2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

不換紙幣には政府の裏付けは必要無い

ということを示す興味深い事例を研究した論文をDavid Andolfattoが紹介している。 以下はAndolfattoによる論文からの引用部分*1。 One of the most astounding phenomena of the domestic market is the continued circulation of the old Somali bank notes…

日本に学ぶべからず?

Mostly EconomicsのAmol Agrawalが、首都大学東京の村田啓子教授とオックスフォードのJohn Muellbauer教授との共著voxeu記事に驚いている。 具体的には、これまでの各種研究では現在の米国の状況と1990年代の日本の状況との類似性を当然視していたのに対し、…

右上がりのIS曲線と流動性の罠

先月、Nick Roweの提唱する右上がりのIS曲線を紹介した。 その主張を整理するため、改めて通常のIS曲線の式を導出してみると、以下のようになる*1。 投資I、消費C、生産Y、金利rについて以下の3式の関係を仮定すると(cはMPC=限界消費性向、eはMPI=限界投…

有用な「新古典派マクロ経済学」なんて存在するの?

24日エントリで紹介したStephen Williamsonのブログエントリに、デロングが表題のエントリを立てていちゃもんをつけている(原題は「Is There a Useful "Neoclassical Macroeconomics"?」)。 24日のエントリでは、Williamsonの主張とデロングの従来からの主…

日本経済の苦境は生産性向上に頼ったせい?

23日エントリでは、タイラー・コーエンが資本減耗をネタに日本経済について言及していたことを紹介した*1。そのコーエンが今度は、「日本の経済の減速は何によってもたらされたのか?(Where does the Japanese slowdown come from?)」と題したエントリで、…

東日本大震災で回避されたこと

Mostly EconomicsでCity JournalにClaire Berlinskiが書いた記事が紹介されていた。冒頭では阪神大震災と比較した東日本大震災に対する彼女の評価が記されている。正直なところ小生にはその評価が正しいのかどうか判断が付きかねるが、以下に訳してみる。 地…

株価は人口で説明できる?

という主旨のレポートをサンフランシスコ連銀が出している(Mostly Economics、Free exchange経由;著者はZheng LiuとMark M. Spiegel)。 そこでは、ベビーブーマー世代の引退が株価に与える悪影響を調べるため、中年世代(40-49歳)と老年世代(60-69歳)…

流動性の罠にはゼロ金利は関係無い

とStephen Williamsonが書いている(Marginal Revolution経由)。 彼はまず、名目金利は交換媒体としての貨幣の稀少性を表わすもの、と定義している。そして、その名目金利がゼロに達すると、交換媒体としての貨幣の稀少性は消滅し、貨幣は他の金融資産と何…

侵略と浸食

クルーグマンがロゴフと出演した*1CNNの番組で述べた以下の言葉が話題になっている(Economist's View経由)。 Paul Krugman: ...If we discovered that space aliens were planning to attack and we needed a massive buildup to counter the space alien …

フラット・タックスこそ公平?

公平な税制を見つけるのは原則論においても難しい、とリチャード・グリーンが書いている(Economist's View経由;原題は「Even in principle, figuring out a fair tax system is hard」)。 彼はそこで、公平な税制を以下のように定式化している。 U(X(L)-L…

マネー、マネー、マネー

昨日のエントリに対しRognlieの真意を問うコメントを頂き、彼とRoweなどの準マネタリストとの争点(特に準マネタリスト側の主張)をいまひとつクリアに記述していなかったことに気付いた。 彼らの意見の相違を乱暴にまとめてしまうと Rognlie 金利は金融政策…

金融政策にとって金利はどの程度重要なのか?

という点についてMatt RognlieとNick Roweが論争していた。 まず、Rognlieがこのエントリで以下のように書いた。 You may have heard from Scott Sumner, among others, that interest rates are a terrible indicator of monetary policy. This is actually…

失業者は暇になった時間をどのように使っているのか?

ということを調べた研究がvoxeuに掲載されている(Economist's View経由)。 答え 30%は家事労働、6%は子育て、51%は余暇活動(うち睡眠20%、TV12%)、12%は自己投資、職探しは1%未満*1 …ただし直近の景気後退に限定すると、45%が家事労働と子育てに振り向…

ABBAと一億総中流と製造業

先ほどNHK-BSプレミアムでABBAを取り上げていたが、お金絡みのテレビ番組で挿入曲として良く使われる曲に、ABBAの「Money, Money, Money」がある。改めてこの曲の歌詞を読んでみると、仕事に追われて生活にゆとりがない女性が金持ちの世界に憧れ一攫千金を夢…

日本はリバタリアンの天国?

研究のため来日中のノアピニオン氏がそう書いている。 曰く、日本ではベンチやゴミ箱や公園や水飲み場といった公共施設が少なく、少し休もうと思ったら喫茶店に入って何がしかの出費を覚悟しなくてはならないし、車に乗ればただで停められる場所はなく、高速…

フリードマン・ルールとテイラー・ルールの統合?

