戦争にもかかわらず、ロシアとウクライナは所得分類で上方に移動した

と題したエントリ(原題は「Despite War, Russia and Ukraine move higher in Income classifications」)でMostly Economicsが、世銀による各国の所得水準の異動を報告した同行のブログエントリを紹介している。
以下は、所得水準(=一人当たりアトラスGNI)に基づく4分類(低所得国、低中所得国、高中所得国、高所得国[low, lower-middle, upper-middle, and high])において、2023年のデータに基づく2025年の分類に前年からの異動があった国を表した図。

この世銀のブログエントリの昨年分は邦訳されており、今年分の邦訳もいずれ出ると思われるので、以下では説明のポイントをピックアップしておく。

高中所得国から高所得国に移ったのは以下の3か国。

  • ブルガリア
    • コロナ禍後の回復で着実に成長し、閾値に近付いていった。2023年は消費需要に支えられて実質GDPは1.8%成長。
  • パラオ
    • やはりコロナ禍後の回復で着実に成長し、GDPが元の水準に戻った。
    • 実質GDPは0.4%増、GDPデフレーターで測ったインフレは8.1%増、名目GNIは10.0%増。
  • ロシア
    • 2023年に軍事関連活動が大きく増加したことが経済活動を押し上げたほか、貿易、金融、建設の各部門の反動増が成長を支えた(それぞれ6.8%、8.7%、6.6%増)。
    • 実質GDPは3.6%増、名目GDPは10.9%増、一人当たりアトラスGNIは11.2%増。

低中所得国から高中所得国に移ったのは以下の4か国。

  • アルジェリア
    • 国際基準に合わせた統計の包括的改定*1が主な要因。GDPの水準は2018-2022年に平均13.3%上方修正された。
      • 改定の例:研究開発を含めるようにした投資推計の拡張、公的部門の生産の測定手法の改善、観測できない経済のカバレッジの改善
    • 2023年は4.1%成長。
  • イラン
    • 2023年は5.0%成長。原油輸出が主導し、サービス業と製造業の利益が支えた。
    • GNIは名目で39.5%と大幅に伸びたが、イラン・リヤルの減価と組み合わせると一人当たりアトラスGNIは17.6%増となった。
  • モンゴル
    • コロナ禍後の回復を継続。2023年の実質GDPは7.0%増。
    • 鉱業と輸出が成長を支えた(それぞれ23.4%増、53.4%増)。輸出の大幅増は輸出価格の上昇による。
  • ウクライナ
    • 実質GDPは2022年に28.8%減少したが、2023年は5.3%成長した。復興のために投資支出が52.9%増えたことを反映して、建設活動が24.6%伸びた。
    • 人口がロシアによる侵攻後15%以上減少したことも寄与。
    • さらに、国内で生産する財とサービスの価格上昇もあり、一人当たりアトラスGNIは18.5%増加。

一方、唯一の下方修正国となったのは・・・

  • ヨルダン川西岸地区・ガザ
    • 紛争開始は2023年10月で、影響は第4四半期に限られたが、それでも名目GDPは9.2%、実質GDPは5.5%低下した。昨年に高中所得国に上がったばかりで、元々閾値に近いところに位置していたため、逆戻りした。

*1:日本では2015年度国民経済計算年次推計で対応した2008SNAへの対応かと思われる。

企業のダイナミズム低下の普遍性について

というNBER論文が上がっている。原題は「On the Ubiquity of Declining Business Dynamism」で、著者はDavid Hummels(パデュー大学)、Kan Yue(ザビエル大学)。
以下はその要旨。

