2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

企業は依然としてしこたま現金を貯め込んでいる

Economixが9/17にそう書いている(原題は「Companies Still Hoarding Tons of Cash」)。 この記事は、レベッカ・ワイルダーのブログエントリ(邦訳)でもリンクされているが、そのエントリを簡略化したような内容になっている。 ワイルダーのエントリではFR…

抑止力とインフレ目標

一昨日のエントリに対し、okemosさんからはてぶで以下のようなコメントを頂いた。 「米国政府はさすがにクリストフ氏よりはまだまともなスタンスを取っている」 まともどうこうはともかく、米国が尖閣諸島の為に中国と武力衝突する事はないというクリストフ…

新人が切られ平均在職年数が伸びた

という記事が9/15にEconomixに掲載されていた(原題は「Job Tenures Lengthen as Newcomers Get Laid Off」)。この記事は、前日発表された労働省のレポートを基に書かれており、同レポートの表の数値から以下のグラフを作成している。これを見ると、2010年1…

ゲーム理論とコースの定理とミュンヘン宥和

池田信夫氏が、今回の尖閣諸島での漁船衝突事件で船長を釈放した判断はゲーム理論に鑑みて「合理的」だった、とagoraに書いている。ただし、そこで池田氏が断っているように、それはゲームが1回かぎりの場合のチキン・ゲームの利得マトリックスを考えた場合…

貧困層ではなく重度の貧困層に焦点を当てよ

ロバート・ワルドマンがAngry Bearでそう主張している。そのエントリで彼が参照しているのは、米国の貧困に関するCENSUSデータ。その中の表5では、所得が貧困基準ライン*1の定数倍以下の人口の比率が掲載されている(定数倍としては、0.5〜2.0まで0.25刻みに…

毒饅頭を食ったブロガー?

去る8月16日に、米国の財務省がブロガーの一団を招いて会談を持った。財務省側はガイトナー長官も出席したとの由。 その模様を各ブロガーが報告しているが、中でもスティーブ・ワルドマンが最も詳細に報告している。以下はその8/22エントリからの引用。 I wa…

金持ちはつらいよ

先日、シカゴ大の法学教授がブログを止める、という“事件”があった。あるエントリが攻撃の的になり、その対応で家族を含め精神的に消耗したため、という(残念ながら)良くあるパターンだったが、攻撃にクルーグマンやデロングが加わったために一気に炎上し…

誰もあなたの代わりになれはしないから

という歌詞の一節があったが、デロングがサマーズについてそう書いている。 Who Can Replace Larry Summers? My view: nobody. The Obama administration is going to be weaker as a result of his forthcoming departure. The job of Assistant to the Pre…

反論ヒエラルキーとOSI参照モデル

mojix氏のZopeジャンキー日記の2008/4/13エントリで、ポール・グレアムが反論ヒエラルキーなるものを提唱していることを知った(9/19エントリ「属性攻撃は説得力を下げる」経由;原文はこちら、邦訳はこちら)。 それによると、ネット上での反論は、そのレベ…

日本の円売り為替介入への欧米ブログの反応

欧米ブログへの反応、と言ってもそれほど数多く見て回った訳ではないが、意外に肯定的な評価が各所で見られた。代表的な論調は、これを機に皆が通貨安競争に乗り出した場合、その競争自体にはあまり益が無いだろうが、むしろその結果として各国の金融緩和が…

Mr.フリーズの逆襲

Baatarism氏が今回の円高介入について書かれているが、その中でお馴染みの「実質為替から見れば円高ではない」論が引用されている。そこで引用されているのは伊藤隆敏氏だが、その直後に池田信夫氏も同様のことを述べている。 Baatarism氏が指摘しているよう…

退屈な中央銀行

Nick Roweがカナダ銀行とFRBを対比させながら、金融政策のルールと裁量について論じている。 以下その抄録。 I just can't get interested in the Bank of Canada right now. I can only think about the Fed. The Bank of Canada is just too boring. Which…

中小企業にとって何が問題か?

Economixの9/14エントリの以下の図があちこちのブログで取り上げられている。 拙ブログの9/7エントリでは、ブッシュ減税廃止に反対するAEIの研究者2人のWSJ記事を箇条書きにまとめてみたが、その一つの項に 全国独立企業連盟(National Federation of Indepe…

Such a lonely word...

