2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

アカロフの最大の関心事

23日のエントリでIMFの機関誌に掲載されたアカロフの記事に軽く触れたが、この記事はマンキューがリンクしているほか、アカロフの教え子だというメンジー・チンがEconbrowserで紹介している。ただ、一番興味深かったのは、Mostly Economicsの以下の紹介文。 …

エレベータ乗降の厚生経済学

少し前にCheap Talkブログでそう題されたエントリが上がっていた(原題は「The Welfare Economics of Elevator Travel」)。オフィスビルで働く人間にとっては身近な話題であるが、節電でエレベータの稼動本数を減らすビルも少なくない現在の日本では特にま…

マンキューが成功を確信したビジネス

少し前にマンキューが「Markets in Everything」と題したブログエントリ――ちなみにこれはタイラー・コーエンがMRブログで良く使うタイトルでもある――で、とある会社のHPにリンクし、「I bet this will prove to be a profitable business(これはきっと儲か…

料理と温暖化の関係

以前、発売前の「超ヤバい経済学」に対する批判を紹介した際、ネイサン・ミルボルトの話に触れた。彼は温暖化問題において地球の反射能(アルベド)に着目しており、そのためにソーラーパネルの色を槍玉に挙げたり(黒くて熱を吸収してしまう!)、成層圏に…

超富裕層からの7つの人生訓

バリー・リソルツが表題の件について書いている(原題は「7 life lessons from the very wealthy」;WaPoに書いた記事のリポスト)。仕事の関係で知り合った大金持ちを通じて学んだこととの由。冒頭には、Bill Vaughanの「Money won’t buy happiness, but it…

フリードマンありせばQE3を提言したか?

フリードマンならば現在の状況で金融緩和を提案したかどうかという論争が昨年の9月にテイラーとサムナーの間で交わされたが、今度はデロングが、フリードマンならば連続的な量的緩和を提言しただろう、とJim Grantとの議論で述べた。それを受けてベックワー…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第7弾)

久々に両者の間でラリーが見られた。 ポール君 共和党がブードゥー経済学に丸ごと教化されたという光景には驚くべきものがあるね。レーガン時代の減税が歳入増加をもたらしたという戯言を今や公けに信じなくてはいけないみたいだ。まあ、それはそれとして、…

経済モデルとは何か

昨日はvoxeuのリスクモデルに関する考察記事を紹介したが、IMFの季刊誌「Finance & Development」の最新号にはマクロ経済モデルに関する記事が掲載されている(原題は「What Are Economic Models?」;Mostly Economics経由)。 そこでは、「経済モデルは現実…

なぜリスク予測の不確実性は大きくなるのか?

voxeuにリスクモデルについての考察が掲載されている。著者はLSEのJon DanielssonとArcus InvestmentのRobert Macrae。 記事は2部構成になっており、第一部ではモデルによるリスク予測の不確実性が想定より大きくなってしまう5つの要因を挙げている: モデル…

地産地消は環境に良くない

とEd Glaeserがボストングローブに書いている(原題は「The locavore’s dilemma」;Economist's View経由)。 その理由は以下の通り。 2008年のカーネギーメロン大学の2人の研究者の調査によると、米国産の食物の消費は一家計当たり年間8.9トンのCO2に相当す…

欧州中央銀行の金融政策の混乱を表わす1枚の図

というエントリを6/13にデビッド・ベックワースが上げている(原題は「The ECB Monetary Policy Mess in One Picture」)。 以下がその図。出典はサンフランシスコ連銀のエコノミストFernanda Nechioによる同日付レポート。 ここでNechioはユーロ採用の主要…

バーナンキに今日訊きたい10のこと

をベックワースが6/7ブログエントリで挙げている。以下はその10項目の拙訳。 財務省のブレークイーブンインフレ予想の最近の低下はFRBの懸念事項になっていますか? 一人当たりで言うと、国内名目支出は危機前のピーク水準を依然として下回っています。これ…

米国債を売るべきか?

本石町日記さんのツイート経由で知ったが、復興財源に外貨準備を活用せよ、そのために(外貨準備の大宗を占める)米国債を売れ、という議論が盛り上がっているらしい。調べて見ると、そもそもの発端はカーメン&ビンセントのラインハート夫妻の3/24FT論説の…

住宅ローン金利の税控除の経済的意味

ケイシー・マリガンが住宅ローン金利の税控除を支持する論陣をEconomixで張り、フェリックス・サーモンから強烈な批判を浴びている。以下に各論点を簡単に紹介してみる。 マリガン 住宅ローン金利の税控除自体はそれほど住宅市場を歪めない。むしろ売上税な…

生産性の条件付き収束と無条件収束

ダニ・ロドリックが表題の件について興味深い実証結果を報告している。 周知の通り、低所得国が高所得国にキャッチアップするという事象は、無条件に起きるわけではない。適切な教育や投資によって技術をスムーズに吸収する体制が国内に整備されていることが…

