2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

岩本康志氏の内外価格差論

最近、拙ブログで生産性と為替の関係について書いたが(ここ、ここ)、岩本康志氏も、25日のブログエントリで購買力平価を取り上げていた。そこでは、購買力平価が最近円高傾向にあったことについて、「原因の第1は日本の物価上昇率が低いことにある」と述…

サックスの銀行救済案

マンキューが論評抜きでサックスの銀行救済案を紹介している。サックスのアイディアは、基本的にはここで紹介したレオンハートの案と同じで、銀行から不良資産を買い取るに当たって、銀行の株式(ないしワラント)の取得をセットにする、というものである。…

円安バブル論というバブル・補足メモ

1週間前のこのエントリには拙ブログとしてはかなりの反響を頂き、感謝している。コメント欄では銅鑼衣紋氏から過分なお褒めの言葉を頂いたほか、econ2009さんにも労働生産性による為替レートの実質化に関するご質問を頂いた。その質問に答えているうちに、労…

俺に金を貸したあんたが悪い

以前、今回の金融危機を日本の金融緩和政策に求める風潮を批判したが、欧米のネット界でも、米国に資金を供給したアジア、とりわけ中国に危機の原因の一端を求める風潮が出ている。 一つはNick Roweのこのブログエントリ。彼はそこで、次のような簡単なモデ…

経済学者とブログ・続きの補足

昨日紹介したWillem Buiterのブログの最近のエントリを見ていたら、1週間前に一騒動あったようだ。2/17 1:45AMのエントリで、Buiterはいったん断筆宣言をしている。理由は、ブログのホスト主であるFTが2/6に導入したコメントのフィルタリング制度のため。こ…

経済学者とブログ・続き

昨日紹介したNick Roweのエントリのコメント経由で知ったが、Willem Buiter氏も表題の件について書いていた。これも面白いので、昨日と同様にまとめてみる。 私のブログをもっと簡潔にしろと言う人たちへ:このブログは私自身のために書いているのであって、…

経済学者とブログ

night_in_tunisaさんが紹介したNick Roweの最新ブログエントリが大変面白い。そのエントリでRoweは、以下のようなことを書いている。 2008年7月以降サバティカルに入ったが、その後金融危機が訪れた。それ以降、1日に何時間も経済や金融のブログを読んで過ご…

中央銀行の透明度ランキング

レベッカ・ワイルダーが独断と偏見で世界の中央銀行の透明度をランキング付けした。彼女の基準は単純で、中央銀行のバランスシートが公開情報からどの程度把握できるか、というもの。結果は透明度の低いもの順で以下の通り。 中国人民銀行 イングランド銀行 …

実質化の罠

クルーグマンがこのブログエントリで日本の2003-2007年の景気回復を取り上げ、純輸出がその景気回復のエンジンだったと述べている*1。そうした考えの問題点についてはここに書いたが、クルーグマンは実際に分析データを示しているので、それに沿って彼の議論…

円安バブル論というバブル

竹中平蔵氏が以下のように書いている(注:閲覧には無料の会員登録が必要)。 確かに外需の低下がGDPの大幅減少を招いているが、そもそも改革が停滞し、内需が成長しなかったことにこそ、経済悪化の本質がある。同時に円安によって外需関連産業が実力以上…

インフレ率か、インフレ率変化幅か?

昨日はクルーグマンの推計したインフレ率変化幅のGDPギャップへの回帰式と、それを巡る議論を紹介した。 素朴な疑問として、なぜクルーグマンはインフレ率ではなく、その変化幅を被説明変数に用いたのだろう、と訊きたくなるが、その答えは、実際に回帰を行…

原点に回帰すべきか?

といっても、基本に立ち戻って何かしろ、という話ではなく、文字通り、回帰分析で原点を通る制約を課すべきか否か、という話。 クルーグマンが2/4ブログエントリでインフレ率の変化幅をGDPギャップに回帰した式を示して、デフレの脅威を訴えたのに対し、knzn…

コント:ポール君とグレッグ君(2009年第2弾)

(2009年第1弾はこちら。2008年以前はこちら) ポール君 我々は大恐慌以来最もデフレに近い場所にいる。民間セクターは、1930年代以来初めて広範な賃金カットを経験している。 グレッグ君 デフレが問題だというポール君の意見には賛成だけど、そんなに近いか…

ピネー国債

与党が検討を始めたという相続税のかからない無利子非課税国債が話題になっている。個人的にはどう考えれば良いのかまだ整理がつかないが、Baatarismさんのところのコメント欄の指摘によると、相続税非課税という点では、フランスのピネー国債なる前例がある…

平均消費性向と限界消費性向

マンキューブログのこのエントリを読んでしばらく意味が分からなかったが、ケインジアンクロスで使われる消費関数を思い浮かべて漸く理解した。そこで、はてなのお絵かきを初めて使ってみるという意味もあって、そのマンキューのロジックを図式化してみた。…

レイン嬢の行方・続き

一昨日のエントリでは、レベッカ・ワイルダーのFRBのバランスシート縮小に関する分析を取り上げ、合わせてメイデン・レイン(Maiden Lane)LLC関連のFRBの損失に関する彼女の懸念を紹介した。 今日は、Maiden Lane関連で実際にどの程度の損失が起きているの…

純輸出増大の要因は何だったのか?

