2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

スティグリッツのIMF批判への反論/ドーンブッシュ

今日以降は、30日エントリでタイトルだけ紹介した各種記事の内容を紹介していく。 スティグリッツのIMF批判については山形さんの訳もあるし、上記エントリで紹介した本もあるので、割愛し、まずは、「2.反論」に記した資料から。*1 ● Dornbusch:Letter to…

国際経済学者たちの闘い

今日は5年ほど前の友人との勉強会で切ったレジュメをアップする。表題はさる本*1のパクリだが、内容は直接は関係なく、サマーズ、サックス、スティグリッツという3人の現代の国際経済の専門家について(ないし彼らの間の暗闘について)取り上げたものであ…

ゲーム理論入門/(10)Two-Person Cooperative Games(1953)

本日で最終回。今日はナッシュの二人協力ゲーム論文のレジュメ。 なお、今回の「ゲーム理論入門」シリーズの主たる参考文献はこちら。はじめてのゲーム理論 (有斐閣ブックス)作者: 中山幹夫出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1997/09/01メディア: 単行本購入: …

ゲーム理論入門/(9)The Bargaining Problem(1950)-Examples

今日は昨日の論文のレジュメの続きで、論文の数値例とグラフの部分を実際にExcelで再現してみた。 The Bargaining Problem(1950)-Examples EXAMPLES 論文の数値例をExcelの"BargainingProblem"というシートのA1-C10のエリアに以下のように入力し、 Item Util…

ゲーム理論入門/(8)The Bargaining Problem(1950)

ここからはナッシュの論文2本のレジュメ。最初は協力2人ゲームを扱った表題の論文。 論文はJSTORで購入するか、以下の本に所収されているものを参照されたし。ナッシュは何を見たか -純粋数学とゲーム理論作者: H.W.クーン,S.ナサー,落合卓四郎,松島斉出版…

ゲーム理論入門/(7)映画「ビューティフル・マインド」について

映画「ビューティフル・マインド」について ナッシュの半生を描いた映画「ビューティフル・マインド」では、ナッシュがナッシュ均衡のアイディアを思いつくシーンで、以下のようなシチュエーションが描写されている。 1人の美人とそれ以外の女性3人がバーに…

ゲーム理論入門/(6)じゃんけんのナッシュ均衡

じゃんけんのナッシュ均衡 (2回目のエントリの利得表を再掲) プレイヤー2 (=混合 戦略 ) 確率p 確率q 確率r 純粋戦略での G T P プレイヤー1利得 プレイヤー1 G 0 1 −1 q-r T −1 0 1 -p+r P 1 −1 0 p-q <純粋戦略でのナッシュ均衡> この…

ゲーム理論入門/(5)チキンゲームのナッシュ均衡

チキンゲームのナッシュ均衡 (最初のエントリの利得表を再掲) 少年2 逃げない 逃げる 少年1 逃げない 死(-100) 英雄(10) 逃げる チキン(-10) チキン(-5) <純粋戦略でのナッシュ均衡> このゲームのナッシュ均衡は純粋戦略では(逃げる、逃げない)(逃…

ゲーム理論入門/(4)囚人のジレンマのナッシュ均衡

囚人のジレンマのナッシュ均衡 (自白、自白)の組み合わせがナッシュ均衡となる。 これはパレート最適(誰かの状態を改善する際に必ず他の誰かの状態を悪化させてしまう状態)ではない。(共に黙秘すれば、両者の状態を共に改善できるため) 証明) 今、囚…

ゲーム理論入門/(3)ナッシュ均衡

ナッシュ均衡 n人ゲームのナッシュ均衡とは, 各プレイヤーの選んだ戦略の組で,各プレイヤーについて,自分が選んだ戦略が他のすべてのプレイヤーの選んでいる戦略に対する最適反応となっている注)純粋戦略ではナッシュ均衡が存在しない場合があるが、混…

ゲーム理論入門/(2)ミニ・マックス定理

ゼロ和2人ゲームとミニ・マックス定理 ゼロ和2人ゲーム 2人のプレイヤーが互いに勝ち負けを争うゲーム → フォン・ノイマンによる回答(1928年)=ミニ・マックス定理 ミニ・マックス戦略=最大損失を最小化する戦略 マックス・ミニ戦略=最小利得を最大化す…

ゲーム理論入門/(1)囚人のジレンマ、チキンゲーム

友人との勉強会で、自分なりにゲーム理論(の入門部分)を概説する資料を作成したことがあったので、今日からはそれをアップしていく。 囚人のジレンマ 囚人2 黙秘 自白 囚人1 黙秘 10年 30年 自白 釈放 25年 囚人1が上表のような選択を与えられたとき、囚…

マンキューブログへのコメント

マンキューブログはかつてはコメント欄があって誰でも書き込めたが、ある時、マンキュー先生が不愉快なコメントにキレて閉鎖してしまった。小生も何回かコメントしたことがあったので、閉鎖直後にgoogleキャッシュから救い出したもののうち2つばかりここに…

資産価格の理論:私的概論/(13)Black-Scholes式の導出

本日で最終回。 付録C Black-Scholes式の導出 ここでは、15日のエントリで簡単に紹介したブラック=ショールズ式を実際に導出してみる(正確には、ブラック=ショールズ式が解となる偏微分方程式を価格の確率過程と無裁定条件から導出してみる)。 原株の価…

資産価格の理論:私的概論/(12)効率的フロンティアへのリスクフリーレートの導入によるCAPMの導出

付録B 効率的フロンティアへのリスクフリーレートの導入によるCAPMの導出 ここでは、昨日のエントリ(付録A)の道具立てのもとで、第5回エントリで紹介したCAPMを導出する。具体的には、ポートフォリオの構成銘柄の一つを無リスク資産に置き換える。…