Recent work documents declining business dynamism in the United States, with concerning implications for markups, innovation and productivity. Using import data for 146 countries over three decades we document a set of new stylized facts describing market dynamism world-wide. Market entry rates and the reallocation of market shares fall significantly over time. Young exporters experience rising prices, falling market shares, and increased exit probabilities relative to longer-tenured incumbents. While the variance of price shocks hitting markets is rising, long-tenured incumbents exhibit lower volatility in prices and the response of prices and quantities to tariff shocks are falling over time. These patterns hold for over 90 percent of countries and products suggesting the inadequacy of explanations that point to the macroeconomic or regulatory environment of particular countries or the unique industrial organization of particular products.
(拙訳)
最近の研究*1は、米国における企業のダイナミズムの低下を立証した。それはマークアップイノベーション、および生産性と関係する。30年以上に亘る146か国の輸入データを用いて我々は、世界全体の市場のダイナミズムを描写する一連の新たな定型化された事実を明らかにする。市場参入率と、市場シェアの再配分は、時間とともに顕著に低下した。企業年齢が若い輸出業者は、既存の操業年数の長い業者に比べて、価格の上昇、市場シェアの低下、退出確率の増加を経験した。市場を襲う価格ショックの分散が上昇している半面、既存の操業年数の長い業者の価格の分散はより低く、関税ショックに対する価格と数量の反応は時間とともに低下している。こうしたパターンは9割以上の国と商品について成立しており、特定の国のマクロ経済もしくは規制の状況、もしくは特定の商品の独自の産業構成による説明が不適切であることを示唆している。

ungated版は見当たらなかったが、各国の企業のデータを直接調べるという骨の折れる作業を避けて、米国の輸入、即ち他国の輸出のデータを用いて多数の国の輸出企業の動向を調べたというのは賢い手法かと思われる。日本でも企業のダイナミズム低下が叫ばれて久しいが、どの程度この全世界的な現象と通有性があるのか興味が持たれるところではある。

債券市場のFRBへの見方

というNBER論文が上がっているungated版)。原題は「Bond Market Views of the Fed」で、著者はLuigi Bocola(スタンフォード大)、Alessandro Dovis(ペンシルベニア大)、Kasper Jørgensen(ECB)、Rishabh Kirpalani(ウィスコンシン大)。
以下はその要旨。

This paper uses high frequency data to detect shifts in financial markets' perception of the Federal Reserve stance on inflation. We construct daily revisions to expectations of future nominal interest rates and inflation that are priced into nominal and inflation-protected bonds, and find that the relation between these two variables-positive and stable for over twenty years-has weakened substantially over the 2020-2022 period. In the context of canonical monetary reaction functions considered in the literature, these results are indicative of a monetary authority that places less weight on inflation stabilization. We augment a standard New Keynesian model with regime shifts in the monetary policy rule, calibrate it to match our findings, and use it as a laboratory to understand the drivers of U.S. inflation post 2020. We find that the shift in the monetary policy stance accounts for half of the observed increase in inflation.
(拙訳)
本稿は高頻度データを用いて、FRBのインフレに対するスタンスについての金融市場の認識の変化を検出した。我々は、名目債とインフレ連動債の価格に織り込まれた将来の名目金利とインフレの予想の日次改訂を構築し、20年以上安定的に正の相関があったその2変数間の関係が2020-2022年に顕著に弱まったことを見い出した。この分野で使われている標準的な金融反応関数から言えば、この結果は金融当局がインフレ安定へのウエイトを減らしたことを示唆している。我々は標準的なニューケインジアンモデルを金融政策ルールのレジーム変化で補強し、我々の発見に適合するようにカリブレートし、2020年以降の米インフレを動かす要因を理解する実験室として用いた。金融政策のスタンス変化が観測されたインフレ上昇の半分を説明することを我々は見い出した。

以下はインフレ予想と金利予想の関係が2020-2022年に変化したことを示す図と、テイラールールの係数が同じ期間の下がったことを示す図。

興味深いのは、2020-2022年のこの変化が、斉藤誠氏が「実質で見る破格の円安 日本経済 「体力」低下著しく 齊藤誠・名古屋大学教授 - 日本経済新聞」の図で示した日米の実質金利差と実質為替レートの関係のシフトと対応しているように見えることである(ungated版としては、河野龍太郎氏が「第1回国際収支から見た日本経済の課題と処方箋 資料 : 財務省」で提示した資料のp.8で同様の図を再現している)。斉藤氏はこのシフトの原因を日本経済が構造的に弱体化したことに帰しているが、実質円ドル相場は米国の物価が高いほどドル高に振れることを考えれば*1、今回の論文に示されているように、米国の金融政策がその時期にインフレの高止まりを許容するようになったことに起因している可能性もあるように思われる*2