文藝春秋の2009年3月号で野口悠紀雄氏が以下のように書いている。 そもそも、90年代まで日本の実質GDPに純輸出が占める割合はおおよそ1%程度だった。それが2007年には5%にまで膨らんでいる。日本経済がこれほど外需依存になったのは、2002年以降のことである…

レイン嬢の行方

レベッカ・ワイルダーが2/10エントリで、昨年12月以降のFRBのバランスシートの縮小について取り上げている。 実はこの話は既出で、Econbrowserのジェームズ・ハミルトンが早くも1ヶ月前に「雪解けの兆候」と題して取り上げている。 また、Hicksianさんが2/7…

豚肉で上院議員を釣るべし

昨日に続き米国の匿名ブロガーknzn氏の過激な提案を紹介する。彼は、2/6の2つ目のエントリで、海老で鯛を釣る、ならぬ豚肉で共和党上院議員を釣って、景気対策法案を通そう、とアジっている。豚肉はporkの直訳だが、もちろんここでは文字通りの意味ではなく…

リフレ反対論者は縛り首にすべし

何とも過激なタイトルになったが、米国の匿名ブロガーのknzn氏が2/6エントリでそう主張している。彼は、リフレ政策を提唱しているのだが(ただしreflationという言葉は用いていない)、その際に、価格水準を最終的な達成目標に据えるべき、としている。具体…

保護貿易主義の経済学

クルーグマンがブログの2/1エントリと2/2エントリで保護主義を正当化する経済学について考察している。ただ、彼自身は保護主義を支持するつもりはなく、単なる理論的考察であることを断っている。 2/1エントリでは、まず、12/14エントリの以下の考察を再び取…

感謝

田中秀臣先生から経済系ブログ・ミシュラン2009の一つに認定していただいた。感謝の言葉も無い。 小生は、基本的に田中先生のブログに軸足を置いてネットの経済論壇を観測してきたので(小生自身のはてなアンテナを立てる前はずっと田中先生のアンテナを使わ…

続・夕陽の銀行

ポール・ローマーがWSJで銀行救済について論じている。曰く、現在検討されているバッドバンクを作るのではなく、身綺麗なグッドバンクをTARPのカネを使って作った方が良いのではないか、との由。このローマーの記事は、マンキューブログもEconomist's Viewも…

乗数大論争

Econbrowserのメンジー・チンが、乗数効果を計算する3つの方法についてまとめている。 伝統的なマクロモデル 例)OECD Interlink model、Macroeconomic Advisers' model、FRB米国モデル DSGE(dynamic stochastic general equilibrium)モデル 例)IMFのApri…

イースタリーとサックスの“和解”

ウィリアム・イースタリーが先月26日にブログを始めた。その5回目のエントリとなる1/30エントリで、論敵であるジェフリー・サックスのことを正しい、と称賛している。ただし、称賛の対象となったサックスの論説は、二人の論争の的となった開発経済に関するも…

クルーグマンとコーエンの財政刺激論争

クルーグマンとタイラー・コーエンの間に、財政刺激の効果を巡って軽い論争があった。ただ、論点は、これまでお馴染みの財政刺激vs減税ではなく、恒久的な財政刺激と一時的な財政刺激のどちらが効果があるか、という点である。 最初にクルーグマンが、フリー…

FRBの“内紛”

先月の12日に、バーナンキもエコノミストのブログで取り上げられるような発言をしたらどうか、と書いた。すると、その直後に実際に彼がロンドンでスピーチをして、それが各所(cf.ここ、ここ)で取り上げられて少し驚いた。 しかし、それでバーナンキ金融政…

水戦争・続き

昨日は米経済学界の淡水学派と海水学派の間に勃発した“戦争”について取り上げたが、今日もその続き。 昨日のエントリで紹介したワルドマンのエントリは、Economist's Viewの1/27エントリで取り上げられたほか、クルーグマンも1/28エントリで触れているので、…

あっちの水は苦いぞ、こっちの水は甘いぞ

海の向こうでは時ならぬ“水戦争”が勃発した。といっても、水利権を巡る争いではなく、いわゆる淡水学派と海水学派の話。ああ、魚介類の研究の話か、と思われるといけないので(いないよそんな奴)、この問題を取り上げたAngry Bearエントリから、まずは用語…