Free Exchangeで引用されていたが、The American Sceneという集団ブログでNoah Millmanという人が面白いことを書いている。 “Intellectually honest” means you make arguments you think are true, as opposed to making the arguments you are “supposed” …

大不況のために祖父母に育てられる子供が増えた

というピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の報告をEconomixが紹介している。 下図の通り、そうした子供は過去10年に徐々に増えてきていたが、2007年から2008年に掛けて急速に増加したという。 人種別に見ると、黒人やヒスパニックでそうした…

効用関数とリスク回避を結びつけるべからず・補足

昨日のエントリに対し、unagiameさんから この手の問題はプロスペクト理論で説明できるということでいいような気がするのですが、どうなのでしょうか。 というコメントを頂いた。 ゲルマンの9/11エントリのコメント欄でのやり取りではその辺りも論じられてい…

効用関数とリスク回避を結びつけるべからず

アンドリュー・ゲルマンがそう主張している。(wrong, rogue and booklog経由)。 彼の1998年の論文では、以下のような例が示されている(なお、以下では説明のために記号などを若干アレンジしている)。 ある人が、以下の2つの選択肢を等価であると考えてい…

バロー対バロー

昨日のエントリで紹介したサージェントのインタビューの中に、手厚い失業手当てが却って高失業率をもたらす、という趣旨の発言があった。 先月30日に、バローが現在の米国の高失業率について同趣旨のWSJ論説を書いたところ、各所から批判を浴びた。左派系の…

トーマス・サージェントのインタビュー

機関誌Regionの6月号にロバート・ホールのインタビューを掲載したミネアポリス連銀が、今度はトーマス・サージェントをインタビューした(Economist's View経由)。 以下はその概略。 現代経済学への攻撃について 攻撃の一部は、数学を忌避する馬鹿げた知的…

ハイパーデフレと七人の侍

以前、ハイパーインフレの理論で良く使用されるケーガンの貨幣需要関数と合理的期待を組み合わせると、ハイパーインフレではなくハイパーデフレが生じてしまう、ということを岩本康志氏に拙ブログのコメント欄でご教示いただいたことがあった。 Cagan的な貨…

帰無仮説下でのデータの生起確率と帰無仮説の確率

アンドリュー・ゲルマンが、英国心理学会(The British Psychological Society)の研究ダイジェストブログのある記事にいたく失望させられた、と書いている*1。 その記事にゲルマンが失望した理由は、統計的検定に関する基礎的な間違いを犯しているからであ…

ヴィクセル、ハイエク、ケインズ、フリードマン:誰の跡に附いて行くべきか?

レイヨンフーブットが表題の小論を書いている(原題は「Wicksell, Hayek, Keynes, Friedman: Whom Should We Follow?」*1;Mostly Economics、Hickisanさんツイート経由)。 モンペルラン・ソサイエティーの会長が投げ掛けたというその問い掛けへのレイヨン…

フィッシャー式とオイラー式とヴィクセル的累積過程

Nick RoweがWCIブログの9/3エントリで面白いことを述べている*1。 ...the New Keynesian IS curve, with any reasonable assumption of learning from experience, will give you a Wicksell-like process, only instead of the price level rising/falling …

ブッシュ減税廃止は中小企業を傷つけるか?

マンキューが9/3エントリでKevin HassettとAlan Viardという2人のAEIの研究者がWSJに書いた記事を取り上げている。記事の概要は以下の通り*1。 オバマ政権は、所得が20万ドル以下の単身者、および25万ドル以下のカップルを除き、ブッシュ減税のほとんどを失…

需要の季節性と雇用の需要制約

少し前にマンキューが自ブログでケイシー・マリガン(Casey Mulligan)シカゴ大教授のEconomix記事を紹介し、雇用の需要制約というケインズ経済学の見方に挑戦する重要な証拠、として持ち上げた。マリガンが提示したグラフ(下図)によると、20代前半の雇用…

もう一つのブラード論文

一昨日のエントリの脚注では、学習行動に関する研究のサーベイ論文として、日本銀行の武藤一郎氏の「学習行動を導入した最近の金融政策ルール分析−経済構造に関する知識が不完全な下での期待形成と政策運営−」にリンクした*1。同論文はこの分野の研究の内容…

不平等社会日本とイモリ

今日は軽めのネタを2つ。 1.不平等社会日本 不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)作者: 佐藤俊樹出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/06/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 54回この商品を含むブログ (107件) を見る ちきりん氏がこの本の…

適応的期待から適応的学習へ

昨日、一昨日とRajiv Sethiのブログで引用されたHowitt論文を紹介したが、このSethiエントリは評判が良いらしく、各所で言及されている。Fed WatchのTim Duyも直近のエントリでリンクしていたが、驚いたことに、セントルイス連銀のブラード総裁がそれに反応…

Howitt「金利コントロールと合理的期待への非収束」・続き

昨日のエントリで「最近の研究では自然利子率もヴィクセル過程もまったく出てこないのが不満」と書いたが、Howitt論文のIntroduictionで、どうしてこうなったかの経緯が解説されている。以下、Rajiv Sethiエントリでの同論文の引用を紹介する*1。 In his 196…

Howitt「金利コントロールと合理的期待への非収束」

Rajiv Sethiが例のコチャラコタ発言に関するまとめの中で、Peter Howittの1992年論文「Interest Rate Control and Nonconvergence to Rational Expectations」を紹介している(SethiはJSTORにリンクしているが、ここもしくはここで読めるほか、こちらではレ…