*1:cf. 日本の物価が相対的に下がると円の実質実効レートは下がる - himaginary’s diary。最近では横浜国大の佐藤清隆氏が例えばこちらのプレゼン資料のp.11でその点を説明している。

*2:為替相場の分断再訪 - himaginary’s diaryで紹介した論文における円ドル相場のシミュレーションを敷衍すると、2020年に米国のプラスの生産性ショック、もしくは日本のマイナスの生産性ショックが生じたことが斉藤氏の仮説に沿う形になる。ただ、実態経済のそれだけの突然のシフトが、他の指標ではあまり顕在化しないまま実質為替相場と実質金利差の関係だけに如実に現れた、と考えるのは、説得力の点で少し無理があるようにも思われる。そうした見方と、米金融政策のスタンスの変化が米国のインフレと金利の関係の変化を通じて実質為替相場と実質金利差の関係に如実に現れた、と考えるのとどちらが尤もらしいかは、一考の余地がありそうである。

金利を動かさない金融政策:FRBの非金利ショック

というNBER論文が上がっているungated(SSRN)版)。原題は「Monetary Policy without Moving Interest Rates: The Fed Non-Yield Shock」で、著者はChristoph Boehm(テキサス大学オースティン校)、T. Niklas Kroner(FRB)。
以下はその要旨。

Existing high-frequency monetary policy shocks explain surprisingly little variation in stock prices and exchange rates around FOMC announcements. Further, both of these asset classes display heightened volatility relative to non-announcement times. We use a heteroskedasticity-based procedure to estimate a “Fed non-yield shock”, which is orthogonal to yield changes and is identified from excess volatility in the S&P 500 and various dollar exchange rates. A positive non-yield shock raises stock prices in the U.S. and around the globe, and depreciates the dollar against all major currencies. The non-yield shock is essentially uncorrelated with previous monetary policy shocks and its effects are large in comparison. Its strong effects on the VIX and other risk-related measures point towards a dominant risk premium channel. We show that the non-yield shock can be related to Fed communications and that its existence has implications for the identification of structural monetary policy shocks.
(拙訳)
既存の高頻度の金融政策ショックは、FOMC発表前後の株価と為替相場の変動を驚くほど少ししか説明しない。しかも、この2つの資産クラスは、発表が無い時期に比べてボラティリティの高まりを示す。我々は分散不均一性に基づく手順を用いて「FRBの非金利ショック」を推計した。このショックは金利変化と直交し、S&P500および各種のドル為替相場の過度のボラティリティから識別される。正の非金利ショックは米国および世界で株価を押し上げ、ドルを他の主要通貨全てに対して減価させる。非金利ショックは基本的に従前の金融政策ショックと無相関であり、その影響はそれらと比べて大きい。VIXや他のリスク関連指標へのその強い影響は、リスクプレミアム経路を支配的な経路として示唆している、非金利ショックはFRBのコミュニケーションと関連付けることができ、その存在は構造的な金融政策ショックの識別にとって意味を持つことを我々は示す。

ここで「既存の高頻度の金融政策ショック」は、FOMC発表前後の狭いウインドウにおける予期せぬ金利変化から構築されるもので、金融経済の実証研究で通常使われるショックを指している。しかし、以下の図に示されるように、従来研究においては、ショックから時間が経過した後の株価や為替の変化に対するその説明力は3割以下にとどまる(色付きの線)。金利ショックを利回り曲線全体を表すように加工すると少し改善するが、改善幅は限定的である(黒および灰色の線)。

