を展開している。 Monetary policy,…

不動産ブームは人種による住み分けを緩和したのか?

というテーマの記事がVoxEUに投稿されている。その内容は概ね以下の通り。 Edward GlaeserとJacob Vigdorが主張するように、不動産ブームの際に融資の基準が緩和されたことは、黒人にそれまで住めなかった地域での居住を可能にした。 しかし著者たち(Amine …

短期の供給ショック

についてMark ThomaとNick Roweが相異なる観点から論じた。Thomaの論点は以下の図に集約される。従来は潜在GDPと言えば一種類しか存在しないかのように論じられてきたが、実は短期の潜在GDPというものも存在するのではないか、とThomaは言う。上の図で言えば…

オバマ政権下の雇用改善の足を引っ張ったもの

オバマ政権下で公務員雇用が激減していることを、クルーグマンとCalculated Riskが別々のグラフで示している。面白いのは、前者がその推移をレーガン時代と対比させているのに対し、後者がブッシュ子と対比させている点である。 公務員雇用の推移:オバマ vs…

民主党は共和党より財政緊縮的?

オバマ政権よりレーガン政権の方が実質政府支出が伸びていた、というクルーグマン*1の下記のグラフに触発されて、Mark Thomaが歴代大統領政権下の一人当たり実質政府支出の伸びを計算した。 その結果は以下の通り。これを見ると、クリントンが最も緊縮的で、…

ハード・プレイ

昨日*1は、欧州の経済学大学院において米国方式を取り入れたために弊害が出た事例を紹介したが、シンクタンクのブリューゲル*2のブログエントリでは、経済学の別の分野においてもっと米国方式を推進すべき、と主張している(Economist's View、タイラー・コ…

専門バカの育て方

8年前のこちらの論文(IDEASページ)では、欧州で経済大学院に米国式のPhDプログラムを取り入れた結果、専門バカを育成するようになってしまった、という調査結果を報告している(Mostly Ecnomics経由)。 以下はその要旨。 As a contribution to the recent…

グラフは正しく読みましょう

アラン・メルツァーがWSJ論説で以下のグラフを提示し、上位1%の所得シェアが増加しているのは米国だけではなく世界的な現象だ、と論じた。 それに対しダロン・アセモグルとジェームズ・ロビンソンが、新著の宣伝用に解説開設*1したブログで、改めてhttp://g-…

2つのアメリカ・ある視点

Modeled Behaviorのカール・スミスが、「製造業+政府」と「その他」、という切り口で労働市場を分析したブログポストを三連投した。 最初のエントリでは、「その他」業種では景気回復後にV字型回復を示しているのに、「製造業+政府」では雇用が未だに底這…

所得の伸びの格差は本当に起こっているのか?

Economist's View、タイラー・コーエン、マシュー・イグレシアスが相次いでレイン・ケンウォーシー(Lane Kenworthy)の以下のグラフを紹介している。これは、中所得者層の所得の伸びが経済全体の成長に比べて遅れを取っているという現象は、所得に直接反映…

財政的減価

付加価値税を用いて擬似インフレを引き起こし、流動性の罠を脱却する、という政策は、以前フェルドシュタインや山形浩生氏らが日本について提案し、最近ではコチャラコタが(ミネアポリス連銀の研究を紹介する形で)米国について提案したものだが、今度はハ…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第4弾)

一応拾っておきます(…もう少し話が広がると思ったが、あまり広がらなかった)。 グレッグ君(([http //gregmankiw.blogspot.com/2012/03/taxing-carried-interest.html:title=自ブログでのリンク]。)):僕が経済顧問を務めているロムニー候補のファンドの成功…

第二ファウンデーション

昨日その一端を紹介したミクロ的基礎付けを巡る議論*1に絡んで、David Glasnerが興味深いエピソードを紹介している(Economist's View経由;UCバークレーのデロングも論評抜きで取り上げている)。 GlasnerがUCLAで経済学を学んでいた1960年代末から1970年代…

ファウンデーションの彼方へ

最近、マクロ経済学のミクロ的基礎付けが改めてエコノブロゴスフィアを賑わせているが、libertarian clownを名乗るオクラホマ大学のKevin Grierが、Angus(Grierのハンドルネーム)の不可能性定理なるものをブログで提唱している(Economist's View経由)。…

景気回復の成果が殆ど上位1%の人たちに吸い取られた件

Great Gatsby curveの一件で名を馳せたMiles Corakが、Emmanuel Saezの最近の論文から以下の図を引用している(Economist's View経由)。 この図によれば、米国の上位10%は所得の約47%を占有しているが、中でも上位1%の占有率は20%に達する。 またCorakは、…

州と地方政府の雇用削減は女性に皺寄せが行く

と警告したEconomic Policy Instituteのブログ記事をMark Thomaが紹介している。 その理由として同ブログ記事を書いたDavid Cooperは、以下の統計数字を挙げている。 2011年時点で、全体の労働力に占める女性の割合は46.6%だが、州と地方政府の雇用者に限る…

同意の代償

インターネットで各サイトを訪れた時にプライバシーポリシーを真面目に読んだらどのくらいの時間が掛かるかを数年前にカーネギーメロン大学の2人の研究者(Lorrie Faith CranorとAleecia McDonald)が試算した(タイラー・コーエン経由のThe Atlantic経由)…

大恐慌だけを大不況の参照先にして良いの?

とバリー・アイケングリーンが問うている(Mostly Economics経由)。 以下はその一節。 The domino metaphor implied the need to do something, but what exactly was not clear. The historical analogy with Munich and the Nazis‘ invasion of Czechoslo…

ベル研を復活させよ

今やイノベーションの手本と言えばシリコンバレー、というのが通説になった感がある。しかし、敢えてその風潮に異を唱え、かつての独占企業による研究所こそがイノベーションの母体になるのではないか、とThe Deal誌編集長のRobert Teitelmanが書いている(…

消えた女性たち

雛祭りの日の相応しい話題では無いような気もするが、アジアにおいて本来あるべき男女比に鑑みて女性が少なすぎる、というアマルティア・センが提起したMissing woman問題に関して新たな視点を提供する論文をタイラー・コーエンが紹介している。論文の著者は…

物価と労働コストを論じる際は分配率も忘れずに

少し前に、米国の大統領経済報告の以下の図が話題になった*1。 これは物価の労働コストに対するマークアップ率を表わしたものであるが、メンジー・チンは、この図は、近年において労働生産性が上がったにも関わらず、その成果が労働者に回らずに企業収益につ…