米国経済を立て直すための9つのアイディア

ビジネスウィークが米国以外の国から米国経済を立て直す9つのアイディアを引き出している(Economist's View経由)。以下はその概要。 Fromドイツ 住宅ローンの総量を最低限にまで引き下げる 持ち家比率は米国がおよそ2/3に達しているのに対し、ドイツは46%…

10年間の5%成長は可能か

米大統領選の共和党候補に名乗りを上げたポーレンティー前ミネソタ州知事が、その経済計画で5%の実質経済成長を10年間継続するという目標を打ち出した。それに対し、クルーグマンが非現実的と痛罵しているほか、Bruce Bartlett*1、(ロバート・バローの息子…

知ってるつもり?!

リカルド・カバレロがミネアポリス連銀の機関紙「Region」のインタビューに登場している(Economist's View経由)。その最後の方では現在のマクロ経済学に対する批判を繰り広げているので、以下に紹介してみる。 Region: At the end of last year, you publi…

貸した金返せよ♪

先週はロバート・カトナーの「債務者監獄(Debtors’ Prison)」と題されたコラムが話題を呼んだ。以下はその前半部からの抜粋。 Economic history is filled with bouts of financial euphoria followed by painful mornings after. When nations awake sadd…

金融政策の効果をいかに計るか?

6/2エントリの最後で紹介したRoweの議論――金融政策が成功すれば政策目標は他の変数と相関を持たなくなる――を受けて、デビッド・ベックワースがそれに符合する2つの実証結果を紹介している。 一つは、ベクトル自己回帰によって求めた0.25%のFFレート引き上げ…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第6弾)

6日エントリで紹介した6/3に続き、マンキューがまたクルーグマンの医療保険論に噛み付いた。 ポール君 メディケアが支給対象を限定することは選択の自由の侵害だの憲法違反だのという文句をつける人がいるが、その話は既に論破済み。ただ、そういう間違った…

オッカムの剃刀とリアルビジネスサイクル理論

昨日に引き続きボール=マンキューの「A Sticky-Price Manifesto」論文から興味深い記述をピックアップしてみる。今日はRBC理論への反論にオッカムの剃刀を持ち出した部分。論理としてはクルーグマンやデロングが持ち出しても何ら不思議ではないことをかつて…

粘着的価格マニフェスト・続き

5日エントリでボール=マンキューの「A Sticky-Price Manifesto」という論文の冒頭部を紹介したが*1、その最初の節「Why We Believe What We Believe/Money Matters」から興味深いと思った記述をピックアップしてみる。 In his course on monetary economic…

金融市場の区画化は有効か?

ジャスティン・フォックスによると、映画「インサイド・ジョブ」で、ソロスが金融市場を石油タンカーに喩えるシーンがあるという。曰く、石油タンカーでは一つの大きなタンクに石油を入れていると、石油がじゃぶじゃぶ動くことによってじきに船が転覆してし…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第5弾)

今回のマンキューの批判対象はクルーグマンだけではないかもしれないが、クルーグマンの6/3ブログエントリに反応するかのようにその翌日にマンキューのエントリが上がっていたので、以下にまとめてみた。 ポール君 オバマ医療改革とポール・ライアンの改革案…

粘着的価格マニフェスト

一昨日のエントリでは、Stephen Williamsonがボール=マンキュー論文に対するルーカスの批判を紹介したことに触れた。その論文は「Sticky Price Manifesto」と題されてる。以下はその冒頭部。 There are two kinds of macroeconomists. One kind believes th…

ケインズ経済学の転生

昨日のエントリで紹介したクルーグマンのルーカス批判では、「The Reincarnation of Keynesian Economics」と題されたマンキューの20年前の小論にリンクしている。そこでクルーグマンが孫引きしたのは、「The Death of Keynesian Economics(ケインズ経済学…

ロバート・ルーカスは需要不足を認めていないのか?

ロバート・ルーカスの5/19のワシントン大学講演資料が集中砲火を浴びている。 攻撃の口火を切ったのは、5/31のFTブログでのGavyn Daviesの批判。そこでDaviesは以下のように書いている。 Yet a shortage of demand is not mentioned, even as a remote possi…

コアインフレ率の総合インフレ率に対する予測力

がエコノブロゴスフィアでひとしきり話題になった。 きっかけは、コアインフレ批判を展開したブラードのお膝元のセントルイス連銀で、その総裁の講演に呼応するかのようなレポートが出されたことにある*1。そのレポートでは、コアインフレ率の総合インフレ率…

QE2の効果に対する2つの解釈

1ヶ月ほど前に、ここで紹介した議論を受けて、デビッド・ベックワースが以下の図を示した。 その上で、QE2について以下のように書いている。 Both the money multiplier and velocity are far below their pre-crisis levels, though QE2 has caused the mon…