一方、以下の図に示されるように、FOMC公表日の株価や為替の変動は確かにそれ以外の日より大きい。

そこで著者たちが提唱するのが、利回り曲線の変化に因らないショックである。論文によると、40か国において、非金利ショックが1標準偏差動くと、FOMC公表前後の2日間に平均して世界の株価はおよそ45ベーシスポイント、ドルは他通貨に対し30ベーシスポイント以上動くとの由。

インフレ予想はどのように上放れするか:選択的な記憶のキュー出しの役割

というNBER論文をシュライファーらが上げているungated版へのリンクがある著者の一人[シュライファー]のページ)。原題は「How Inflation Expectations De-Anchor: The Role of Selective Memory Cues」で、著者はNicola Gennaioli(ボッコーニ大)、Marta Leva(同)、Raphael Schoenle(ブランダイス大)、Andrei Shleifer(ハーバード大)。
以下はその要旨。

In a model of memory and selective recall, household inflation expectations remain rigid when inflation is anchored but exhibit sharp instability during inflation surges, as similarity prompts retrieval of forgotten high-inflation experiences. Using data from the New York Fed’s Survey of Consumer Expectations and the University of Michigan’s Consumer Survey, we show that similarity can quantitatively account for the sharp post-pandemic rise in inflation expectations, particularly among the elderly. The memory-based model also accounts for how people estimate future inflation ranges and why they neglect infrequent experiences when forming point expectations. These predictions are likewise supported by the data.
(拙訳)
記憶と選択的な想起のモデルにおいて、インフレがアンカーされている場合は家計のインフレ予想は硬直的なものにとどまるが、インフレ高騰期には、類似性が忘れられていた高インフレの経験を呼び覚ますため、激しい不安定性を示す*1。NY連銀の消費者予想サーベイミシガン大学の消費者サーベイのデータを用いて我々は、類似性が、特に高齢者において、コロナ禍後のインフレ予想の急激な上昇を定量的に説明できることを示す。記憶ベースのモデルはまた、人々がどのように将来のインフレの範囲を推計するか、および、点予想を形成する際に彼らがなぜ稀な経験を無視するかも説明する*2。以上の予測は同様にデータによって支持される。

*1:本文では「Numerical similarity yields state-dependence, and hence memory based de-anchoring: as people see a jump in inflation, say from 2% to 10%, they start selectively recalling inflation levels around 10%. This effect is especially strong for people who have more 10% experiences (the elderly), even if these experiences reside in the remote past.」と説明している。

*2:本文では前注で引用した文章に続けて「A second implication of numerical similarity is that measured beliefs depend on whether a person is asked to report her point expectation or the probabilities of different inflation ranges. When forming her point expectation, she may neglect ranges she infrequently experienced. Yet, when prompted to think about these ranges, she may selectively recall experiences of them. The principle is again that, as numerical cues change, so do retrieval and beliefs.」と説明している。

21世紀の金融政策:学ばれた教訓と今後の課題

と題されたBISの年次経済報告書の第2章をMostly Economicsが紹介している。原題は「Monetary policy in the 21st century: lessons learned and challenges ahead」で、著者はBIS金融経済局長のClaudio Borio。
以下は同章で提示されている、大平穏期の見せかけの安定を打ち破った大金融危機とユーロ債務危機、コロナ禍とその後の予期せぬインフレという一連の異常事態を通じて学習された、金融政策ができること、できないことについての5つの教訓。

  1. 力強い金融引き締めは、インフレが高インフレレジームに移行するのを防ぐことができる。
    • たとえ中銀の当初の対応が遅かったとしても、急いで事態に追いついて、業務を遂行するのに必要な決意を示せば、成功することができる。
  2. 力強い行動、特に中銀のバランスシートの活用は、危機時の金融システムを安定させ、経済が混乱に陥るのを防ぐことができる。
    • それによってデフレ圧力の主な原因を取り除くことができる。
    • 金融もしくは非金融の借り手企業の債務履行能力が脅かされた場合には、政府がそれを食い止めることが要求される。
  3. 非常に力強く長い金融緩和には限界がある。
    • 収益の逓減がある。
    • 単独では低インフレレジームにおけるインフレを微調整することができない。
    • 金融仲介の弱体化、資源の誤配分の誘発、過度のリスクテイキングの促進、脆弱性の形成、バランスシート膨張に伴う中銀の経済的および政治経済的な課題の惹起、といった歓迎できない副作用がある。
  4. コミュニケーションはより複雑になった。
    • これは、ツールの多様性、インフレ高騰を予期できなかったこと、および、より全般的な話として、中銀ができることとできると期待されていることのギャップの拡大による。
  5. 為替介入とマクロプルーデンシャル政策を補完的に用いることが、物価と金融の安定性の間のトレードオフを改善するのに役立つことが特に新興国において示された。
    • それらの政策を賢明に使用するためは、殊に為替介入について、政策の限界をきちんと弁えておく必要がある。