このWCIブログエントリのコメント欄でNick Roweが提示した簡単なモデルがフリードマン・ルールとテイラー・ルールの関係について興味深い洞察を提供しているように思われるので、以下に紹介しておく。 モデルは単純で、以下の2つの式からなる。 インフレ率 …

コチャラコタ発言を巡るある騒動

今回のFOMCのコチャラコタの態度を巡り、Stephen Williamsonのブログエントリのコメント欄で、WilliamsonとEconomist's ViewのMark Thomaが熱い闘いを繰り広げた。 このエントリでWilliamsonはコチャラコタを批判したクルーグマンとThomaを逆に批判したのだ…

緊縮政策は暴動を招く

ワシントンブログで知ったが、Hans-Joachim VothとJacopo Ponticelliという二人の経済学者が表題の主旨の論文を書いたという*1。両者はvoxeuにもその概要を投稿しており、既にEconomist's Viewが(The Irish Economy経由で)取り上げているほか、日本語ブロ…

否定的結果の論文誌

何だかThe Unbirthday Songのような逆説的な感を受けるが、否定的結果を出した論文を集めた学術誌についてFrances WoolleyがWCIブログに書いている。 そのエントリの冒頭に取り上げている「European Journal of Negative Research Findings」は「The Laurie …

有名ブログによる論文へのリンクの効果

について世界銀行の研究者(David McKenzie, Berk Özler)が論文を書き、概要を世銀ブログで報告している(Mostly Economics経由のMarginal Revolution経由)。 その主旨は以下の4枚のグラフ*1に集約される(著者たちはブログの副題で「check out these cool…

40週後...

と書くとダニー・ボイルの映画のタイトルのようだが、米国の平均失業期間が40週の大台を超えた、とEconomixでCatherine Rampellが報告している。これは記録の残っている中で最長だという(下図)。Rampellは自分の以前の記事を引きながら、循環的失業者が構…

金融経済学の現状を一枚のベン図で表わすと…

以下のようになる、とこの論文に書かれている(Mostly Economics経由)。ここではまず、金融経済学を金融理論、金融政策、財政の3つのエリアに分け、それぞれをベン図の円で示している。番号として金融理論に1、金融政策に2、財政に3を割り振ったのは恣意的…

スマート過ぎるスマート・グリッド?

についてMITの研究者が論文を書き、その概要がMITのサイトに掲載されている(後者[正確にはこのバージョン]は既に邦訳されている)。エコノブロゴスフィアではScientific American経由でEconomist's Viewが取り上げ、それにさらにKnowledge Problemという…

民主主義抜きで富裕になれるか?

と題したブログエントリをダニ・ロドリックが書いている(原題は「Can you get rich without democracy?」)。 そこで彼は以下の図を示し、個人としては民主主義が無くても富裕になれるかもしれないが、国全体が富裕になるのは産油国で無い限り民主主義抜き…

狼中年ケン

少し前にクルーグマンが、マンキューとロゴフは今回の危機への対応策として当初インフレ政策を唱導していたが、怒号に曝されて黙り込んでしまった、と皮肉ったことがあった*1。 そのマンキューとロゴフが、最近そうしたインフレ政策について改めて論じている…

生産性の低下は問題無い?

――カナダについては、とStephen GordonがWCIブログで書いている。 そこでGordonは、カナダ統計局が算出した多要素生産性をグラフ化し、カナダの生産性の伸び悩みはボーモルの病*1によるサービス業の生産性の遅滞もさることながら、鉱業・採掘業の生産性の低…

経済学者と合理性

についてアンドリュー・ゲルマンが疑問を投げ掛けた。彼によれば、経済学者は以下の矛盾した2つの考えを持っているという。 人々は合理的でインセンティブに反応する。非合理的に見える行動も、経済学者的に考えれば実は完全に合理的であることが分かる。 人…

誰が債務を積み上げ、誰が保有しているのか?

一枚の図は千言に勝る、とEconbrowserでメンジー・チンが7/28NYT記事の以下の図を転載している。そして、誰が6.1兆ドルを積み上げたのか、と問い掛けている。 これに対し、ブッシュが8年間で6.1兆ドルを積み上げ、オバマが1.75年で2.4兆ドルを積み上げたなら…

債務上限騒ぎを表わした映画は…

本石町日記さんがツイートされているが、EconomixでCatherine Rampellが、今回の債務上限問題を大衆に理解させるのに相応しい映画は何か、という問いを投げ掛けている。金融危機については、「素晴らしき哉、人生!」*1における銀行取付騒ぎのシーンが人々の…

戦後の大統領をGDP成長率でランク付けする

という記事がEconomixに掲載されている。 結果は下位から順に以下の通り(数字は年率)。 オバマ 1.2%(今回の改定前は1.5%) ブッシュ(子) 1.6%(今回の改定前は1.7%) ブッシュ(父) 2.1% フォード 2.2% アイゼンハワー 2.5% ニクソン 3.0% カーター 3.…