資産価格の理論:私的概論/(11)効率的フロンティアの導出

概論の本論は昨日のエントリまでで、今日以降は数学補論。 付録A 効率的フロンティアの導出 本シリーズの第一回で解説した効率的フロンティアを導出するため、実際に最適化問題を解いてみる。ラグランジュアンを以下のように置く。 ・・・(A-1) ただし2λ…

資産価格の理論:私的概論/(10)金融工学

<金融工学> これまで説明したファイナンスのいわば古典的な流れとは別に、高度な数学を駆使したファイナンス理論が全盛を極めている。その基本となるのが、資産価格の動きに関する以下の状態方程式である。 dP=μP dt + σP dw ・・・価格の対数正規分布 …

資産価格の理論:私的概論/(9)モジリアニ=ミラーの定理

<企業価値評価(2)> ○モジリアニ=ミラー(MM)の定理 = 市場での無裁定条件から導出 Franco Modigliani , Merton H. Miller “The Cost of Capital, Corporation Finance, and the Theory of Investment”,1958 ●企業価値と配当政策は無関係 DDMの説明で…

資産価格の理論:私的概論/(8)配当割引モデル

<企業価値評価(1)> ○DDM(Dividend Discount Model)=配当割引モデル John Burr Williams “The Theory of Investment Value”,1938 (源流はIrving Fisher “The Theory of Interst”,1930) 企業価値Pは将来の配当Dt(t期の配当)の流列の割引現在価…

資産価格の理論:私的概論/(7)マルチファクターモデル

<中心的な流れ(7)> ○マルチファクターモデル 市場インデックス以外に個別銘柄のリターンを共通して説明する要因を導入したモデル (例:業種、PER、PBR)。 ri = αi + βi1 f1 + βi2 f2 + …+ βim fm +εi APTモデルないしAPTの前提モデルと似ているが、AP…

資産価格の理論:私的概論/(6)APT

<中心的な流れ(6)> ○裁定価格理論(APT=Arbitrage Pricing Theory) スティーブン・ロス(Stephen A. Ross “The Arbitrage Theory of Capital Asset Pricing”、1976) 前提: 無裁定条件(資金0、リスク0ならリターンも0) 投資家はAPTの前提のファ…

資産価格の理論:私的概論/(5)CAPM

<中心的な流れ(5)> ○資本資産評価モデル(CAPM=Capital Asset Pricing Model) ウイリアム・シャープ[William Sharpe “Capital Asset Prices: A Theory of Market Equilibrium Under Conditions of Risk”(1964)] ここまで紹介した理論(M-V法、分離…

資産価格の理論:私的概論/(4)効率的市場仮説

<中心的な流れ(4)> ○効率的市場仮説(EMH=Efficient Market Hypothesis) 株価はブラウン運動をする Louis Bachelier “Theory of Speculation”(1900) Maurice G. Kendall “The Analysis of Time Series, Part 1:Prices”(1953) M.F.M. Osborne “Brownia…

資産価格の理論:私的概論/(3)シングルインデックスモデル

<中心的な流れ(3)> ○シングルインデックスモデル(Single Index Model) ウイリアム・シャープ[William Sharpe “A Simplified Model for Portfolio Analysis (1963)”] マーコビッツの方法では、最適ポートフォリオを求めるのにユニバースの分散共分散…

資産価格の理論:私的概論/(2)分離定理

<中心的な流れ(2)> ○分離定理(Separate Theorem) ジェームズ・トービン[James Tobin “Liquidity Preference as Behavior Toward Risk(1958)”] 無リスク資産(riskfree asset)の導入 資産選択の問題は、 リスク資産と無リスク資産の間の配分 + リ…

資産価格の理論:私的概論/(1)平均−分散法

以前*1友人との勉強会で自分なりに資産価格の理論を概説したことがあったので、今日からはその資料をアップしていく。 <中心的な流れ(1)> ○平均−分散法(Mean-Variance Method) ハリー・マーコビッツ[Harry Markowitz “Portfolio Selection”(1952,195…

経済学:私的概論/(9)調整インフレ論

今日で最終回。調整インフレ論をテーマにしているが、これを書いた当時(7年前)は、インフレターゲットよりも調整インフレ論が金融政策に関する議論の中心だった。 <金融政策(2)> ●調整インフレ論 クルーグマンvs日銀他 クルーグマン 今の日本は流動…

経済学:私的概論/(8)金融政策

<金融政策(1)> ●マネーサプライと信用創造 マネーサプライ マネーサプライ=現金+預金M = C + D ハイパワードマネー (ベースマネー、マネタリーベース) ハイパワードマネー=現金+準備預金H = C + R 準備預金 ・・・銀行は預金の一定割合(β)を日…

経済学:私的概論/(7)経常収支を巡る論争

昨日エントリまででは歴史的な流れを追ったが、ここからは各論。 <経常収支を巡る論争> ●小宮隆太郎vsリチャード・クー他 経常黒字論争(1990s) Y=C+S (収入=消費+貯蓄) Y=C+I+X-M (支出=消費+投資+輸出−輸入) → X-M = S-I 左辺=経常収支、右…

経済学:私的概論/(6)ケインズvs古典派

<主な流れ(6)> ●ケインズ革命(John Maynard Keynes)−(5)ケインズvs古典派 価格の 下方硬直性 vs 伸縮性 利子率決定 流動性選好 vs 財市場で時間選好により決定 貯蓄は現時点の消費をあきらめて将来の消費に回す行動 時間選好・・・利子率はその代…