これらの教訓は、今後の金融政策の指針として検討されるべき以下のポイントの重要性を指し示しているとの由。

  • まったく異なる複数のシナリオに対する金融政策の頑健性。
  • 野心における現実主義、即ち、金融政策ができることとできないことについての現実的な見解。
  • 安全限界、即ち、政策展開余地ないしバッファの確保。特にバランスシート政策において、バランスシートはできるだけ小さく、リスクを少なくしておく。
  • 機動性。
  • 各政策間の一貫性。これは、マクロ経済と金融の安定性を継続させる上で極めて重要。

また、過度な依存が柔軟性への障害となり得る政策として、各種のフォワドガイダンス、モデル特有の観測できない概念に大きく依存すること、変わらないとされる経済環境のために設計された枠組み、を挙げている。そのほか、経済成長をもたらすために金融政策や財政政策に過度に頼ること――「成長幻想(growth illusion)」――のリスクも強調しており、経済の供給面を強化する構造政策だけが持続的な高成長をもたらせるのだ、としている。

政府債務のデフォルトの社会的費用

というNBER論文をラインハートらが上げている(2年前のWPスライド)。原題は「The Social Costs of Sovereign Default」で、著者はJuan P. Farah-Yacoub(ハーバード大)、Clemens M. Graf von Luckner(パリ政治学院)、Carmen M. Reinhart(ハーバード大*1
以下はその要旨。

This paper investigates the economic and social consequences of sovereign default on external debt. We focus on the crises’ impact on real per capita GDP, infant mortality, life expectancy, poverty headcounts, and calorie supply per capita. After methodological exclusions, the sample covers 221 default episodes over 1815-2020. The analysis adopts an eclectic empirical strategy that relies on an augmented synthetic control method and local projections. Our findings suggest that sovereign defaults lead to significant adverse economic outcomes, with defaulting economies falling behind their counterparts by a cumulative 8.5 percent of GDP per capita within three years of default. Moreover, output per capita remains nearly 20 percent below that of non-defaulting peers after a decade. Based on the trajectory of the health, nutrition, and poverty indicators we study, we assess that the social costs of sovereign default are significant, broad-based, and long-lived.
(拙訳)
本稿は対外政府債務のデフォルトの経済的・社会的帰結を調べる。我々は、実質一人当たりGDP、幼児死亡率、平均寿命、貧困者の人数、および一人当たりカロリー供給への危機の影響に焦点を当てた。方法論による除外を行った後、サンプルは1815-2020年の221のデフォルトの事例をカバーした*2。分析は、増強された合成コントロール法とローカル予測に依拠する折衷的な実証戦略を採った。我々の発見が示すところによれば、政府債務のデフォルトは顕著なマイナスの経済的帰結をもたらし、デフォルトした経済は、一人当たりGDPがデフォルト後3年で対照国を累積8.5%下回った。また、10年後の一人当たり生産は、デフォルトしなかった同等の国を依然として20%近く下回った。我々が調べた健康、栄養、および貧困の指標の推移に基づき、政府債務のデフォルトの社会的コストは顕著であり、広範囲に亘り、長く続く、と我々は評価した。

*1:2年前のWPでは他にRita Ramalho(世銀)が名を連ねている。

*2:WPでは1900年以降の131事例。